金曜日, 5月 08, 2015

ちょっと疲れたママへ 中川李枝子さん 



ちょっと疲れたママへ 中川李枝子さん 

【動画】絵本作家・中川李枝子さん。「みんなお母さんが大好き」=瀬戸口翼撮影
 子どもの入園入学、自分の復職や異動など、新しい環境でこの春を迎えた方も多いのでは。絵本「ぐりとぐら」の作者で作家の中川李枝子さん(79)に、母親と子どもの向き合い方を聞きました。
 「この季節は、慣れない新生活で疲れたお母さんたちもいるかもしれませんね。子どもも結構、緊張しているのよ。遊びほうけているように見えるけど」
 中川さんは20歳で保育の学校を卒業してから17年間、保育士として子どもと接してきた。
 「自分の子がきまじめでもおおらかでも、親は心配になります。自分の子の気になるところが、周りからはうらやましく見えることもあります。親ってそんなものですよ。子どもをよく見ていれば、他の子と比べたり、焦ったりしなくて大丈夫」
 長い保育士生活でわかったことは「子どもはお母さんが大好き」ということだ。どんなに子どもの気を引こうとしても、母親を超えてナンバー1にはなれなかった。
 親が知らない子どもの姿があるという。「園で、お母さんの自慢をしあっているんです。『スリッパでゴキブリをたたいた』『足の指にタコがある』『ほくろがある』『おなかに盲腸を切った痕がある』。どれも立派な自慢です」
 想像力豊かな子どもは、遊びも上手。子どもの想像力を伸ばそうと、保育園では絵本を読んだりお話をつくったりすることを大切にした。子どもは親の姿もしっかり見ていて、親が困っているときはその気配を感じる賢さがあるという。「親が仕事で頑張っていることも、子どもは理解しています」
 子どもを預ける母親の迷いもよく分かる。「でも、24時間一緒にいなくてもいいのよ。子どもの喜びに敏感で、子どもがうれしいことを一緒に喜べる、喜びを共有できるって、いいお母さんです」
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 保育士をしながら童話を書き始めた。1959年に結婚、翌年出産。62年に「いやいやえん」、その後「ぐりとぐら」を出版した。
 多忙な日々、どのように時間をやりくりしていたかは覚えていない。通勤時間がもったいなくて保育園のそばに住んだ。
 夜は、息子に絵本を読む毎日。楽しみな時間だが、くたびれている時に限って「もっと読んで」とせがまれる。邪険にできず、「あとで」も通じない。そんな時は「超特急の速さで読みました」と笑う。「園でそうはいかないけれど、家でそんな日もあっていいんです」「お母さんたちは今、したいことをする時間がないかもしれません。でもこの先、できる時は来ますよ」
 子どもの「もっと」はいずれ卒業する時がやってくる。「子育てには『抱いて、おろして、ほっといて』の段階がある」。成長して「おろして」と言われればおろさざるをえないし、「ほっといて」と言われたら口出しを我慢しなくてはならない。だから中川さんは言う。「『抱いて』の時期に大事なことを伝えておいて」(文・大井田ひろみ 写真・瀬戸口翼)
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■ぐりとぐら、由来は?
 ――「ぐり」と「ぐら」という名前の由来は。
 保育士のとき、子どもたちに読んでいた絵本に「プッフとノワロ」というフランスの絵本がありました。野ねずみが「グリッ、グル、グラ」と歌う場面になると子どもたちも大合唱になるの。そこから名付けました。
 ――映画「となりのトトロ」の主題歌「さんぽ」の作詞も手がけました。冒頭の「歩こう 歩こう」が印象的です。
 宮崎駿監督から「映画を離れても、子どもたちが口ずさめる歌を」と注文がありました。
 イメージしたのは、私が子どものころ過ごした札幌市や福島市の自然豊かな風景や、子どもの様子です。
 私は小さいときから自然の中を歩くのが好き。幼い頃は戦争中で、いつ爆弾が落ちてくるのかと空ばかり見ていました。だから、広々したところで手足を動かして、自由に転がったりはねたりしたかった。
 保育士になり、子どもたちとよく散歩しました。子どもは1日1回、思いっきり走らせたい。子どもは外が大好きなのよ。
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 1935年札幌生まれ。保育士として働きながら創作開始。「いやいやえん」「ぐりとぐら」(福音館書店)など。新刊に、子育て中の母親に向けた「子どもはみんな問題児。」(新潮社)