映画「WE ARE Perfume WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」
映画『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』特設サイトwww.youtube.com
Perfumeのドキュメンタリー映画を見て来た。
図書館戦争を3回見に行った時に毎回この予告が流れていて、今アイドルやアーティストによるドキュメンタリー映画ブームなんだなということを実感していた。ドキュメンタリー映画というと、AKBグループの印象がアイドル好きの私の中では強く、彼女たちのリアルな姿が惜しみなくさらけ出された作品に胸を痛めることもしばしばあった。しかしPerumeのこの作品にはそういった要素は少なく、泣かせようという意図は無くとも自然と涙が溢れ感動出来る内容のものだった。
私は正直、Perfumeについてそこまで詳しくはない。「ポリリズム」で注目を浴び始めた頃に一度好きになり、その当時はCDやDVDを少し買ったものの、その後は録画していた音楽番組に彼女たちが出ていたら一緒に見る程度だった。その当時に「Perfumeの気になる子ちゃん」という番組の観覧に何度か足を運んではいたが、彼女たちの本筋であるライブのパフォーマンスは一度も生で拝見したことがない。
けれどもずっと彼女たちに対しては拭い切れない親近感があり、それは彼女たちが世界を回るアーティストになっても変わらずにあった。私は彼女たちと同じ歳である。広島という地で、SPEEDに憧れてダンススクールでレッスンを積み、ユニットを組み、そしてデビューをしていった彼女たちを見ると、まるで自分のパラレルワールドを見ているような気分になる。私も小学生の頃、SPEEDに憧れてダンススクールに通っていた。同世代の女の子であの当時ダンススクールに通っていた人たちのほとんどが、沖縄アクターズスクール出身者への憧れを持っていたと思う。
例え私がそれからずっとダンスを続けていたとしても、決してPerfumeと同じ道を歩めなかっただろうけれど、私が選択しなかった道の先にPerfumeのような未来があったのかもしれないと思うとそれだけで幸せな気持ちになれる。自分のパラレルワールドが実像として存在するような気持ちで、いつも彼女たちのことを見てしまう。
ドキュメンタリーというと、アクシデントやハプニングが付き物であるが、この作品の中では特に大きな混乱は起きない。演出で大きな役割を果たすLEDが付かないというトラブルが一箇所あったものの、演者であるPerfume本人たちが怪我をしたり風邪をひいたというトラブルは起きない。そういったアクシデントがあるとそれを乗り越える必要性が出てきて、作品は一層視聴者の感情を引きずり込ませることが出来るのだけれど、彼女たちにそういった不調は見られず、もしかしたら何処かでそんなシーンも実際にはあったのかもしれないけれど、それは作品の中に映し出されない。ドキュメンタリーに対してすぐにそういった混乱を期待してしまう癖がついてしまっていたが、体調を絶対に崩さないし、慌てている様子も見せないPerfumeの優等生ぶりに改めて気づかされた。当たり前のことを当たり前にこなしていく、着々とワールドツアーをこなしていく。最後の公演が終わった時の感動は、「ハプニングを乗り越えて無事成功させた感動」ではなく「真面目な人間が着実に正確に階段を昇って、頂上で正当な評価を受けている感動」だった気がする。「プロ」という言葉がまさしく似合う3人だった。
私はついついメンバーの関係性に目を向けてしまうのだけれど、Perfumeは「女の子3人組」というところが最高に良い。2人組でもなく4人組でもなく、3人組。3人組は、1:1:1か、2:1という組み合わせしかなく、この2:1に私は夢を見てしまう。誰かと誰かがペアになると、必然的に残りは1人になってしまう。この作品上では、かしゆかとあ~ちゃんが真面目な似た者同士で、のっちが少し二人とは違う視点で見ているように思えた。あ~ちゃんが「のっちはいい意味で適当な人」と称していたのが印象的だったが、それを象徴するシーンで、本番で振付を間違えたのっちが終わった後にその時のことをメンバーとスタッフに話しているシーンがあった。その話し方が「あそこ振付間違えてごめん」という感じではなくて、「頭真っ白になっちゃって~」と笑いながら語っているもので、彼女のキャラクターの良さがとても出ていた。
そんなのっちが語っていた言葉で印象的な言葉がある。「中田ヤスタカさんの音楽も、MIKIKO先生の振付も、素晴らしいものだけど、それを踊っているのが私だからかっこいいと思われたい」という言葉だった。確かにPerfumeを語る上で、音楽性と振付や演出の世界観の強さは外せない要素である。演者がこの3人でなくとも、この音楽性と世界観があれば誰でも売れたかもしれないというようなことをこれまでに誰かに言われたのかもしれないし、また自分自身でも考えていたのかもしれない。だからこそ「踊っているのが自分だからかっこいいと思われたい」と言いながら、まだちょっと自信無さ気な彼女の表情が印象的だった。けれどもそんな彼女のダンスの才能は、誰にでも真似出来るものではないのだから堪らない。誰が踊ってもこうはならないと証明している姿は美しい。
ワールドツアー最後の公演で、あ~ちゃんが「Please keep loving Perfume!」と客席に向かって叫んでいたのが印象的だった。日本語の聞き慣れた言葉に訳すと「これからも応援よろしくお願いします」にあたるだろうか。「Please」まで聞いたところで、何をお願いされるのだろうと構えていたら、その後に「keep loving Perfume!」と続いたのには胸がキュンとした。あ~ちゃんは開演前に組む円陣でいつもメンバーに対して一言喋る。「寒い中朝から待ってくれてたなんて、相当私たちのこと好きよ」その感性の鋭さに毎回ドキッとする。メンバーの士気を高めるのが上手く、AKB48の高橋みなみさんのようだった。リーダーシップを発揮する人には、冷静な視点と人を愛することが出来る純粋さが必要なんだと思った。
映画が終わった後、頭が痛くなる程泣いていた。紆余曲折あった方がエンターテイメントは盛り上がるのかもしれない、真面目に取り組んできた人間よりもそういう星のもとに生まれてきた人間がスターの階段を駆け上がっていく方が物語性や運命性があって面白いのかもしれない。そんなことを常々考えていたけれど、真摯に仕事に向き合って来た女の子たちが一歩一歩夢を叶えていくストーリーの方がずっと泣けた。きっとまだこれからも続いていくであろう美しい私のパラレルワールド、最高のパラレルワールド、Perfume。
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