MUSIC|原田知世がラブソングカバーアルバムをリリース
原田知世と伊藤ゴローが語る、新作『恋愛小説』(1)
3月18日、原田知世のニューアルバム『恋愛小説』が、老舗ジャズレーベル「VERVE」からリリースされた。内容は、新旧織り交ぜた10曲のラブソングのカバー。原田知世がプロデューサーの伊藤ゴローとともに、作品について語ってくれた。
女優と歌手、両方の面を活かした作品
――今回はカバーアルバムですが、制作の経緯は?
――今回は「Verve(ヴァーヴ)」レーベルからのリリースですが、それも選曲する際のポイントになりましたか?
伊藤ゴロー(以下、伊藤) そこまで意識することはなかったのですが、CDにヴァーヴのマークがつくのは、うれしいですよね。ヴァーヴはジャズのレーベルですが、ゲッツ・ジルベルトなど、ボサノヴァの名盤もたくさんあります。素晴らしいジャズミュージシャンが、ポップなアプローチで作品をリリースしているところです。今回の『恋愛小説』も、最初はもう少しジャズやボサノヴァをイメージしていたのですが、やっているうちに、カテゴリが広くなっていきました。
原田 私は「Fly Me to the Moon」と「Blue Moon」、この2曲を挙げました。偶然なのですが、両方「Moon」がタイトルに入っていますね。
――『恋愛小説』というタイトルは、どこから降りてきたのでしょうか?
原田 ラブソングのカバーというコンセプトが先にあったので、それに沿うタイトルになりました。短編集のようなものになるのかな、と思ったんですね。10の物語でひとつの作品に仕上がるというか。オリジナルのときは、どういうアルバムにするかというところから相談して、曲を作り、歌詞を書いて、タイトルを決めるということをゼロからやるわけですが、今回は、私からすると、ある脚本をいただいて、その役を演じるような、そういう気持ちでした。
伊藤 やはり演じるように歌うというか、ニュアンスはだいぶ前作とはちがいます。今回はもともと曲があって、それをどう解釈して、自分たちらしく表現するかというところにお互い徹しています。一曲一曲のアレンジにはすごくこだわっているので、聴きごたえのある仕上がりになりました。
――一曲目の「夢の人」も、まったくあたらしいアレンジになっていて驚きました。
伊藤 センチメンタルで、歌詞も初々しくて、胸がキュンとするような。ビートルズのなかではマニアックですが、隠れた名曲。今回の作品でカバーできてよかったです。いい曲なんですよね、本当に。
カバーの難しさと楽しさ
――さまざまな年代の曲がラインナップしていますね。
原田 英語ならではの言葉の乗せ方があったので、何度も原曲を聴いて、つかんでいくことからはじめました。解釈をしていく作業のなかで難しかったのは、メロディ・ガルドーの「Baby I’m a Fool」ですね。もともとオリジナルが大好きで、やはり彼女の歌の力がすごくあり、自分らしさをどう出していくかというところと演じなければならない部分とで悩みました。
あとは「Don’t Know Why」ですね。当初はノラさんの歌声が自分の頭のなかで鳴っていて、どう歌おうか考えていたのですが、ゴローさんのアレンジで、まったくちがう印象の曲になり、自分なりに歌うことができました。
伊藤 ジェシー・ハリスもいっしょに歌ってくれたしね。
原田 最終的にそうなりましたね。唯一この歌だけが、自分の歌声に納得するのに時間がかかって、何度も録り直したんです。
伊藤 仕事が早いんですよ(笑)。音源を聴かせると「歌うよ」と言ってくれたので。
原田 びっくりしました。すごくうれしい驚きでした。
ミュージシャンならではのコミュニケーション
――先日、原田さんは『RADIO SAKAMOTO』に出演し、アルバムのお話もされていましたね。
原田 はい。高橋幸宏さんがナビゲーターで。雑談みたいでしたけどね(笑)。やっぱりドラムの音に耳を傾けているようでしたね。
伊藤 そうそう。ドラマーの小川慶太くんが31歳という若さで。こんなニュアンスのドラムが叩ける人はあまりいないです。幸宏さんが好きそうなドラミングをお願いしたんですよ。以前、僕のソロアルバムで幸宏さんにドラムの演奏をお願いしたことがありまして。アル・グリーンというシンガーが「ハイ・レコード」というレーベルでドラマーのアル・ジャクソンと共演していて、それが大好きだという話をしていたんですね。今回はそこを意識したサウンドになっているので、反応してくれて、うれしかったです。
原田 そういうミュージシャン同士のコミニュケーションってありますよね。言葉ではなく音で伝えて、それが意図するような感じ方をしてもらえるとおもしろいですよね。
――アレンジの自由度が随所に感じられて、聴いていると楽しそうに演奏しているようすが浮かびます。
伊藤 そうですね。とくにカバーは楽しんでやりたいです。オリジナルは生みの苦しみがあって、いいと言ってくれなかったらどうしよう……というのがありますが、カバーはもとの楽曲がその基準をクリアしているので(笑)。
原田 いい曲に決まっていますからね(笑)。だから多くの人から長く愛されているわけですし。制作はすごく楽しかったですよ。
――原田さんと伊藤さんは共同で制作をおこなわれて、もう長いですよね。
原田 はい。ゴローさんのソロアルバムで歌わせてもらったのが最初で、そのあとは、2008年に『music & me』というアルバムを作って、今回で4作目です。ここ3年くらいは「on-doc.(オンドク)」という歌と朗読の会を、ゴローさんと開いています。本当に手作りのライブで、全国各地の会場を不定期でまわっているのですが、ふたりだけなので支えあってやるしかない、緊張感のある場です。音響の設備も毎回ちがうようなところで歌ってきたというのは、自分の力になりますし、ゴローさんとも信頼できる関係性を築けました。もともとゴローさんは多くのことを説明する方ではないのですが、遊び心をたくさんもっていて、最後までなにが生まれるかわからない。いまでは、そこも安心して楽しめています。お互いが少しずつ変化していて、その時々が、音として残ってきたのだな、と思います。
伊藤 おなじ人と継続して制作をつづけるということは、なかなか叶わないもの。もちろんうまくいかないこともあるけれど、ずっとやっていて積み重なるものはたしかにあります。気負わなくなるというのもあるし、楽しくするための遊びをくわえることができるのは、長年やってきたからだと思います。つづけることはいいことだなぁ、とつくづく感じますね。
――あらためて、このアルバムの聴きどころをお願いします。
原田 長く聴いてもらえる作品に仕上がったと思います。聴き方は人それぞれでしょうけど、飽きずに繰り返し聴いてもらえるはずです。そういうアルバムを作ることは難しいことなので、今回の出来上がりには満足しています。恋愛している人はもちろん、最近恋をしていないなという方も、じっくりとそのときの気持ちを思い出せるようなアルバムになったと思います。広い年代の方に聴いてもらえたらうれしいです。
伊藤 僕もおなじ気持ちです。ジャケットもすごくいいと思います。ブックレットの中面でも、普段なかなか目にすることのできない原田さんの表情がご覧いただけますので、ぜひ。ライブも楽しみにしています。
『恋愛小説』
原田知世
3240円(UCCJ-2120)
レーベル|VERVE
ユニバーサルミュージック
http://www.universal-music.co.jp/harada-tomoyo/products/uccj-2120/
発売中
原田知世
3240円(UCCJ-2120)
レーベル|VERVE
ユニバーサルミュージック
http://www.universal-music.co.jp/harada-tomoyo/products/uccj-2120/
発売中
原田知世 LIVE TOUR 2015 “恋愛小説” 富山ヘリオス公演
日程|5月30日(土)
会場|富山 南砺市円形劇場ヘリオス
富山県南砺市やかた100 福野文化創造センターヘリオス
Tel. 0763-22-1125
nantohelios.jp
日程|5月30日(土)
会場|富山 南砺市円形劇場ヘリオス
富山県南砺市やかた100 福野文化創造センターヘリオス
Tel. 0763-22-1125
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