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月曜日, 7月 25, 2016

毎月20万円差し上げます。【社会実験】

 

毎月約20万円差し上げます あなたなら何に使う? 米の社会実験










サンフランシスコ市の湾を挟んで対岸にあるオークランド市で、近く、聞いたこともないような社会実験が始まろうとしている。スタートアップを育てている有名ベンチャーキャピタル(VC)でもある「Yコンビネーター(YC)」によるある試み。

富裕層が増える一方で、だれもがある日突然仕事を失い、住む場所も失いかねないという厳しい環境のシリコンバレー。こんな社会のあり方に疑問を持つ人たちが出てきた。



サンフランシスコ市内のYCのオフィスで、プロジェクトを担当しているYCのマット・クリシロフ Matt Krisiloff さん(24)に会った。まだ詳細は変わる可能性があるとクリシロフさんは言いながら、こんな概要を話してくれた。






「オークランド市の協力を得て、市内のあらゆる所得層・人種・職業の約100人を選び、毎月1500~2千ドル(16万5千~22万円)を無条件に渡す。これによって最低限の生活を保障し、その人たちがどのような経済行動をとるのか、1年にわたって追跡する計画です」

幸運にも実験対象に選ばれた人は、そのお金を何に使っても構わない。

二つの仕事を掛け持ちしている人は、一つだけの仕事で生活できるようになるかもしれない。もっといい仕事に就くための職業訓練に使ってもいい。すでに十分な収入がある人はただ貯蓄に回してもいいし、海外旅行に使ってもいい。

1年間20万円近いお金が突然降ってくるという、聞いたこともないこのプロジェクトについてYCで話し合われるようになったのは、つい数カ月前のことという。考えたらすぐ実行に移すところがさすがのスピードだ。しかも、これはまだほんの試験段階。

「1年のプロジェクトが終わったら、本実験に入ります。本格的な実験では、対象を1千人に広げて5年間追跡するつもりです」とクリシロフさん。








このときはさすがに支給額を減らす予定だと言うが、それでも試験段階だけでも1億~2億円のプロジェクトになることは間違いない。YCはこの実験のために、 わざわざ専門家を雇った。有名大学の教授など数多くの応募があったという。



いったい、これによって何をしようというのか。

クリシロフさんは「YCは10年にわたって、できたばかりのスタートアップに投資してきた。同じように、テクノロジーによって得られる富を、どうやったら公平に分配できるかを考えてきた」という。


もし、最低限の生活が保障されたら、人はどのような行動をとるのか?


労働はどう変わり、人の生活の質はどう改善されるのか。この実験で得られた結果を公表して、政府や自治体などが社会保障のあり方を考える上で役立ててもらう、という。

ただ、「これは政策提言をするためのものではなく、あくまで、現金支給というあり方がいいのかどうかを含めて考えてもらいたい」と話す。

YCが始めようとしている実験は、これまでにも「ベーシックインカム」や「ネガティブタックス」といった言い方で、いくつかの国でさまざまな形態で試みられたことがある。

最近では、スイスで国民投票もあった(スイスの場合は所得制限があったが、結果は7割以上の反対で否決)。
支給の仕方にも様々なやり方があるが、当然に、財源をどうするかが、つねに大きな問題になってきた。通常は政府が税金を財源に支給するが、それを今回は一企業であるYCが全て支払おうというわけだ。

「ここ(サンフランシスコ周辺)では、安定した雇用の確保が難しくなり、生活がどんどん不安定になってきていることを、皆が実感している。
どうやったら手に職をつけたり、新しい仕事を探したりするのに最適な状態を整えられるかを考えている」という。

YCの大胆な社会実験を、 「金持ちのやること」と一蹴するのはたやすい。
私も最初に聞いたときは「金持ちのVCは考えることが違う」と、思ったものだ。

そもそも、みながしょっ ちゅう引っ越しをしている大都市で、5年間何の条件もなくお金を渡し、1千人の生活の変化を追跡調査するのに、どれだけの費用と労力と時間がかかるか。そう考えただけで、いかに常識外れの社会実験かがわかるというもの。もちろん、会社のPRや、税金対策などの側面がまったくないかと考えると、そこまで単純な話でもないかもしれない。

しかし、あちこちにホームレスがいるこの町で働く人たちにとって、この社会の構造や格差、社会保障のあり方は、「自分たちでも考えるべき問題」としてますます切実になりつつあるらしい。

クリシロフさんが言うように、この実験はある方向へと政策提言をするためのものではない。
ただ、お金をもらった人たちがどのような行動を取るのかを見ることで、社会保障のあり方などを考える材料にしてほしい、という。

この社会実験がどんな結果をもたらすのか。
そのとき、この町はどのように変化しているのか。
注目が集まっている



http://www.asahi.com/articles/ASJ7L4R8YJ7LUHBI00K.html




 

 

 

 

Yコンビネーターの社会実験始まる──オークランドで「ベーシックインカム」導入へ




シリコンヴァレーの名門インキュベーター・Yコンビネーターが、カリフォルニア州オークランドで「ベーシックインカム」(最低限所得保障制度)の社会実験を開始する。Yコンビネーターの狙いと、プロジェクトがもたらす可能性。






シリコンヴァレーの名高きインキュベーター、Yコンビネーターは6月はじめ、驚くべき発表を行った。

「ベーシックインカム」のパイロットプロジェクトを、カリフォルニア州オークランドで年内に開始するというのだ。

この実験は、参加者たちに1年間、無条件で少額の現金を毎月支給し、どうなるのかを見てみようというものだ。運がよければ、このチャンスを生かして貧困から脱出できるかもしれない。

Yコンビネーターリサーチのマット・クリシロフが『Ars Technica』US版に語ったところによれば、「30~50人」に対して月額「1,500ドル、もしくは2,000ドル(日本円で約20万円)」を支給するという。また、現 金の支給を受けない同規模の比較対照群も用意される。1年間に約150万ドルを費やすこのプロジェクトは、2016年中に開始されることになっている。


Yコンビネーターの狙い

最低限所得保障という考えは、かなり以前から各地で議論されてきた。
とりわけ20世紀の思想家たちの間で盛んに議論が行われ、例えばマーティン・ルーサー・キング・ジュニアもこの考えを支持していた。

しかし、実際にベーシックインカムの大規模な実験が計画されるようになったのは最近のことである。

カナダのマニトバ州では1974〜79年にかけて実験が行われた
オランダ・ユトレヒトやフィンランドでも、試験導入が行われることになっている。
そして今回のオークランドのほか、ケニアでも「ギヴ・ディレクトリー」という組織によって同様のプログラムが行われる予定だ。


オークランドでのプロジェクトの運営者に抜擢されたのは、ミシガン大学の博士課程を2016年に卒業した研究者、エリザベス・ローズだ。
このプロジェクトの目的は、「基本的なニーズを満たせる力と自由を人々に与えること」だと彼女は言う。
しかし、その細部はまだ十分に煮詰められておらず、多くの疑問も残っている。
参加者は実際にはどのように選ばれるのか? オークランド全住民を対象とした完全な無作為抽出が行われるのか? 高所得者は自動的に除外されるのか? 通知はどのような方法で行われるのか? 送金方法は? そして何より、このプロジェクトは本当にうまくいくのか?

もし成功すれば、Yコンビネーターのベーシックインカム・プロジェクトは次の5年で数百人規模に拡大され、おそらくオークランド以外の住民も参加することになるだろう。Yコンビネーターは貧困層を、適切な方法で支援したいと考えているのだ。


「このプロジェクトの趣旨は、Yコンビネーターで得た利益を研究に投入しようというものです」とクリシロフは語る。「Yコンビネーターには、ただお金を稼ぐだけでは面白くない、というカルチャーがあります。Yコンビネーターのプレジデントであるサム・アルトマンは、Yコンビネーターに与えられた重要なミッションは最も革新的なものをつくることだ、といつも話しているのです」


オークランドは興奮している

もちろん、人々を貧困から救うのは生易しいことではない。
ホワイトハウスによれば、2012年の統計では米国人の約15パーセント(1,340万人の子どもを含む4,970万人)が貧困線(生活を行うための最低限の収入を表す指標)を下回る生活を送っているという。

さらに悪いことに、「米国の低所得層のなかで、今後20年で所得金額分布の最低階級から脱出できる割合はおよそ半分だけ」だといわれている(『エコノミスト』誌の記事は、貧乏な人がさらに貧しくなる仕組みを説明している)。

オークランドでは、きらびやかで新しいレストランやカクテルバーがダウンタウンに生まれる一方で、全住民の20パーセント弱が貧困生活を送っている。おまけにオークランドはサンフランシスコに隣接しているため、米国で4番目に家賃が高い都市になってしまった。
米国の多くの都市と同じく、オークランド住民の生活は、所得と人種の違いによって分かれている。その格差は、質の高い教育や公衆衛生、食料品の入手における大きなギャップとしても現れている。


オークランドのリビー・シャーフ市長は、2015年10月の施政方針演説でこう述べている。「わずか1マイル違うだけで、一方の地区は他方に比べて失業率が2倍近く高く、平均寿命が15年も短い場合があります。こうしたオークランドの現状を知りながら、市が、市民全体の健康を祝うことはできません」


Yコンビネーターがベーシックインカムの計画を発表したことを、オークランド行政は快く迎えた。シャーフ市長は即座に、オークランドが選ばれたことに「興奮している」とツイートした。オークランド選出のバーバラ・リー下院議員も、この計画への支援を表明している(PDF)。


その一方で、「Causa Justa :: Just Cause」(CJJC)などの一部のグループは、Yコンビネーターはオークランドの労働者階級のニーズからかけ離れた組織であると述べ、このようなプロジェクトを適切に管理できるのかを疑問視している。





オークランドのリビー・シャーフ市長のツイート。





Yコンビネーターのオークランドでのプロジェクトは、実験段階のごく初期にすぎない。

「今回のプロジェクトの主な目的は、データを集めることです。オークランドのような社会経済的な多様性をもつ都市でそれを行うことが役に立ちます」と、サンディエゴ大学で社会哲学を研究するマット・ズウォリンクシ教授は言う。

「今回の実験により、富裕層と貧困層、教育を受けた人々と受けていない人々、技能をもつ労働者とそうでない労働者などの反応に、どのような違いがあるのかを見ることができます。そして、そこから得られた情報を踏まえることで、将来の研究や適切な公共政策をつくることが可能になるのです」








TEXT BY CYRUS FARIVAR
TRANSLATION BY HIROKI SAKAMOTO, HIROKO GOHARA/GALILEO

ARS TECHNICA (US)

水曜日, 7月 06, 2016

「Wild West Tech」|Laura Morton シリコンヴァレーの若者たちの「リアル」

 

写真家がとらえた、シリコンヴァレーの若者たちの「リアル」




フランス人エンジニアのギョーム・ラショは、Uberのアプリ開発を担当している。彼が働いているのは、「20 Mission」の屋根の上。ホテルをシェアハウスに改装したこの場所には、スタートアップの起業家たちが多く住んでいる。



誰も真似できないようなアイデアでスタートアップを立ち上げ、世界に変革を起こす。

ローラ・モートンの写真がとらえるのは、そんな成功を夢みてサンフランシスコ・ベイエリアにやってきた若者たち、意外と普通で、たまに奇妙な日常だ。




10社中9社のスタートアップは失敗に終わる。

その事実にもかかわらず、世界に変革を起こして金持ちになるという夢を抱いて、サンフランシスコ・ベ イエリアに押し寄せる人はあとを絶たない。誰もがその業界におけるUber的存在になりたいと考えていて、世界には人々の感情表現を助けるアプリや、暗闇 で光るパーティグッズを売るオンラインストアを必要なのだと信じている。

ローラ・モートンは、この狂った世界に飛び込み、「Wild West Tech」を携えて浮き上がってきた。彼女が現在制作しているこのシリーズ作品では、技術屋たちがキーボードを叩きまくるネットワーキングパーティやハッカソン、数々の小汚い仮宿の様子を垣間見ることができる。




Rothenberg Venturesの イヴェントでVRヘッドセットを試している女性。Rothenberg Venturesは、立ち上がって間もないテック企業に投資しているヴェンチャーキャピタルだ。特にミレニアル世代の創業者に注目しており、最近 「River」と呼ばれるVR事業を促進するプログラムを始めた。



人は一晩で変わる。ほんとうに

「わたしが出会った人のほとんどは、自分たちは歴史的にユニークな時代に生きていて、世界をもっとよくする、何か優れたことを成し遂げられるのだと感じていました」とモートンは話す。

「全員ではないものの、大金持ちになれる可能性に色めき立っている人もいました」

多様性と「何者にでもなれる」というアイデアに惹かれ、モートンは10年前にノースカロライナ州のチャペル・ヒルからサンフランシスコへ引っ越し た。

そのころ、サンフランシスコでは第2次ITブームが起きていた。Twitterのユーザー数がまだ少なく、ファーストネームだけでユーザー名を取得で きた時代だ。彼女が出会った人々は皆、何らかのスタートアップに携わっていた。彼女も興味はそそられたが、何かしようとは考えなかった。

しかし、2011年にLinkedInが90億ドルでIPOを成功させ、友人がミリオネアになったとき、彼女の考えは変わった。「悪い意味で、彼は本当に変わってしまいました」と彼女は語る。

「いまが、とても若い人々がまさに一晩で巨大な富を築き上げる特異な時代だと気づいたのは、そのときでした」
Magnum Foundation Emergency Fundか ら4,750ドルの助成金を受けて、モートンは活動を開始した。彼女はネットワーキングパーティやサイレントディスコに顔を出し始め、20代の若者が無料 のビールを片手に口説き合い、巨大なクマのぬいぐるみの上でいちゃつく大規模な“抱擁パーティ”にも参加した。参加を続けるうちに、散らかったアパートや シャレたコワーキングスペースに招待されるようになった。



人とぬいぐるみでぎゅうぎゅう詰めとなった“抱擁パーティ”。

(左から順に)ノラ・レヴェンソン、ニック・コール、オリヴァー・ページの3人が、ネットワーキングイヴェント「Startup and Tech Mixer」で人々と交流している。

(左から順に)サンディー・フランク、マッケンジー・ヒューズ、ダニエル・ガリオッティの3人は、ニューヨークに拠点をもつスタートアップ、Akimboで働いている。ヒューズとガリオッティは、都会のヴェンチャー企業向けプログラム「Tumml」に参加するために、夏の間サンフランシスコに来ている。フランクは彼らのインターンだ。3人はよくヒューズとガリオッティのアパートで仕事をしている。

参加者全員がヘッドフォンを着けて、DJが流す爆音を聴いて踊るサイレントディスコ。このイヴェントは、20 Missionの3周年を記念して開かれた。

プレシータ・パークで行われた、アプリ「Picnic」ベータ版のローンチパーティーで、開発者のアンドリュー・ハインズ(写真中央)がトラブルシュー ティングをしている。「Picnic」は、アプリから出されるお題に合わせて、特定の感情を表現したセルフィーを撮るゲームだ。

カリフォルニア大学バークレー校のフットボールスタジアム内で開催された、36時間のハッカソン「Cal Hacks 2.0」。同イヴェントには、10カ国143校から2,071人の参加者が集まった。ハッカソンは通常数日にわたって開催され、プログラマーやソフトウェア・ハードウェアの開発者たちが制限時間のなかで協力してプロジェクトを進める。賞や景品があることが多い。

Shirts.ioが主催した37時間のハッカソンで、キーボードの前で居眠りする女性?

プログラマーのベン・グリーンバーグが、20 Missionの自室で仕事をしている。以前Lyftで働いていたグリーンバーグは、現在、暗闇で光るパーティグッズを売るglowyshit.comで働いている。

(左から順に)エイドリアン・ティボドー、ライロッド・レヴィ、そしてエイドリアン・ショメトンの3人が、フラタニティハウスの裏庭でタバコ休憩をしてい る。3人はピア・トゥ・ピアの通貨交換プラットフォーム、「Weeleo」の共同創業者だ。夏の間、アクセラレータープログラムに参加するために、フラン スからサンフランシスコにやってきた。レヴィと(ここに写っていない)4人目の共同創業者は、節約のため、夏にアパートを借りる代わりにカウチサーフィン を選んだ。

感情表現を助けるソーシャルアプリ「Feelit」のモハメド・アルカディ、アルバラ・ハカミ、アビー・ウィスチニアの3人が、「Startup and Tech Mixer」で自社ブースに立っている。

Galvanize」 のデータサイエンスプログラムの休憩中に、昼寝をしているレヴ・コンスタンチノフスク。キャンパスはサンフランシスコの公園をテーマにデザインされてい て、彼が寝ている公共スペースはドローレス・パークに似せてつくられた。Galvanizeは、テック企業のオフィスと学校を組み合わせた場所で、米国の 各地にキャンパスをもっている。

Startup and Tech Mixerで、PuzzleboxのCEOで創業者、スティーヴン・カステロッティが「Puzzlebox Orbit」をお披露目中。「Puzzlebox Orbit」は、脳波で操作するヘリコプターだ。

20 Missionの共用キッチンで夕食を食べている同居人たち。オーストリア出身のダレン・リー(写真左)は、テック企業でのカスタマーサポートに仕事を探 すあいだ、ここに一時的に住んでいる。リオル・ノイナー(写真右)は南アフリカ出身。彼が開発した駐車アプリ「Parko」を携えてスタートアップ・アク セラレータープログラムに参加中だ。プログラムがある数カ月のあいだ、ここに滞在している。


ただし、日常は「普通」

何時間ものあいだ、誰かが延々とコード入力やデータ処理をしているのを見るのはかなり退屈だ。

そんなところで、人を惹きつける写真を撮るのは難しい。ときにモートンは、表情やジェスチャーが現れるのを何時間もかけて待つこともあった。

その忍耐強さのおかげで彼女は、VRに没頭し過ぎて部屋に誰もいなくなったことにきづかなかった女性など、ほかの人なら見逃したであろう瞬間をとらえることができた。「風変わりで面白い瞬間を、常に探し求めています」とモートンは語る。


そういったちょっとした瞬間が、「Wild West Tech」を面白い作品にしている。モートンが写し出しているのは、テック業界での生活の退屈さ、そして普段使っているさまざまなアプリやガジェットを開 発している者たちの日常体験だ。シリコンヴァレーを、風刺されている通りの場所と考えるのは簡単である。

しかし現実は、HBO(編註:米国のケーブルテレビ局)で目にするよりももっと普通で、かつ、もっと面白い。


「好況というものは本質的に、ちょっとクレイジーで滑稽なものです。でもそれが、写真をとても面白くしてくれるものなのです」と彼女は話す。





TEXT BY LAURA MALLONEE


WIRED(US)

月曜日, 2月 08, 2016

その時、シリコンヴァレーで何が起こっていたのか

Intimate Photos From the Golden Age of Silicon Valley

「シリコンヴァレーの黄金時代」をとらえた写真が教えてくれること





スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、スティーヴ・バルマー。「シリコンヴァレーの黄金時代」に、テック界の人々を撮り続けた写真家がいた。時を経て、それらの写真はようやく世に出ることになった。彼が写した一瞬一瞬は、シリコンヴァレーがいかに素晴らしい文化をつくり出したかを教えてくれるものだった。

 




ダグ・メネズは、「シリコンヴァレーの黄金時代」と呼ばれる年代の真っただ中で、15年を過ごした。1985〜2000年の間に彼は、スティーブ・ジョブズを含めた70の人々、そしてアドビシステムズやNeXTなどの企業との、前代未聞の出会いを重ねてきた。メネズの驚くべき写真の記録は、アメリカの科学技術史を変える瞬間の、最も豊かな記録のひとつだ。

しかし、彼のネガは何年間も出版されないままになっていた。理由のひとつは、メネズが「このテーマに対して一度燃え尽きてしまったこと」、もうひとつは、すべての写真を現像するには費用がかかることだった。だがようやく、彼の写真は『Fearless Genius』という本になって出版されることになった。

本書のなかでメネズは、世界を旅しながらデジタル時代の隆盛を目撃するとはどういうものなのかを語っている。彼を最も驚かせたのは、テクノロジー業界の人々でさえ、その当時が科学技術史においていかに重要な瞬間であったかがわかっていなかったことだ。「どれほど多くの人々が自分自身の歴史を知らないのかと知って、驚きました」

メネズは、その認識を変えたいと思っている。なぜなら自身が写した人々が、豊かで、活力のある、いまは消えてしまった文化をその時代に生み出したと彼は信じているからだ。

その当時、シリコンヴァレーは教育といった社会の物事をよりよいものにするテクノロジーをつくるために必死だった、と彼は語っている。そしてすべての人の利益のために、情報を自由=タダにしようとしていたのだと。

「ある人は命を落とし、ある人は精神病棟に行ってしまいました。離婚を選んだ者もいた。なぜなら彼らは、本当に、本当に困難なものを手に入れようと手を伸ばしていたからです」。シリコンヴァレーには、いまだわずかな理想主義が存在している、と彼は言う。しかし(現在の主流サーヴィスとなっている)モバイルゲームやソーシャルネットワークをつくるのは、当時の挑戦に比べたらなんでもないようなことだという。

ネメズの次のステップは、何十年も前に彼が写真に撮った人物にインタヴューをして、ドキュメンタリーを制作することだ。われわれがもうあのころと同じ時代に生きていないことを、ネメズは知っている。それでも彼は、それ以後生まれることのなかった“発明と大胆な発想の時代”を、人々に思い出させたいと語る。

「わたしは人々に、1980、90年代がかつてもっていた価値に、もっと気づいてもらいたいんです」と彼は言う。「シリコンヴァレーが『最近滅んだ森』だと思われている、ということを伝えたいわけではないんです。でも、事態は変わっていると思います」





 
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4798138576/lovespread13-22 

訳書は2014年9月に翔泳社より刊行)

月曜日, 12月 30, 2013

シリコンヴァレーが、「禅」にハマる理由


シリコンヴァレーが、いままた「禅」にハマる理由

グーグルやフェイスブックがいま瞑想に夢中だ。彼らにとって、瞑想は生産性を上げるツールであり、悟りはオープンソースでシェア可能なコードにほかならない。仏教数千年の教えをデータ主義、成果主義でハックしようとシリコンヴァレーのエンジニアたちは目論む。彼らが涅槃にいたったとき世界は平和と共感に満たされる......のだそうだ。

「これまでの“東洋の神秘”は時代遅れだ。瞑想は脳を鍛えるんだ」と語るケネス・フォーク。イケアの子ども用マットを敷いているのが、シリコンヴァレーらしい。
「瞑想」にふけるシリコンヴァレー
細身のチャディー・メン・タンは椅子の上で、足を組むハーフロータスのポーズをとり、「目を閉じて」と言う。ゆっくりと、しかしリズミカルに語る彼の低い声は、優しく魅惑的で眠気を誘う。「呼吸に意識をもっていきましょう。吸って……吐いて……そしてその間にも集中して」。肺が満たされたり空っぽになったりするのがわかる。一息一息耳を澄ましていくうちに、仕事や家庭、お金などの雑念は消え去り、胸が上下する動きだけを感じられるようになる。人々は何千年も前からこうやって瞑想してきた。それはずっと変わらない。まるで、時が止まったように室内が静けさにつつまれる。そして、もう一呼吸。
数分後、メンの「そこまで」という言葉で静寂が破られた。参加者はまばたきをして互いにほほえみ合い、辺りを見回す。間に合わせの禅堂として使われているのは、シリコンヴァレーのグーグル本社キャンパス内にある、蛍光灯で照らされた典型的な会議室だ。メンを含め参加者のほとんどはグーグル社員である。「自己探索」と題された瞑想の講座は社内カリキュラムの一環で、 感情のコントロール方法を教え、仕事に役立てようというものだ。「頭を空っぽに」とメンが参加者に合図する。次は、失敗と成功についての瞑想だ。
これまで、のべ1,000人以上のグーグル社員が「自己探索」を受講してきた。人気を博しているこの講座を受講しようと、400人以上が順番を待っている。さらにグーグルでは、禅僧ティク・ナット・ハンを2011年に招聘して以来、祈りの鐘を鳴らす以外に音を立てない「マインドフル・ランチ」を隔月で開催している。最近は、ついに歩行瞑想用の迷路までつくった。
東洋の伝統を取り入れているのはグーグルだけではない。カフェインを摂るより静かに瞑想するほうが生産性も創造性もぐっと増すというのが、シリコンヴァレーの常識だ。客観的な視点と注意力を養うため、瞑想やマインドフルネスの講座の必要性を感じる大企業は少なくない。グーグルの瞑想メソッドを誰でも学べる学校まである。ツイッターやフェイスブックの創設者たちも瞑想の実践を取り入れ、オフィスで頻繁に瞑想セッションを行い、業務中でもマインドフルネスを高められるよう計らっている。13年2月にサンフランシスコで開かれたカンファレンス「ウィズダム2.0」には、リンクトイン、シスコ、フォードなど有名企業のトップら1,700人余りが集まった。
これらの企業は、単に仏教の「実践」を取り入れているわけではない。起業家やエンジニアたちは、仏教の数千年の教えを、成果主義、データ主義、無神論的シリコンヴァレーの文化に合わせてつくりかえようとしているのだ。前世のことは忘れ、あの世のことも気にしない。ここでは、瞑想は投資であり、見返りが求められる。「これまでの“東洋の神秘”は時代遅れ」とサンフランシスコで大きな影響力をもつ瞑想指導者ケネス・フォークは言う。「むしろこれは脳を鍛え、内なる化学反応を起こそうとするための瞑想なのです」。
この関心の高まりを、国内のどこかで生まれては消えるスピリチュアルブームや、二ューエイジ運動にすぎないと片付けたくなるのはわかる。しかし無視できないのは、この伝道者たちが、わたしたちの生活に深く根付いたサーヴィスを提供する企業にいるということだ。実際、瞑想を取り入れている企業は、ニッチなアイデアから億単位のユーザーが熱狂するサーヴィスを生み出すのに長けている。

グーグルでマインドフルネスを指導するチャディー・メン・タン。日本でも著書『サーチ! 富と幸福を高める 自己探索メソッド』〈宝島社〉が出版された。「EQ」のダニエル・ゴールマンがプログラム共同開発者。TEDにも「グーグルには毎日思いやりがある」というテーマで登壇した。
神経系統のセルフハック
PCやインターネットの生みの親たちのなかには、かつてヒッピーのカウンターカルチャーに傾倒していた人も多い。東洋の宗教への興味は、現代のIT産業に組み込まれていると言っても過言ではない。スティーブ・ジョブズはインドで導師を探すのに何カ月も費やしたし、禅僧に結婚式を挙げてもらった。ジョブズが米国における仏教徒の先駆けとなる以前にも、ジャック・コーンフィールドはハーヴァード・ビジネス・スクールで瞑想の普及に努めていた。
とはいえ、大概の人が「ヒッピーの戯言」と片付けてしまうようなものを現代シリコンヴァレーの住人が受け入れるはずはない。彼らにとって瞑想は、諸行無常を感じる機会ではなく、あくまで自己を磨き生産性を高めるためのツールなのだ。これこそビル・ドウェイン(オールバックで、前腕にビキ二姿の女性のタトゥーがある元エンジニア)がグーグルのためにアレンジした瞑想入門講座「神経系統のセルフハック」の目指すところだ。「ヨガに興味がある人向けの情報は、ちまたにあふれかえっている。わたしは、自分と同じ無神論者や合理主義者の気難しいエンジニアたちに向けて語りかけたかったんだ」。
神経科学と進化生物学の話から入るのがドウェインの手法だ。「われわれはしょせん、神経質なサルの子孫」であり、戦うか逃げるかを瞬時に判断する生き物だと彼は言う。現代の職場環境においては、本能的な過敏反応は人間関係の妨げになり、感情的な口論に発展してしまう。そんなとき、脳の扁桃体から発せられる恐怖感が、理性を失わせる。するとわたしたちは、サルの本能のいいなりになってしまうのだ。
EIが高ければ金が儲かる
瞑想すると、脳にかかるストレスへの反応回路が組み替えられるとする研究結果も多い。ボストン大学では、たった3時間半の瞑想トレーニングで、感情が傷つけられるイメージに対して被験者が反応しにくくなることが証明された。瞑想は「ワーキングメモリー」と目的を成し遂げるための能力「実行機能」を向上させるとする研究もある。瞑想を長期間続けた人は、次々と変化していく刺激に対応する能力が高いということもわかっている。グーグルが引用している研究によると、瞑想を習慣化している人は風邪もひきにくいそうだ。
しかし、グーグル社員が瞑想に興味をもつのは、単に風邪を予防したいからでも感情をコントロールしたいからでもない。エンジニア集団に欠けがちな「心の知能(EI)」を伸ばすにあたり、互いの行動の動機を理解し合うために瞑想を用いるのだ。「EIを伸ばすと仕事にいい影響が出るとみんなわかっています」と「自己探索」の講座を立ち上げたメンは言う。「そして社員のEIが高ければ金を稼げると、企業もわかっているのです」。
メンのキャリアは輝かしいものだ。107人目の社員として2000年にグーグルに入社し、携帯端末の検索機能を開発していた。当時、何年かかけて職場に瞑想を取り入れようとしたが、あまりうまくいかなかった。07年にEIとからめて瞑想の練習を紹介したところ、急激に需要が高まった。いまではグーグルに、瞑想やマインドフルネスに関連する社員向け能力開発プログラムが多数ある。シンガポールに生まれ、米国人の尼僧の影響で仏教を学び始めたメンは、次第に社内でカリスマ的存在になっていった。講座の生徒からサインを求められたこともあるという。
瞑想がグーグルに何か利益をもたらしているかというと、実は定かではない。全米産業審議会などによる研究から、感情的に他人とつながっている人はひとつの職場で長く働くケースが多いとわかっている程度だ。従来グーグルは生産性を保つため、社内にジムをつくり、マッサージに助成金を出し、無料でオーガニックな食事を提供して社員の生理的欲求に応えてきた。働く意義と感情的つながりを追い求めるための手助けをするのも、その一環というわけだ。
ドウェインは、自分の仕事やプライヴェートの質が上がったのはグーグルの瞑想プログラムのおかげだと思っている。つい最近まで、彼自身もストレスを抱えていた。社内でも負荷が高いとされる、サイトの信頼性を高めるためのエンジニアを30人も率いていたうえに、父親が重い心臓病のため病床に伏していたのだから無理もない。
「いつも通りバーボンとチーズバーガーで乗りきろうとしたが、さすがに無理だった」とドウェインは振り返る。そこで彼は、メンのマインドフルネス講習を受け、すぐに瞑想の習慣を生活に取り入れた。
ドウェインの父は亡くなってしまったが、瞑想で身につけた感情のコントロール方法が悲しみを乗り越えるのに役立ったという。さらに、瞑想で集中力が増したおかげで150人もの社員を束ねる管理職に昇格することもできた。2013年1月にドウェインは、エンジニア職を辞して瞑想の社内普及にフルタイムで尽力することを決意した。グーグルは、社内教育でマインドフルネスに重点を置こうとしていたので、ドウェインの方針転換を快く受け入れてくれた。
ドウェインはいまでもヒッピーがそれほどいいとは思っていない。経験主義だと公言してはばからない。それでも、「自己探索」の講座でメンが、地球上全人類の善のエネルギーを集めた白い光をイメージするように指示したとき、彼を含め参加者のなかにとまどう者は誰もいなかった。
メンは再び声のトーンを落とし、さらにゆっくりと話す。それに応じて参加者も目を閉じる。「息を吸うとき、集めた善のエネルギーを心に取り込みます。心の中でそのエネルギーを10倍にしましょう」。これはトンレンというチベット仏教式瞑想の訓練方法だ。「息を吐くときは、10倍にした心のエネルギーを世界中に届けるつもりで。まばゆい白い光を吐く姿を想像してもよいでしょう」。全員が息を吐く。純粋な愛を思い描こうとすると、頭の中が騒がしくなってしまうのがわかる。いまいる場所が社内の会議室であることなど、しばし忘れる。

仕事に活きる禅の言葉

怒らない 禅の作法

木曜日, 10月 25, 2012

「シリコンヴァレー5大企業の 戦争」をイラスト化

グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック、マイクロソフトは、スマホ、 SNS、検索、クラウド等の戦場でぶつかりあっている。その関係図を、島と軍艦を使ったイラストで紹介。

Illustration: Radio

グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック、マイクロソフトというテクノロジー界の5大企業はいま、壮大な闘いの渦中だ。

たとえばアマゾンは電子書籍のシェアを巡ってアップルと争っている。この闘いは、現状でもすでに苦しんでいる出版業界の金庫を空っぽにしてしまうだろう。

一方、アップルとマイクロソフトは、グーグルの「Android」OSで動くモバイル機器のメーカーを相手に特許侵害訴訟を起こしている。

5つの企業はお互いを出し抜くべく、GPS地図から書籍配信までありとあらゆるものをめぐって代理戦争を繰り広げ、その後にはおびただしい数の新興企業の残骸が残されてもいる。たとえばグーグルは2011年に79もの企業を買収したが、 そのほとんどを廃業させて、採り入れた能力は自社の別プロジェクトで活用している。

冒頭に掲載したイラストは、人材や知的所有権、そして市場シェアをめぐってシリコンヴァレーで現在展開されている戦略的争いの全体像を、わかりやすい地図 にまとめてみたものだ。

※以下は、互いに訴訟合戦を繰り広げるスマートフォン・メーカーの相関図(2010年)。


TEXT BY JOE KLOC
TRANSLATION BY ガリレオ -藤原聡美

WIRED NEWS 原文(English)