ジンベエザメと女性モデルが驚くほど近くで泳ぐ、幻想的な写真集。フォトショップではなく、実際に撮影されたものだ。
TEXT BY JAKOB SCHILLER
TRANSLATION BY RYO OGATA, HIROKO GOHARA/GALILEO
WIRED NEWS (ENGLISH)
「サメ」と名前は付くが、性格はおとなしい。食べ物はプランクトンと小魚、海藻などで、クジラのように濾過摂食する。
美しいモデルたちがフィリピン沖でジンベエザメと泳ぐ、クリスティアン・シュミットとショーン・ハインリッヒによる写真の数々は、一見したところ、「Photoshop」を駆使したもののように見える。しかし、色の処理、背景の調整などは行われているものの、最も印象的な部分、つまりモデルとサメの「近さ」は本物だ。
彼らの写真はネットで人気となり、ジンベエザメへの関心も高まった。それこそ、ハインリッヒ氏たちがそもそもねらっていたことだ。彼らは絶滅が危惧されるジンベエザメの保護を訴えたかったのだ。
ジンベエザメは乱獲されている。フカヒレが最高級とされ、「天頂翅」と呼ばれ珍重されるからだ。
手で餌を
ジンベエザメは、「世界最大の魚」だ。動きは緩慢であり、性格もおとなしい。国際自然保護連合によって危急種に指定されている。フカヒレの材料として乱獲(日本語版記事)されているのだ。
ハインリッヒ氏によると、彼とシュミット氏が撮影を行ったセブ島オスロブ付近の海では、ジンベエザメが密漁されていた。集まってくるジンベエザメの群れが魅力的な観光資源になることに、漁民たちが気づくまでは。
オスロブでの「ジンベエザメ・エコツーリズム」は、ほかのエコツーリズムと違い、漁民たちが手で餌を与えている。つまり、ここのジンベエザメたちは、定期的に人間に会いに来ていて、人間との交流に慣れているのだ。
撮影の苦労は
ジンベエザメが人間に慣れているからといって、水中での撮影が簡単だったわけではない。強い海流がモデルを流してしまったり、曇りの日が何日も続いて、太陽が出るのはほんの数分という場合もあった。
人生を変える体験
人間が定期的に餌を与える環境は、野生種の健全な保護とはいえないという意見もある。ジョージア水族館のアリステア・ドーヴ博士も、オーストラリアではそうした環境がかえって頭数の減少につながったという報告もあると指摘している。
ただし同博士も、ジンベエザメと人の交わりの貴重さについては同意している。「ジンベエザメとごく近くまで接近し、対面することは、人生を変えるような体験だ」という。
理想的な世界であれば
ハインリッヒ氏は、サメたちが非合法に乱獲される現状よりは、オスロブのようなやり方がベターだと考えている。「理想的な世界では、ジンベエザメと人間が違う世界で生きられるだろう。けれども、現実は理想的とはいえない」
福の神
ジンベエザメは日本の一部では大漁の吉兆とされ、福の神のように考えられてきた。関東方言では「えびすざめ」と呼ばれる。この写真では、腹部にコバンザメが複数付いている。
名前の由来
英名はWhale shark。和名「ジンベエザメ」は、体にある模様が着物の甚兵衛に似ていることから名づけられたとされる。
沖縄でも
日本では、沖縄本島読谷村沖の海中生簀内で飼育されている。生簀内外でのスキューバ・ダイヴィングとシュノーケリングが可能。