Intimate Photos From the Golden Age of Silicon Valley
「シリコンヴァレーの黄金時代」をとらえた写真が教えてくれること
スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、スティーヴ・バルマー。「シリコンヴァレーの黄金時代」に、テック界の人々を撮り続けた写真家がいた。時を経て、それらの写真はようやく世に出ることになった。彼が写した一瞬一瞬は、シリコンヴァレーがいかに素晴らしい文化をつくり出したかを教えてくれるものだった。
ダグ・メネズは、「シリコンヴァレーの黄金時代」と呼ばれる年代の真っただ中で、15年を過ごした。1985〜2000年の間に彼は、スティーブ・ジョブズを含めた70の人々、そしてアドビシステムズやNeXTなどの企業との、前代未聞の出会いを重ねてきた。メネズの驚くべき写真の記録は、アメリカの科学技術史を変える瞬間の、最も豊かな記録のひとつだ。
しかし、彼のネガは何年間も出版されないままになっていた。理由のひとつは、メネズが「このテーマに対して一度燃え尽きてしまったこと」、もうひとつは、すべての写真を現像するには費用がかかることだった。だがようやく、彼の写真は『Fearless Genius』という本になって出版されることになった。
本書のなかでメネズは、世界を旅しながらデジタル時代の隆盛を目撃するとはどういうものなのかを語っている。彼を最も驚かせたのは、テクノロジー業界の人々でさえ、その当時が科学技術史においていかに重要な瞬間であったかがわかっていなかったことだ。「どれほど多くの人々が自分自身の歴史を知らないのかと知って、驚きました」
メネズは、その認識を変えたいと思っている。なぜなら自身が写した人々が、豊かで、活力のある、いまは消えてしまった文化をその時代に生み出したと彼は信じているからだ。
その当時、シリコンヴァレーは教育といった社会の物事をよりよいものにするテクノロジーをつくるために必死だった、と彼は語っている。そしてすべての人の利益のために、情報を自由=タダにしようとしていたのだと。
「ある人は命を落とし、ある人は精神病棟に行ってしまいました。離婚を選んだ者もいた。なぜなら彼らは、本当に、本当に困難なものを手に入れようと手を伸ばしていたからです」。シリコンヴァレーには、いまだわずかな理想主義が存在している、と彼は言う。しかし(現在の主流サーヴィスとなっている)モバイルゲームやソーシャルネットワークをつくるのは、当時の挑戦に比べたらなんでもないようなことだという。
ネメズの次のステップは、何十年も前に彼が写真に撮った人物にインタヴューをして、ドキュメンタリーを制作することだ。われわれがもうあのころと同じ時代に生きていないことを、ネメズは知っている。それでも彼は、それ以後生まれることのなかった“発明と大胆な発想の時代”を、人々に思い出させたいと語る。
「わたしは人々に、1980、90年代がかつてもっていた価値に、もっと気づいてもらいたいんです」と彼は言う。「シリコンヴァレーが『最近滅んだ森』だと思われている、ということを伝えたいわけではないんです。でも、事態は変わっていると思います」