総額5億円の機材が使えるものづくり拠点DMM.make AKIBA誕生。シェアオフィスも備えスタートアップ支援
DMM.comは、ハードウェア・スタートアップを支援するものづくり施設「DMM.make AKIBA」を、東京・秋葉原に11月11日に開設します。大手メーカーも使用する機材150点、総額5億円分を自由に使え、シェアオフィスや各種コンサルティング、飲食可能な共用スペースも備えます。現地より写真レポートをお届けします。
DMM.make AKIBAは、ハードウェア・スタートアップを支援するものづくり施設。
秋葉原駅からほど近い富士ビルの3フロア(10~12階)で構成され、延べ床面積は約2000平方メートルです。
12階の「Base」フロアは、スタートアップに必要なオフィススペースや、最大80名を収容するフリーアドレスのシェアスペース、飲食可能なバーなどを設置。11階の「Hub」フロアは、部品の選定や資金調達といった一連のコンサルティングを行えるスペース。10階の「Studio」フロアでは、環境試験から量産試作、小ロット量産を行える各種機材を用意します。
1台数百万円する工作機械など、大手企業も使用する本格的なもの含む150点、総額5億円の機材を自由に利用できるほか、コンサルティングサービスも充実させたといい、「作りたい気持ちがあれば作れるという環境を用意した」とDMMの吉田賢造総支配人は話します。
またDMM.make AKIBAには、株式会社ABBALab とCerevo が移転し、DMM.makeとともにハードウェア・スタートアップを支援します。
利用は月額契約制で、Baseフロアのオフィス利用は月額2万円から、Studioフロアの機材利用が月額1万5000円から。両方利用すると月額3万円からとなります。
12階の「BASE」と呼ばれるフロア。シェアスペースや飲食可能なバーカウンター、会議室、プロジェクターなどが揃います。
シェアスペースは最大80名を収容。スタートアップ系では人が気軽に集えるスペースが重要なだけに、飲食パーティーやちょっとした新製品発表会にも活用可能。ここでの何気ない会話が思わぬひらめきに繋がることもありそうです。
会議室。壁は吸音素材を採用し静かで落ち着ける雰囲気です。
こちらは個室フロア。全25室で3人から利用できます。入退出はカードキーで管理します。
秋葉原の風景を望めるミーティングスペースも用意されています。
こちらは10階にある「Studio」フロア。実際に大手企業や町工場で導入されている、5軸のCNC(切削機)や熱衝撃、荷重破壊、水圧試験機、HDMI試験機などといったハードウェア開発に必要な本格的な機材が揃います。
「機材リストを見るだけで、頭が沸騰しちゃう。ハードウェア系が好きな人なら」とCerevo岩佐社長。
こちらは5軸 CNC(切削機)。5軸のドリルが、全自動であらゆる方向から形状を削り出します。「カメラくらいの複雑な形状であっても一発で削れる」とDMMの吉田賢造総支配人。
実際に5軸切削機で金属を削りだしたもの。
こちらは振動を発生させる機材。船やトラック輸送時の振動をシュミレートし、梱包した商品にこすりがないかを確認する用途に使います。「単純な機材なんだけど、量産クラスの製品ではこれがないと話にならない」とCerevoの岩佐琢磨社長。
こちらはシールドルーム。完全な電波暗室となっており、技適を取得していない機器のテストや、アンテナ設計が可能。IoT(ものとインターネットの連携)時代を見据えた機材です。
こちらは防水性能をテストする水圧試験機。ウェアラブル機器やGoProが話題となるなか、防水対応デバイスの開発にも対応。Cerevoの岩佐社長は「ただ防水にするなら蛇口をひねって試せばいいが、IPX8を取ろうとか、水深30mでの動作を確認する際にはこのような機材が必要」と話します。
こちらはPCルームです。デザインやCAD、シミュレーションに利用します。
PCの横には感触フィードバックを伝えるデバイス「フリーフォーム」を備えます。これは感触のフィードバックを得ながら3D造形を行えるもので、実際に触れてみると、まるで粘土細工をするように、球を凹ませる操作を直感的に行えました。
なおABBALabの小笠原治さんによると「フリーフォームはMITの研究から派生したもの。今はパチンコ台など、有機的なデザインの設計にも使われる」と話します。
PCの横には簡易3Dプリンターを設置。
デザインを設計する際に、現物を見ながらデザインを考えられるようにとの配慮です。
このほか、1GHz対応の高性能オシロスコープや、ウェアラブルを見据えた工業用刺繍マシン、筐体に塗装するマシンなど、各種機材を用途ごとにまとめ10階の各部屋に設置しています。
これは無線の電波(例えばCDMA2000など)の電波を出せる機器。「地味だが重要なものばかり。例えばUSB 3.0対応デバイスを作るときに必要なアナライザー。これだけでレクサス2台分が買える」とCerevo岩佐社長は話します。
エアブラシを備えた塗装ルーム。
業務用のハンダ付け機。部品の載っていない電子基板(生基板)に部品を実装する用途に使います。
「0.4mm、0.2mmといった、携帯電話に使われるような最小の部品を0.1mm精度でパッパと置いていく。家電を開発するうえで一番重要なプロセスがこの部屋でできる。部品の実装が終わればあとはやることは簡単。梱包して出荷」とCerevoの岩佐社長。
業務用のハンダ付け機から出てきた電子基板。顕微鏡を使わなければはっきりと見えない極小の部品を実装しています。
秋葉原駅からほど近い立地に加え、大手メーカーも使う150点の本格的な機材、資金調達や部品選定といったコンサルティング、スタートアップに重要なミーティングスペースや会議室を月額3万円から利用できる本施設。ハードウェア・スタートアップ志望者の「ものづくりの拠点」を目指します。DMM.make AKIBAは11月11日に開設。10月31日より利用者の募集を開始しています。
質疑応答
Q:会員制度で人を募集するという形だが、短期的な設備利用は可能か
A:最低ミニマムは2か月間。
Q:スタートアップで製品を出したら、その収益がDMNの収益に繋がるのか
A:例えば素晴らしい製品が出てきた時に、我々の流通を利用させていただくなど
Q:会員はどれくらいを見込んでいるか
A::初年度で300~500名を見込んでいる
Q:どういう人に集って欲しい
A:言い方が悪くなるかもしれないが、電子工作で終わらないでください。大手メーカーで務められている方が、会社ではいろいろするけど、結果製品化もされず、もがき苦しんでいる方。こういう場所で発露してもらいたい。お金の言い訳をしている方、数千万円かかるとか、そんなので悩んでいるなら、ここで手を動かしてほしい。