かつてのアメリカの船乗りたちが彫っていたタトゥーの絵柄とその裏に隠された意味
日本ではタトゥーと言うと犯罪組織めいた入れ墨のイメージがあるため、最近ではファッションとして受け入れられつつあるも、入浴禁止などの制限も多い。
だが、米軍の兵士がタトゥーを入れるのはごく一般的なことで、ユニフォーム的なものの一環として、各部門それぞれ独自のやり方があるという。
アメリカでは昔からタトゥーの長い歴史がある。ここではかつての船乗りたちが彫っていた伝統的なタトゥーの絵柄とその裏に隠された意味を見ていこう。
1. 全装帆の船
南米の南端ホーン岬付近にいた船乗りが入れていたタトゥー。ここの海は波が荒々しい。全装帆の船は3本以上のマストをもち、すべてに横帆が帆装されている。2. 海図用の星
この星は、故郷に帰る方法を必ず見つけ出すことができるというジンクスを持つ船乗りのシンボル。暗い部分と明るい部分が交互に描かれた5つの角のある星型で、羅針図に似ている。
3. シェルバック・タートル
このタトゥーを入れることができる者は、赤道越えの経験がある船乗り。
4. 交差した大砲
交差した大砲は、水兵として兵役についたことのある退役軍人のこと
5. ツバメ
水兵たちは、5000海里ごとに新しくツバメのタトゥーを入れる。その距離は、ニューヨークとテルアビブ間に相当する約9260キロ。地球一周は2万1639海里なので、ツバメ約4.16羽分だ。
6. 錨
錨ひとつのタトゥーは、その船乗りが大西洋を横断したか、商船あるいは民間船の乗組員であることを示す。戦時にはこうした船は、軍勢や兵糧など軍需物資を運ぶ軍用船として動員された。
第二次大戦中、こうした商船が大損害を受け、死傷者を多数出し、ヨーロッパ、果てはアメリカを巻き込む戦争に突入した。
武器貸与法により、アメリカからイギリスに物資が送られたため、ナチのUボートがイギリスに向かうアメリカ船を攻撃した。商船の死傷率は3.9%。続く海兵隊が2.94%だった。
7. 手首のロープ
船員の手首に入れられたロープの結び目のタトゥーは、彼が船体、デッキ、船の上部構造、係留、荷役担当の甲板乗組員だったことを示している。甲板乗組員は外航船では現在でも健在だが、木造の船はめったになくなった。
8. フラガール
乗組員がハワイにいたことを示す。
9. 交差した錨
親指と人差し指の間にこのタトゥーを入れている船乗りは、甲板長の仲間とみなされる。彼らはデッキを整備し、小さなボートの操業や被害対策を担う。
10. HOLDとFASTの文字
拳を握ったときに前を向く両手の4本の指に入れる魔除けの呪文。索具を握っているとき、幸運をもたらすと言われている。
Holding fast(しがみつく)は、船乗りはどんなことがあろうとロープを離さないという意味。船の生活はどう控えめに言っても過酷だし、船乗りはけっこう迷信深いこともあり、自分の命を救うことならなんでもやってみる価値はあった。
11. ブタと雄鶏
第二次大戦中、足にブタと雄鶏のタトゥーを入れるのは、溺れ死なないためのお守りだった。当時、海軍はブタと雄鶏を木枠に入れて運搬していた。船が沈んでも木枠は水に浮いて、中に入れられていた動物たちが生き残ったことが由来だ。
12. 羅針盤
船乗りが無事故郷に帰ることができるための幸運のお守り。
13. 十字架
足の裏にこのタトゥーを入れておくと、サメよけになると考えられていた。
14. バラを貫く短剣
このタトゥーは、その船乗りが忠誠心が強く、バラのように芳しく美しいもののためなら、戦うことを厭わないという意味がある。
15. ゴールデンドラゴン
国際日付変更線を越えた水兵は、このタトゥーを入れる資格がある。日付変更線は、カレンダーの日付を分ける理論上の経度の線のこと。東から西へ航行するとき、経度15度を越えるたびに時計を1時間バックさせる。日付変更線を越えると、丸々24時間戻ることになる。
16. 銛(もり)
捕鯨船や漁船に乗っている、または過去に乗っていた船員の証。
17. ヤシの木
米水兵の場合は、ハワイで従軍した者がこのタトゥーを入れる。第二次大戦中の英国海軍の水兵の場合は、地中海を航行するとこのタトゥーをいれることができる。
昨年、米海兵隊は、タトゥー利用に関する内規を見直し、頭部や首筋などに入れることは認めない新たな方針を決めたそうだ。
その他、口の中、手首、ひざ、ひじや手に施すことも禁止したという。ただし、緑色のTシャツや半ズボンから成る体力訓練用ユニホームを着用した際、外部から見えない限り、上限がない多数のタトゥーを入れることができるそうだ。
via:undertheradar/ translated by konohazuku / edited by parumo