ART|アンリ・カルティエ=ブレッソンの代表作54点を展示
シャネル・ネクサス・ホールで『こころの眼 L'Imaginaire d'après nature』展
Text by YANAKA Tomomi
ブレッソンの写真美学を集約
1908年にフランスで生まれ、若きころはシュルレアリスムなどの絵画に親しんだアンリ・カルティエ=ブレッソン。アフリカ・コートジボワールに1年滞在 後の1932年、その後も愛用することになるライカカメラとの出合いをきっかけに、生涯つづく写真への情熱を抱きはじめる。1933年にはニューヨークで 初の個展を開催。その後は映画の仕事にも参加している。 しかし、そんな彼に戦争の惨禍が待ち受ける。1940年に大戦の捕虜となり、脱走を試みるも失敗。1943年、ようやく3度目にして成功し、その後は囚人 や脱走兵を支援する地下組織にくわり、1945年にはジャーナリスト集団の一員としてパリ解放をカメラに収めたほか、ドキュメンタリー映画『帰還』も撮影 している。1947年にはロバート・キャパやジョージ・ロジャーらとともにいまも“最強の写真家集団”として名をはせるマグナム・フォトを設立。写真家と して確固たる地位を確立していく。
今回の展覧会では、そんな彼の代表作54点を展示。写真をルポタージュ技術からひとつの芸術へと高め、伝統、倫理、そして王道といった言葉であらわされる ような哲学にのっとったブレッソンの写真美学が集約された。
「私にとってカメラは、スケッチブックであり、直感と自発性を操る道具であり、そして視覚的な意味において、質問を投げかけると同時に決定を下す瞬間の支 配者である」と語ったブレッソン。大戦をはさみ、ひとびとの記憶に残る作品を数多く撮りつづけてきた希代の写真家の作品を堪能したい。
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