Surface Pro 4と次期MBPのSSDは2GB/秒超に? SamsungがMS、アップルとNVMe版SSDの供給で契約
Samsungがアップルとマイクロソフトをはじめとする主要ノートPCメーカーに対して、超高速なNVMe(NVM Express)版256GB SSDの供給契約を結んだことがわかりました。総数は2000万枚で、2016年後半まで有効とされています。写真は今回の対象と目されるSamsung製SSD『SM951-NVMe』です。
これだけでもPC好きにとっては大きなニュースですが、注目すべきはマイクロソフトの名前が入っている点。というのもこれはほぼ確実に、Surface Pro 4(仮)のSSDバリエーションにNVMe接続版が含まれること、同時にSurface Pro 3の弱点であるSSD速度が大幅に上がること、そして来年後半までには登場するであろうことを意味するためです。
どうしてそうなるのか、そしてPro 3のSSDは弱点だったのか、という点については続きで解説します。
この契約を報じたのは、Business Korea誌(詳細はリンク先を参照ください)。土地柄などからSamsung本社の動向について詳しく、とくにスマートフォン、つまりGalaxyシリーズ関連のビジネス動向では高い的中率があります。
今回Samsungが契約を結んだ製品は、出荷のタイミングと量、そしてノートPC用とされている点から、本年4月に量産開始のリリースが出たSM951-NVMeが中心となる可能性が高そうです。同モデルはM.2形状、PCI Express Gen.3(3.0) x4接続、そして論理インターフェイスとしてAHCIより高速なNVMeに対応したことが特徴。
公称最高速度は連続リードで2260MB/秒、連続ライトで1600MB/秒。さらにランダムリードは30万IOPS、ランダムライトは13万IOPSと非常に高速。とくに連続リードは公称ベースとはいえ、2GB/秒を超える速度なのがポイントです。
なお、SM951はAHCI版もありますが、そちらは既にVAIO Z(2015)やレノボのThinkPad X1 Carbon(2015)といった高級ノートPCで採用された実績のあるモデルです(写真は2月に開催された『VAIO Z徹底分解』イベントより)。
さて、なぜこのタイミングでマイクロソフトが入っていると、Surface Pro 4(仮)なのか......という点に関してですが、これは「今年後半から来年前半に出荷されるマイクロソフトのノートPC」で「NVMe版SSDが必要になるほどの性能を持った」製品がSurface Pro系しかない、という消去法によるもの。
もちろんマイクロソフトが今年後半に一般的な(クラムシェル形状の)ノートPCを発売する可能性はゼロではありませんが、定番的地位を築きつつあるSurfaceシリーズの勢いを見ていると、可能性としては非常に低いことはおわかりいただけると思います。
次になぜPro系か、という点に関して。Surface 3は既に発売されていることもありますが、加えてAtom xベースの製品では、PCI Express接続のSSDを使うには若干面倒な実装をする必要があり、さらにもし接続しても数々の制限から性能を活かせないため。また価格的なバランスからも、NVMe SSDのコストでバランスが取れるのはPro系となります。
ただし次期Proシリーズでも、下位グレードまでがNVMe版SSDになる可能性はまた別になりそうです。というのもSurface Proシリーズは、他のPCメーカーでは別のモデル名を振るような仕様の製品でも同一シリーズとして販売する戦略を採っているため。
実際にSurface Pro 3では、CPU(SoC)がこうした状況に当てはまります。というのも、Core i5以上ではUプロセッサー(発熱と消費電力の目安となるTDPが15W)なのに対して、Core i3版だけいわゆるYプロセッサー(TDP 11.5W)を搭載しています。
TDPが低ければ発熱は減りますが、相応に処理速度も遅くなることから、他のメーカーではこうした場合、Core i3もUプロセッサーで統一し、Yプロセッサー採用機は同シリーズでも別モデルとしてラインナップするところです。
こうした例がある以上、例えばCore i5以上のモデルにのみNVMe版が採用され、下位(または小容量)版のSSDはシリアルATA版という可能性も大きそうです。
次に、Surface Pro 3のSSDが弱点だったという点に関してですが、実はPro 3のSSDはPCI ExpressどころかシリアルATAであることが確認されており、しかも実際に搭載されるSSDによっては、現行のシリアルATA接続モデルと比べてでさえ正直控えめな速度です。
上記の画面はリストア直後にテクシムのTxBenchで測定した、著者の使っているCore i5/128GB版の実測です。連続リードこそ500MB/秒超えとなかなかですが、ライトは127MB/秒前後と、現在の水準からしてもあまり速くはありません。
実用でも、うっかりChromeで20ほどのタブを開いてしまい、長大な仮想メモリへの書き込みが発生してしまうと、ストレージのビジー状態に起因する応答性能低下が見られます(といっても、これは昨今のChromeのメモリ消費量が多すぎる点と、メインメモリが4GBという点が主な要因ではありますが)。
こうした事情があるため、次期Proでこういった足回りの改善が見られるのであれば、Pro 3までのユーザーとしてはかなり注目すべき改良点になる、というわけです。
ちなみにMacBookシリーズは、以前よりすべてのモデルでPCI Express接続のSSDを採用しており、今回のNVMe版採用もある意味で順当なところ。性能アップは着実にありますが、向上率やインパクトという点ではSurface Proシリーズほどではありません。
いずれにせよこうした人気ノートPCでのストレージ高速化は、他モデルへの波及も含めてPCユーザーにとっては良いニュース。常識的な価格の範囲であればどんどんと推し進めてほしいところでしょう。