ここで言うハードフォークとは、仮想通貨の取引台帳とでもいうべきブロックチェーンの仕組みを、従来と互換性のない形で更新する手法のこと。
ハードフォークの結果、BTCとBCCは同じビットコインを源流としながら個別の仮想通貨として運用されることになります。
ビットコインが分裂するに至った背景は、その急激な利用者の拡大が原因とされます。
ビットコインには取引を記録するブロックチェーンと呼ばれるしくみがあり、その容量は従来1MBと決められており、約3000の取引記録を収められます。
当初はこれで充分だったものの、ここ最近はビットコイン決済の拡大などで利用者数が急激に増え、1MBでは足りない状況(スケーラビリティ不足)が度々発生するようになりました。これがビットコイン決済の待ち時間を長引かせることとなり、利用者の不満にもなっています。
ただ、ブロックチェーン容量を変えてしまえば、従来のビットコインをそのままでは運用できなくなるため、ビットコイン運用に発言権を持つマイナー(採掘者)たちの間で取り決められたのがSegwit(Segrageted witness)と称する仕組みの導入でした。
Segwitでは取引における署名部分をブロックから分離して管理するよう変更、その分を取引記録に割り当ててブロックチェーンの容量を見かけ上増やします。
要するに互換性を維持しつつこれまで以上の取引記録を保管できるようになるため、従来の快適な取引を取り戻せるということです。
一方、この流れに反対する一部のマイナーが支持していたのが、すぐにブロックサイズを8MBにまで増やして問題を解決しようというビットコインキャッシュへのハードフォーク案。
ブロックサイズが異なればこれまでのビットコインとの互換性がなくなるものの、ビットコインを源流として生成される仮想通貨であるため、その取扱いについても議論が巻き起こっていました。
ただ、ビットコインマイナーたちのほとんどはSegwit導入案を支持したため、まず7月23日にSegwit以外のブロックを拒否する処置(BIP91)が実施されました。
今後は8月中旬までかけてSegwitを浸透させる移行期間が続き、8月下旬にSegwitを有効化したブロックのみでの取引に移行するスケジュールが適用される見通しです。
一方、ハードフォーク支持派のマイナーらは8月1日にビットコインキャッシュのハードフォークを実行。これによってビットコインは2つに分かれる事態になりました。
ただロイターが伝えるところでは、ビットコインキャッシュを支持するマイナーが予想より少なかったため、ビットコインを生みだすマイニング能力が不足している模様。
最初のBCC採掘に約6時間もの時間がかかったとのこと。
ビットコインとは別の仮想通貨DASHを運営するDash Coreは「ビットコインキャッシュはブロックサイズこそ大きくしたものの、信頼性が追いついていない」として、ビットコインキャッシュが短命に終わるとの見解を述べています。
ビットコインキャッシュの取扱いも仮想通貨取引所によってまちまちで、保有BTCと同じ数量のBCCを保有者に割り当てるとした取引所もあれば、BCCを扱わない取引所もあります。ただ、これまで取り扱ってきたビットコインのほうはどこもこれまで通り取扱いを継続するため、相場の変動はともかく保有者が持っていたビットコイン資産がハードフォーク時点でなくなるようなことはありませんでした。
ビットコインキャッシュはビットコインから派生したという点で、その他大勢の仮想通貨とは異なるものの、結局のところはEthereumやLitecoinなどとおなじ、いわゆるアルトコインの一種としての扱いになっていく可能性も考えられます。
ちなみに本家ビットコインのほうはSegwitが8月末に通ったところで、その後11月ごろにはやはりブロックチェーンを2MBに拡大するハードフォークの計画が控えています。
これも、たとえば2MB賛成派と反対派が対立して収拾がつかない事態になれば、また新たな"ビットコイン某"が誕生するという話になるかもしれません。
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