「亞書(あしょ)」
ギリシャ文字などが並ぶ本の狙いは何なのか。
ギリシャ文字などを無作為に打ち込んだ1冊6万4800円(税込み)のシリーズ本が、国立国会図書館に78巻納本された。納本された本の定価の一部などを発行者に支払う仕組みがあるため、すでに42冊分の136万円余が発行者側に支払われている。納本は法律で義務づけられているが、ネットでは疑問の声が上がり、同館も支払いが適正だったのか調査を始めた。
問題の本は、りすの書房(東京都墨田区)が発売した「亞書(あしょ)」。
同社によると2月にネット書店「アマゾン」で販売を開始。112巻まで作成し、最終的には132巻まで出す予定という。A5サイズで480ページのハードカバー。各ページとも縦12センチ、横9センチの枠内にギリシャ文字やローマ字が並び、ページ数は振られておらず、全く同じ内容のページもある。国会図書館へは3月ごろから10月にかけて78巻までが1部ずつ納本された。
同社は2013年3月に設立され、代表取締役の男性(26)が1人で運営。男性は取材に対し「自分が即興的にパソコンでギリシャ文字を打ったもので、意味はない。本そのものが立体作品としての美術品とか工芸品。長年温めてきた構想だった」と説明。題名も「ひらめいて付けた。意味はない」。著者のアレクサンドル・ミャスコフスキーは「架空の人物で、作品のイメージとして記載した」と話した。
「亞書」を制作した、りすの書房代表取締役の男性(26)との一問一答は次の通り。
「ネットの指摘はいわれなき中傷」 「亞書」制作の男性
――ギリシャ語のわかる人が見ても、まったく意味がわからないと言っていますが、どういう内容なのですか。
自分で書きましたが、パソコンでギリシャ文字をランダムに即興的に打ち込んだものなので、意味はないです。メッセージも特にない。デザインですね。題名も意味はなく、ひらめいて自分で付けました。作者は自分のペンネームであり、作品のイメージで名づけた架空の人物です。
――全く同じ内容のページもありますが?
同じ部分が入っているところは意図的にしています。面白みを出すためです。
――出版の意図は?
112巻まで作りましたが、132巻まで出したいと思っています。
しかし本当は(分冊せずに)全部で1冊の分厚い本にしたかったんです。
美術作品 や工芸作品という感じですね。1冊1冊それ自体が、本というより立体作品。
昨年12月から制作を始めましたが、構想は学生の頃からずっと温めていたもので す。
――誰に読んでもらおうとしているのですか。
分かってくれる人が見てくれればいいです。
国立国会図書館は納本された本の定価の5割と送料を「代償金」として発行者に支払うことが国立国会図書館法 などで定められている。
2014年度は、約15万点に対し約3億9千万円の代償金を支払った。
「亞書」は目録作成中のため館内での閲覧はまだできないが、 同館のホームページの蔵書リストに載ると、ネットで「代償金目当てでは」と炎上。りすの書房は10月26日以降、アマゾンでの販売を取りやめている。