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火曜日, 9月 11, 2012

セックス・シンボルの素顔【5】──マイケル・ファスベンダー

 セックス・シンボルの素顔【5】──マイケル・ファスベンダー

※この記事はセックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー【2】【3】【4】の続きです。 

マイケル・ファスベンダー 
ロンドンでの初対面から数週間を経て、私たちはニューヨークで再会し、ランチを共にした。

ファスベンダーは『プロメテウス』のプロモーションのためにカリフォルニアでイベントに出席し、帰り道にこの街に立ち寄ったのだ。

彼はひとまずダブルエスプレッソを注文したが、見慣れないパスタのメニューを前に困惑気味だった。今食べたいのは──彼にとって最高の“おめざ”は──牡 蠣料理だという。とはいえ、世界的映画スターゆえの贅沢かというと、それは違う。シェフを父に持ちレストランの厨房に出入りして育った彼には、それが子ど ものころからの馴染みの料理なのだ。

メニューには牡蠣料理はなかったが、ファスベンダーは諦めなかった。「よい厨房には牡蠣のストックがあるはずさ。そうでなくちゃ」。

彼はウェイトレスを呼び止めたが、牡蠣はないという。そこで私たちは、パスタを分けて食べることにした。料理が届くと、ファスベンダーがママ役を買って出 た。パスタを小皿に取り分けてくれながら、「また料理を始めたんだ」とぽつりと言う。

「自分ひとりなら料理なんてしないけど、友達が来てくれれば、それにもしもガールフレンドがいれば、料理をすることが気晴らしにもなるからね」。

ガールフレンドといえば、『SHAME』で競演したニコール・ベハーリーと手をつないでここニューヨークを歩くさまが写真でスクープされ、恋人騒ぎになっ たことが記憶に新しい。

「彼女とはできるだけ頻繁に会っているよ。この街とロンドンでは遠すぎるけど」とファスベンダーは、噂の正しさをほのめかした。

その『SHAME』につきまとうペニス・ジョークを逆手に、ファスベンダーの演技を賞賛したのが、『プロメテウス』の共演者シャーリーズ・セロンだ。

「どうか、女の私が彼のペニスを話題にすることをお許しください。あの映画は2回観ました。彼の陰影、繊細さ、そして優しさに、私は心を打たれました。決 して押しつけではない人物像に、作り物ではない演技に、まさしく心を奪われたのです。オスカーに値する演技だと思いました。何より感心したのは、彼が堂々 とそれを演じたことです。他の俳優ならほとんど例外なく縮こまってしまったでしょうから。彼のペニスに、私は啓示を受けました。あのペニスと競演する準備 は、いつでもできています」と、彼女は茶目っ気たっぷりに言ってのけ、聴衆の笑いをさらった。



セックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【2】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【3】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【4】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【5】──マイケル・ファスベンダー



セックス・シンボルの素顔【3】──マイケル・ファスベンダー

セックス・シンボルの素顔【3】──マイケル・ファスベンダー

およそ10年に及ぶ無名時代。その果てにつかんだ、とびきりの配役──ナチスに化けた英軍将校、『X-MEN』の悪役、そして『SHAME─シェイム─』 でのエキセントリックな主役──それらが一躍、彼を映画界の寵児にのし上げた。その勢いは衰えを知らず、この夏公開のリドリー・スコット監督作品『プロメ テウス』でも印象的なアンドロイド役を演じている。そんな俳優マイケル・ファスベンダーの危険なセクシーさに、写真家マリオ・テスティーノが迫り、意外な 側面を『GQ』に寄稿するクリス・ヒースがあぶり出す。

※この記事はセックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー【2】の続きです。


マイケル・ファスベンダー

『SHAME』は興行面でも成功したし、ファスベンダーはセックス依存症の主人公を演じてヴェネツィア国際映画祭男優賞にも輝いた。

しかしこの映画については、すでに述べたようにペニスのことばかりが話題として一人歩きしてきた。侮辱にもなりかねないペニス・ジョークの数々を彼が笑っ て受け流してきたことには、のんびりしたその人柄ゆえということもあるかもしれない。多少きわどいジョークでも、この人なら笑って許してくれると思わせる ところが、ファスベンダーにはあるのだ。

「ぼく自身にもジョークにされることを楽しんでいるところはあるよ」と、本人も言う。

「だけど、あんまり度が過ぎると、作品の魅力を貶めることにならないかと不安になることもある。でも、ぼくにできるのはただ笑ってやり過ごすだけだ。自分 が出演した作品のことはとても大切に思うけど、自分自身にどれほどの価値があるのかは、まだよくわからないんだ。なんせぼくは、夢の階段を一気に駆け上 がった。17歳のころには想像もできなかった高いところに、今こうして立っているんだ。それほどの地位にどれだけ圧倒されていることか……なんて悩みは、 世間も聞きたくないだろうしね」。

『SHAME』にファスベンダーがいかに真摯に取り組んだのかを伝えるエピソードとして、彼が尿をするシーンのことが挙げられる。

通常、そうしたシーンではチューブがうまく隠されていて、そこから疑似の液体が放出される。ところがファスベンダーは、実際に放尿をしているのだ。最初の 2回は尿が出てこず、3度目のテイクでようやくそのシーンを撮ることができたという。

「あのおしっこのせいで、ぼくはオスカーを逃したのさ」と、彼はおどけて笑ってみせた。

あの召使いをぼくが演じるんだね>>>

エイリアン・シリーズを手がけたリドリー・スコット監督がファスベンダーに目を止めたきっかけは、『ハンガー』と『フィッシュタンク』で彼が見せた演技 だった。

「映画界でベスト3か、ベスト4にはランクされる俳優だと思った。スクリーン全体を意のままに動かしている印象があったよ」と、監督は言う。

そのリドリー・スコットは新作『プロメテウス』でのアンドロイド役をファスベンダーに任せることにし、監督と俳優は直に会って、その役柄をどう演じるかに ついて話し合った。

その場で監督が要求したのは、3本の映画を観ておくことだった。

まずは表面的に似通っている『地球に落ちてきた男』。地球に流れ着いた異星人をデヴィッド・ボウイが演じ、よそ者であることの苦悩を描き出した作品だ。そ れに加えて、内容面でより重要な『アラビアのロレンス』と、『召使』の2作品。

そのうち後者の『召使』は、裕福だが無計画な英国人青年に仕える召使いをダーク・ボガードが演じた1963年の作品なのだが、観るなりファスベンダーが電 話をかけてきたと、リドリー・スコット監督は打ち明けてくれた。

「そうか、そうか、よくわかったよ。あの召使いをぼくが演じるんだね」と、電話口でまくしたてたというのだ。

『プロメテウス』の詳細な内容は現時点ではまだ明かすことができないけれど、日常生活の細々したことを監督させるために誰かを雇ったつもりが、いつしか気 づけば、その雇い人が監督するもののなかに屋敷の主人も含まれていた、という『召使』の設定が、このSF映画を観る上で意味深長だということは、言ってい いかもしれない。
 

ロレンスだってよそ者だからさ>>>

 
セックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【2】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【3】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【4】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【5】──マイケル・ファスベンダー
 
 

セックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー

セックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー


およそ10年に及ぶ無名時代。その果てにつかんだ、とびきりの配役──ナチスに 化けた英軍将校、『X-MEN』の悪役、そして『SHAME─シェイム─』でのエキセントリックな主役──それらが一躍、彼を映画界の寵児にのし上げた。 その勢いは衰えを知らず、この夏公開のリドリー・スコット監督作品『プロメテウス』でも印象的なアンドロイド役を演じている。そんな俳優マイケル・ファス ベンダーの危険なセクシーさに、写真家マリオ・テスティーノが迫り、意外な側面を『GQ』に寄稿するクリス・ヒースがあぶり出す。


写真:Mario Testino 文:Chris Heath 翻訳:待兼音二郎

マイケル・ファスベンダー

マイケル・ファスベンダーと私の距離を縮めてくれたのは、突然の大雨だった。待ち合わせ場所の公園は、実は彼のフラットから歩いてすぐだと言う。今までそ れを黙っていたことを彼は詫びると、雨宿りをしていかないかと誘ってくれた。「ちょっとだけ待っていてくれるかな。部屋を片付けるので」。それが訪問の条 件だった。

「あんまり散らかしたままだと、母さんに怒られるからね」。

階段で、雨に打たれずにすむありがたさを噛みしめていると、やがてドアが勢いよく開いた。

「お待たせ!」。満面の笑みが迎えてくれる。「ぼくのフラットへようこそ!」。

映画スターの住まいといえば、丘の上の大邸宅、高層マンションの最上階、湖畔の瀟洒な館、などなどが昔ながらのイメージだ。ところがこのフラットには、わ ずかに3部屋──私が今いる広いリビングと、その奥にある小さな寝室、そして死角になっているバスルーム──があるきりで、たったそれだけが、マイケル・ ファスベンダーにとっての城だというのだ。

2006年、30歳を目前にしてここに越してきたころとは、彼の境遇も大きく変わった。どうにか食っていける程度だったのが、いまや押しも押されもせぬ大スターだ。

「一人暮らしには、これが絶妙なサイズなのさ」と本人は言う。しかしこのリビングにはあちこちに物が雑然と置かれているし、天井には水漏れの染みが大きく広がり、いかにも手狭だしぱっとしない。

おまけにここは、東ロンドン。最近でこそファッショナブルな街並みも増えてきたけれど、労働者階級が多く暮らす下町だ。私は改めてリビングを見回してみ た。床面の多くが段ボール、スーツケース、2本のギター、そしてアンプに占められ、衣服もあちこちに掛けたまま。そこから浮かび上がるのは、売れっ子俳優 の慌ただしさだ。
ここ2年のファスベンダーの多忙さときたら、12年初頭の同時期に(英国で)公開された『SHAME』『危険なメソッド』『エージェント・マロリー』とい う3本の映画すべてで主役級を演じるということを筆頭に、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』、リメイク版の『ジェーン・エア』、そしてリド リー・スコット監督による豪華絢爛なSFフィクション『プロメテウス』、と大役が続いている。この部屋には数時間眠りに戻るだけで、また撮影や映画祭に出 かけていく日々が続いているのだ。

「荷物の置き場をどうにかしないとね」と本人は言うけれど、引っ越そうにも荷造りする時間もないのだろう。いや、それだけじゃない。ファスベンダーはこの街が性に合っているとも言う。

「この街の熱気が好きなんだ。流行の最先端にも触れられるし、公園があちこちにあることもいい。ぼくにはぴったりのエリアだと思うんだ」。

ところでこのフラット、たしかに物は多いのだが、埃にまみれた印象はない。それにはファスベンダーの生い立ちが深く関わっている。子ども時代、ホテルを営む両親が忙しく、部屋の掃除の手伝いをすることで小遣いをもらっていたという。

「母さんのチェックがとても厳しくてね」と、指先で埃を確かめるしぐさをしてみせる。「手抜きは許してもらえなかったんだ」。

そこでふと、リビング中央に目を向けると、小さな卓球台が置かれている。近くに住むエージェントからの借り物だという。

「長年ここで暮らしたけど、一番の気晴らしはこの卓球台だよ。ずいぶんこれで運動させてもらったさ……」と、そこまで言って彼はくすりと笑った。「誤解を招く言い方だったかな」。

私はすぐにピンときて、それとなく探りを入れた。

「いや、ただの運動だよ、汗をかくことさ」とファスベンダーは受け流そうとして、それもまた誤解を招く言い方だと気づいたのか、また苦笑した。

きわどいジョーク──そういうことだ。それもこれも、『SHAME』で演じた役柄のせいだ。

あの映画でファスベンダーは、満たされぬ過剰な性欲を抱えた男性を演じ、文字通り“すべて”を画面にさらした。あの映画をじっくり観れば、大っぴらにでき ない悩みに苦しむ人物に真っ正面から取り組んだ彼の演技におのずと目も向くが、しかしそれ以来、彼はインタヴューのたびにペニスをネタにされ、そのサイズ うんぬんへのきわどい突っ込みを、始終涼しい笑顔でかわすことを強いられてきたのだ。

MTVでは授賞式の赤絨毯に立っている折にも複数のスクリーンショットから自分のペニスを当てることまでやらされたし、今年のゴールデングローブ賞の会場 では、あのジョージ・クルーニーからこうからかわれもした。「マイケル、君にはゴルフの才能があるかもしれんな。なにせ……両手を後ろに組んでもボールが 打てるのだから」。

「汗をかくのさ」。ファスベンダーはそう繰り返し、いたずらっぽく笑った。「ふたりで、この台の上でね」。


 
セックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【2】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【3】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【4】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【5】──マイケル・ファスベンダー

セックス・シンボルの素顔【2】──マイケル・ファスベンダー

セックス・シンボルの素顔【2】──マイケル・ファスベンダー


およそ10年に及ぶ無名時代。その果てにつかんだ、とびきりの配役──ナチスに化 けた英軍将校、『X-MEN』の悪役、そして『SHAME─シェイム─』でのエキセントリックな主役──それらが一躍、彼を映画界の寵児にのし上げた。そ の勢いは衰えを知らず、この夏公開のリドリー・スコット監督作品『プロメテウス』でも印象的なアンドロイド役を演じている。そんな俳優マイケル・ファスベ ンダーの危険なセクシーさに、写真家マリオ・テスティーノが迫り、意外な側面を『GQ』に寄稿するクリス・ヒースがあぶり出す。

※この記事はセックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダーの 続きです。

マイケル・ファスベンダー
マイケル・ファスベンダー 俳優
1977年ドイツ生まれアイルランド育ち。ロンドンで演劇を学び、2007年『300』のスパルタの戦士役で映画デビューを果たす。11年の主演作 『SHAME』がヴェネツィア国際映画祭で公開されるなり、セックス依存症役での高い演技力とセクシーさが評価され、男優賞を受賞。新たなセックス・シン ボルと呼ばれるようになる。『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』など話題作に出演し、今年秋に日本公開予定の『危険なメソッド』では、主演の キーラ・ナイトレイと濃厚なラブシーンを披露する。リドリー・スコット監督が手がけた、この夏の注目作品『プロメテウス』は、現在日本で公開中。この男か ら、ますます目が離せない。


10代の半ば、マイケル・ファスベンダーの夢といえばヘヴィメタルのギタリストになることだった。そう思い出を語るうちに席を立ってiPadを取ってくる と、お気に入りのSlayerの曲をYouTubeで検索にかける。その「Seasons in the Abyss」が流れ出すと、熱狂的なエアギターをひとしきり披露し、白い歯を見せてニヤリと笑った。

当時のファスベンダーは胸までの長髪に、編み上げのロングブーツ、膝丈のコンバット・ショーツという出で立ちで、親友とふたりでバンドも組んだ。しかしド ラマーとベーシストがどうしても見つからず、ロックスターの夢は儚く消える。近所のパブに一度だけ出演させてもらったが、お客の反応は冷ややかなものだっ た。

「そりゃそうさ。ランチタイムにMetallicaを聴きたい人なんているわけないよな」。

当時の彼は、何をやっても十人並みだった。自分に向いていて、しかも人より秀でているものがあるとすれば、それは何だろう。そんな、才能の鉱脈のようなも のを探しに探してたどりついた答えが、演劇だった。

ファスベンダーのテレビ初出演は、「Hearts&Bones」という英国のコメディ番組で、役柄は、いつもシュノーケルを持ち歩いているドイツ 人ボーイフレンドだった。ここでついでに言っておくと、彼は父の祖国ドイツの生まれだが、2歳で母の祖国アイルランドに移住してからは、その国で育った (だから基本的には英語話者だが、ドイツ語も流暢に話す)。

それはさておき、将来の映画スターの初出演作を目にするとき、ほんの端役でちらりと映っているだけなのに、まぎれもない大物のオーラを放っていることに目 を奪われ、画面に釘付けになることがよくある。しかし若きファスベンダーに、そうしたきらめきは感じられない。

「とびきりの美男美女ではない同士」だから似合いのカップルになれそうだ、というガールフレンド役への告白の言葉に象徴されるように、彼の演技はいかにも 平凡そのものだった。

演劇学校を出た翌年につかんだ大きなチャンスが、第2次世界大戦でのアメリカ軍パラシュート部隊の転戦を描いた連作ドラマ『バンド・オブ・ブラザース』 だ。

9カ月を撮影現場で費やした果てに彼が実感したのは、連日カメラの前で過ごした時間の長さと、完成映像での出番の短さの落差だった。

「まばたきすれば、ぼくはもう画面のどこかに埋もれている」というくらいだ。それから数カ月、ロサンゼルスで売り込みを続けたが、うまくいかなかった。

「オーディションルームで、居並ぶ面々をぎゃふんと言わせたいという意気込みはあったけど、そううまくはいかなくてね。ぼくには居場所も自信もなかったん だ」と、ファスベンダーは当時を振り返る。

ロンドンに戻った彼はそれからの数年をまたテレビ業界で過ごす。少しずつ大きな役が回ってくるようになり、どの役も熱意を込めて演じたけれど、彼は目立た ず、ぱっとしないままだった。


俳優として一皮むける>>>
 
しかし2007年に、運命を変える出来事が到来する。

「ぼくには迷信深いところがあって、生まれた年が1977年。そしてこの年は2007年。なにか、巡り合わせのようなものを感じたんだ」。

ようやく手にしたかに見えたそのチャンスも、あやうく手からこぼれ落ちるところだった。アフリカ系イギリス人のスティーヴ・マックイーン監督が、初めての 監督作品となる『ハンガー』の制作準備を進めつつあり、その主役候補として、ファスベンダーに声をかけたのだ。それは81年、アイルランド独立闘争の闘士 ボビー・サンズが、英国当局への抗議として獄中でハンガーストライキを敢行し、その果てに餓死するという実話を基にした映画である。

しかし初対面の印象は、芳しいものではなかった。ファスベンダーは、アイルランド史上それほどまでに重要で、国民感情にも強く訴えかける役柄を演じられる 俳優などいるのだろうかと不安を覚えたし、マックイーン監督の方でも、お高くとまったキザな奴という印象を相手に抱いた。

キャスティング・ディレクターに説得されたマックイーン監督がしぶしぶ再訪に同意したことで、監督と俳優は初対面で見逃していたお互いの良さを胸に刻む。

「会えてよかった。長いこと探していた相手が現れたのだと確信したよ」。ファスベンダーはそう力説する。「自分を本当にたどるべき道筋へと後押ししてくれ て、独力ではできっこないパフォーマンスを自分から引き出してくれる。それがマックイーン監督なんだ」。

『ハンガー』でファスベンダーが見せた演技が、肉体を鍛え、あるいは痛めつけたことの成果という一面のみから評価される傾向があることは、『SHAME』 の場合と同様だし、残念なことだ。

『ハンガー』で彼は128ポンド(約58㎏。ちなみに身長は約180cm)まで体重を落としたが、これは猛烈な努力と自制心の賜物であり、自己を餓死に追 い込んだ実在の人物に自らを重ねるその演技は壮絶で、観る者の胸をえぐる。その輝きは、まぎれもなく本物だ。

この映画でファスベンダーが秘めていたものが一挙に開花したのか、それとも、役柄に対する要求をはるかに上回る演技を見せる俳優がいることに映画業界がよ うやく気づいただけだったのか、それはわからない。

しかし『ハンガー』をきっかけに、彼は俳優として一皮むける。

英国の低予算映画『フィッシュタンク』での気の弱い優男から、コミックを基にした娯楽大作『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』での腹黒い悪役に いたるまで、多彩な役柄で輝きを見せるようになる。

とりわけ出色なのは、おそらくタランティーノ監督作品の『イングロリアス・バスターズ』で演じたナチスに化ける英軍将校だ。その役柄を的確に、カリスマ性 たっぷりに演じた彼の出演シーンは、忘れがたい印象を観る者に与える。
彼が尿をするシーンのこと>>>
 
セックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【2】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【3】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【4】──マイケル・ファスベンダー
セックス・シンボルの素顔【5】──マイケル・ファスベンダー
 

 

セックス・シンボルの素顔【4】──マイケル・ファスベンダー

セックス・シンボルの素顔【4】──マイケル・ファスベンダー

※この記事はセックス・シンボルの素顔【1】──マイケル・ファスベンダー【2】【3】の続きです。


マイケル・ファスベンダー 
ピーター・オトゥールが実在する陸軍将校の役を主演した『アラビアのロレンス』も、『プロメテウス』におけるファス ベンダーの役柄に内実では大きな影響を 及ぼしている。アンドロイドのデヴィッドがどんな振る舞いをするのかの指針がそこにあるというのだ。

「ロレンスだってよそ者だからさ」と、ファスベンダーは言う。


「彼は結局、イギリス人にもアラブ人にもなりきれなかった。そこに何らかの共通点があると思うんだ。ロボットが人間に混じって暮らしながら、人間の一員と は認めてもらえないということに」と。


しかも驚くべきことに、『アラビアのロレンス』の映画そのものが、この新作SF映画には取り込まれている。


リドリー・スコット監督と、スクリーンライターのデイモン・リンデロフが議論を重ねたのは、何年もかけて宇宙を航行する旅を、アンドロイドがどうやって過 ごすのかということについてだ。人間が冷凍睡眠をする傍らに、ぽつんと取り残されたアンドロイドは、その長い年月をどうやってやり過ごすのか。あらゆる技 能を独学で学ぼうとする──それは疑いのないことだろう。


やがて彼は「たぶん16カ国語を話せるし、バイオリンや……それからピアノも弾けるようになるんだろうな」と、スコット監督。また、片っ端から映画を観る というのも、ありそうなことだ。


いや、それは違うのではということに、ある時皆が思い至った。


おそらく彼はお気に入りの1本を見つけるなり、他の映画はそっちのけにして、その映画ばかりをくり返し観るのではないか。「ほら、4、5歳の幼児と同じこ とだよ。同じ映画ばかりを何度も何度も観たがるじゃないか」と、リンデロフも言う。


「そこで大人が『映画なら他にもあるじゃないか』と言ったところで、『いやだ。これが観たいの』と言われるのが関の山だよね」。


アンドロイドのデヴィッドが、そんなように『アラビアのロレンス』ばかりを何度もくり返し観るとしたらどうなるだろう? さらに進んで、主演のピーター・オトゥールの顔かたちすらも真似ようとしだしたら? そればかりか、オトゥールの台詞すら借用しだしたら、いったいどんな ことになるのだろうか?(映画通のなかには、『プロメテウス』の予告編で早くもそれに気づいた人たちがいる。「Big things have small beginnings(大事は小事より起こる)」というファスベンダーの台詞が、『アラビアのロレンス』からの引用だというのだ)


退屈でたまらないさ!>>>
 
そうした疑問の数々を、ファスベンダーは胸いっぱいに抱きとめた。

「撮影期間中、部屋では『アラビアのロレンス』をずっとリピートで再生していたよ」と本人も言う。「くり返しくり返し、何度も観たんだ」。

そう、まるで強迫神経症的なまでに執拗に反復練習をすることが、ファスベンダーの配役への取り組み方なのだ。

映画の撮影が始まるまでに、台本を何度でも何度でも、くる日もくる日も読み返し、しまいには300回ほども読むことになるという。そう聞くと無我夢中の境 地とも思えてくるが、それほど楽しいものではないらしい。

「そりゃあ、退屈でたまらないさ!」と、本人も明言している。だが、そのお陰で役柄がすっかり血肉となり、カメラがひとたび回り始めれば、演じる人そのま まに動き回れるのだ。

ロレンス役のピーター・オトゥールの髪形までも、ファスベンダーは求めに応じて真似ている。しぶしぶながらではあったようだが。

「キャラクター像にはぴったりだと思うけど、ブロンドに脱色した髪がぼくに似合うとは思えないな」と、彼は正直に言う。「鏡を見て思ったよ。まるで一晩5 ポンドのコール・ボーイじゃないかって」。

アンドロイドのデヴィッドをファスベンダーが演じることが決まって以来、デイモン・リンデロフは執筆中だった台本を彼を念頭に書き進めたという。

「ちょっぴり危険で、秘密を匂わせる要素が彼にはあるんだ。彼の立ち居振る舞いには、たとえ一見情愛たっぷりでロマンチックな身のこなしをしていようと、 『この男はきっと何かを隠している』とチクリと思わせるところがある」と、リンデロフは指摘する。

「観客の感情移入を誘い、『この人が演じているのはきっと私だ』と思わせられる能力は、基本的には俳優にとってこれ以上なく頼もしい武器だと言える。とこ ろがファスベンダーには、必ずしもそれを良しとしないところがある。『いつでも共感してほしいわけじゃないんだ』と言外に訴えるようなところがあるんだ。 『ぼくには自分の胸だけにしまっておきたいこともある。そこにあえて踏み込むのなら、君の顔はぼくの手でふさがれることになるぜ』というようなところが ね」。

彼のペニスに、私は啓示を受けました>>>
 
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