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水曜日, 2月 04, 2015

IDEO トム・ケリー氏らが語る「組織学習とイノベーション」


トム・ケリー氏らが語る「組織学習とイノベーション」

パネル:トム・ケリー氏、クリスチャン・ベイソン氏、西口尚宏氏

IDEO共同経営者トム・ケリー氏、デンマークデザインセンターCEOクリスチャン・ベイソン氏は、新事業創造カンファレンス&Connect!第一部「創造性とデザインと組織」にて講演後、パネルディスカッションに参加し、イノベーションを生み出す組織のあり方を話し合った。その発言の一部を紹介する

組織学習の重要性-内外の人々に「共感」を持つこと

モデレーター西口尚宏氏(以下、西口):
 講演で話題になった「共感」とイノベーションを起こす組織構造を関連づけてお話いただけますか。
IDEO共同経営者トム・ケリー氏(以下、ケリー):
 組織内でも、他の部門、業務グループなどに属する人々がお互いに共感を持つべきです。イノベーターたちが理解しがたい、または馴染みのないことをしているとしても、既存事業担当者は「(彼らのしていることに)会社の将来がかかっているのかもしれない。どんな新しいことをやってくれるんだろう」という気持ちでいてほしいですね。
デンマークデザインセンターCEOクリスチャン・ベイソン氏(以下、ベイソン):
 行政機関の場合、市民への共感は不可欠ですが、デザイナーやイノベーターとしては、そのときどきに関わっている組織に寄り添う気持ちも必要です。政策でも事業でも、その業界独特のことばを理解し、その運営者の目線で話さないと、アイデアは認められないし、新しい企業文化の一部にもなっていきません。
そこで問題になってくるのが組織学習です。どうやって新しいアイデアを受け入れ、新しい慣行に根づかせていくべきか。組織学習は、事例や競合の研究ばかりでなく、共感や対話も関わる複雑なプロセスですが、過小評価されていると感じます。

好奇心を組織学習に組み込む

トム・ケリーIDEO 共同経営者 トム・ケリー氏
西口:
 業務の効果・効率性向上が目的の研修が多い日本企業にとっても、組織学習の問題は重要です。
ケリー:
 ほんとうの学びは、競合の研究ではなく、実験や、人々の行動の動向の研究から得られます。たとえば、日本では高齢化が社会問題ですが、これは企業にとっては商機でもありますよね。日本にいる多くのお年寄りから学び、共感して、彼らを支援する製品やサービスを開発すれば、世界的にも貢献できるでしょう。
ベイソン:
 IDEOなどの最先端のデザインファームの強みは、「システマティックキュリオシティ(組織全体で好奇心を持っていること)」でしょう。組織学習を推し進めるのは、まさにこの組織の好奇心です。ものごとを観察し、疑問を持ち「(この現象は)自分にとってはどういう意味があるのかな」と考えてみること。そういう好奇心を育む文化を作れるかどうかが課題ですね。
西口:
 システマティックキュリオシティは、興味深い概念ですね。
ベイソン:
 個人や組織は、自分が世界を変えてやるといった野心や自負を持つ一方で、いいアイデアはどこからでもやってくる可能性があることを認める謙虚さも持っていなければなりません。どんなに頭脳優秀な社員がいても、すべてを知っているわけではないのです。
 「問題はすべて把握している」と話す経営者に会うと、とても心配になります。こんな状況把握をしている組織はとてもイノベーティブとはいえず、すでに衰退が始まっているのではないかとさえ思います。
 自負と謙虚さを両立させるためには、学び続けること、アイデアはどこからやってくるかわからないと認め、好奇心を保つしかありません。
ケリー:
 特に、私のような年齢になってくると危険なのは、必要な知識はすべて持っていると思い込む、知識の陳腐化です。組織にとって価値ある知見を更新しつづけていくことは、組織のリーダーに課せられたチャレンジです。永久に変わらないものもあれば、日々変化するものもあります。その違いを見極めて、常に世界を観察して、更新すべきものは更新していかなければなりません。

新規アイデアに予算を配分するかどうか

DDC クリスチャン・ベイソンデンマークデザインセンター CEO クリスチャン・ベイソン氏
西口:
 アイデアに予算がつかないと苦闘しているイノベーターは多いです。世界のイノベーティブな企業はこの問題にどう取り組んでいるのでしょうか。
ケリー:
 企業のどの部門もイノベーションを起こしたいわけですが、同時に今月や今期の業績も配慮しなければならない。これでは、業績を上げるためにはイノベーションにコストやリスクはかけたくない、となってしまいます。
 それで、プロクター・アンド・ギャンブルは、実験・探究のためだけに資金を出す組織を社内にスタートさせることでイノベーティブな企業に変貌しました。
 それぞれの金額は小さいけれども「クレイジーなアイデアにお金を出しましょう」と、いわば社内の各部に小さな賭けをしかけたおかげで、社内からいろいろなイノベーションが生まれてきました。
 スリーエム(3M)が始めた、特に予算配分を要さない賢い方法もあります。3MにはR&D部門に「15%タイム」という制度があり、部員は勤務時間中の15%を個人的なプロジェクトに充てられます。これはちょっとしたトリックです。というのは、通常業務85%+個人プロジェクト15%ではなく、その比率が100%+15%になるのです。ほんとうかなと思うかもしれませんが、うまくいっています。
 同様の制度がグーグルにも受け継がれていますが、どちらの会社でもこの時間からイノベーションが生まれる率はひじょうに高い。この場合、会社側は社員の好奇心を守ってあげているだけで、イノベーションのために特定のコストをかけているわけではありません。
ベイソン:
 イノベーションチームの役割は、チーム自体がアイデア出しするのではなく、他の部署がイノベーションにつながるアイデアを思いつけるように刺激してあげたり、将来のビジネスモデルを探求している組織外の人を探してきたりすることです。こういう活動やスキルへの投資は重要だと思います。
 ともに働く企業には、投資の準備はできていないとしても、たとえば、主要メンバーが6週間を割いて新しいビジネスモデルや新しいコラボを試してみることを許すような価値観を持っていてほしいと思います。

ワークショップは“リハーサル”

西口:
 日本には今、デザイン思考=ワークショップといった現象があるのですが、どう思われますか。
ベイソン:
 以前、政府内でイノベーションチームをスタートさせたとき、いろいろな政府機関で5年間に300ほどのワークショップを実施しましたが、その活動を評価したところ、効果は限定的だったと判明しました。原因は、ワークショップに市民に参加してもらわず人々の経験を取り入れていなかったこと、自分たちで実験もしていなかったことでした。
 ワークショップは、コンセプトやアイデアを集めるにはよい手法ですが、次世代のイノベーションは人間中心のデザイン、政策、戦略ですから、必ず建物を出て外で時間を過ごし、人々の経験に目を向けるべきですね。
ケリー:
 ワークショップはリハーサルのようなものです。「楽しかったね」で終わるのではなく、1つか2つ、明日からでも来週にでも自分で試してみようというアイデアを持ち帰れるのがよいワークショップだと思います。
新事業創造カンファレンス
セミナー開催概要
  • セミナー名:新事業創造カンファランス&Connect!第一部「創造性とデザインと組織」
  • 講演名:パネルディスカッション
  • スピーカー:IDEO共同経営者、Tom Kelley氏、Danish Design Centre (DDC) CEO、Christian Bason氏
  • モデレーター:Japan Innovation Network専務理事、西口尚宏氏
  • 主催:ベンチャー創造協議会/経済産業省/公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会/東京ニュービジネス協議会(Connect!)
  • 共催:政策研究大学院大学/一般社団法人Japan Innovation Network
  • 開催日時・場所: 2015年1月22日、ホテルニューオータニ




IDEO トム・ケリー氏が語る「創造力に対する自信」

IDEO トム・ケリー氏が語る「創造力に対する自信」

講演名「Creativity in Organizations」


世界有数のデザインファームIDEOの共同経営者トム・ケリーが、経済産業省主催の「新事業創造カンファレンス&CONNECT」にて基調講演を行った。シリコンバレーで30年余にわたってイノベーションの最前線に立ち続けてきた経験をもとに、日本の聴衆に向けて個人や組織が創造性を発揮するために必要なマインドセットについて語った。


創造力に対する自信(Creative confidence)とは

 兄のデイビッドとともに、シリコンバレーの小さなデザイナー集団だったIDEOを世界で最もイノベーティブな企業と評されるまでに成長させてきたトム・ケリー氏(以下、ケリー氏)。同社は初代アップルのマウス、世界初のラップトップPCの開発などの初期の「製品イノベーション」から次第に「顧客エクスペリエンスや組織の再設計」を手がけるようになり、近年ではデザイン思考に基づく「イノベーション文化」の普及に取り組んでいる。
 ケリー氏は、そのキャリアを通じて、世界中の優れたヴィジョンを持つリーダーたちの知性や感性の働かせ方を観察する機会に恵まれた。その体験から、創造性を発揮するためには「創造力に対する自信」が必要だと説く。
「創造力に対する自信」は2種類の能力、「いいアイデアを思いつく」という本来誰もが備え持っている能力と「行動する勇気」で形成されます。創造力に対する自信についての本(邦題『クリエイティブ・マインドセット』日経BP社)を書くために世界中でインタビューを実施したところ、多くの人々、特に若者や組織に属する人々は、ある問題を解決できるかもしれないアイデアはあるのに、奇異に見られたり、批判されたりすることを恐れて、手をあげない(アイデアを発表しない)のだとわかりました。創造性はもともとあるのですから、それに行動する勇気が加わりさえすれば「創造力に対する自信」は生まれるのです。

「テクノロジー」と「人間性」の調和をとる

トム・ケリー
 個人や組織の「創造力に対する自信」を育てるうえでカギとなる要素の1つとしてケリー氏が強調するのは「テクノロジーと人間性の調和」だ。これはテクノロジーありきではなく、まず人々に共感し、そこから彼らのニーズを探るアプローチだ。
 そんな方法論の成功例として、ケリー氏お気に入りのこんなエピソードがある。
 ゼネラルエレクトリック(GE)ヘルスケアのMRI開発部隊を率いるダグ・ディーツ氏は、自分が開発した装置を使う現場へ見学に行き、全身をスキャンするその機械に入るのを怖がるあまり、子どもの80%は麻酔で眠らせなければ検査ができない事実を知り大きなショックを受ける。幼い患者の恐怖感を取り除くMRIを開発できないものか。悩んだ同氏は、救いを求めてスタンフォード大学のdスクールで「共感から始めよう」がテーマのエグゼクティブ教育コースを受講した。
 コースに刺激を受け、あるアイデアを職場に持ち帰ったが、予算はつかない。それでもあきらめず、社内、小児病院、子ども博物館からボランティアを募ってプロジェクトを進めた。彼らは、検査室とMRIを遊園地のアトラクションのように作り替え、技師向けに「これから海賊船に乗るよ。海賊に捕まらないようにじっとしていられるかな」といったセリフの入った台本まで用意した。
 この改良の結果、子どもに麻酔をかける率は10%にまで減り、売上増や機械の稼働率アップをもたらしたのだった。
 ケリー氏は「彼は技術には一切、手を加えませんでした。彼が設計し直したのは『体験』です」と解説し、人間性の部分に注目することの大切さをあらためて確認した。

人生を「実験の連続」と見なす

トム・ケリー
 新しいモノやサービスを生み出すためには実験を重ねなくてはならないが、実験には失敗がつきものだ。失敗がもたらす精神的なダメージを抑えるためには、組織は失敗に対して寛容であるべきだとケリー氏は主張する。
小さな失敗、舞台裏の失敗、高くつかない失敗ならばまったく構わない。そういう失敗を許容する文化を創ろうと努めてください。優れたスキーヤーになるためには、何度も転ぶ覚悟が必要。失敗は学習プロセスの一部です。失敗は成功への道なのです。
 ジェームズ・ダイソンは、世界初のサイクロン式掃除機を売り出す前に、5128台もの試作機を製作したといわれている。ケリー氏は「当てずっぽうではなく、どの試作機も1つ前のものより確実に進歩していた」と、成功するまで粘り強く失敗を受け入れたダイソンを称える。現実には5000回もの実験が許される環境は少ないとはいえ、見習うべきはその実験者スピリットだという。
何かにトライし続ける会社でなければなりません。日々、実験に取り組み、今日の学びを将来につなげるような企業であってほしいと思います。

実験やプロトタイプは素早く、安上がりに

トム・ケリー
 「実験やプロトタイピングはできるだけ多く、ただし1回毎にかけるコストや時間はなるべく少なく」が、IDEO流の考え方だ。
 その好例が『セサミストリート』のスマホアプリを開発した際の「超ローテク・ラピッドプロトタイピング」である。キャラクターのエルモの鼻をタッチすると音楽が鳴り、彼が踊り出す機能をどうしてもアプリに搭載したかったIDEOのチームは、拡大サイズのiPhone型段ボールの画面部分をくり抜き、その向こうでエルモの代わりに社内スタッフを踊らせるビデオプロトタイプを会議直前の1時間以内に準備し、プレゼンで見事にクライアントにその案を認めさせたという。
自分ではアイデアをすばらしいと確信していても、上司やパートナーはあなたと同じようにはそのアイデアを頭に描けないから、まだ迷っている。そんなときは『自分のアイデアを盛り込んだ将来イメージを視覚化して見せてあげること』をお勧めします。プロトタイプの目的は作品を仕上げることではなく、イエスと言ってもらって次のステップに行けるようにすること。そのために、どうやったら一番早く、安くできるかを常に考えましょう。

セミナー開催概要

  • セミナー名:新事業創造カンファランス&Connect!第一部「創造性とデザインと組織」
  • 講演名:Creativity in Organizations
  • スピーカー:IDEO共同経営者、Tom Kelley氏
  • 主催:ベンチャー創造協議会/経済産業省/公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会/東京ニュービジネス協議会(Connect!)
  • 共催:政策研究大学院大学/一般社団法人Japan Innovation Network
  • 開催日時・場所: 2015年1月22日、ホテルニューオータニ