火曜日, 11月 04, 2014

女性プログラマーの数が少ないのはなぜなのか?


女性プログラマーの数が少ないのはなぜなのか?




ビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏、マーク・ザッカーバーグ氏などIT業界のビッグネームはみな男性です。しかし、コンピューター分野の先駆者の中にはElsie Shutt氏のような女性もいたそうで、1984年までは彼女のような女性プログラマーを目指してコンピューターサイエンスを大学で専攻する女性の数は徐々に増えていました。

Ministry of Truth » Blog Archive » So where did all the women coders go?
http://www.ministryoftruth.me.uk/2014/10/23/so-where-did-all-the-women-coders-go/


1984年に突如コンピューターサイエンスを専攻する女性の割合が激減しており、その割合は現代に至るまで減り続けています。その様子がよく分かるグラフが以下のもので、「Medical School(医大)」「Law School(ロースクール)」「Physical Sciences(物理科学)」「Computer science(コンピューターサイエンス)」といった4つの分野を専攻する学生の女性比率を図示したものとなっています。他の分野では年々全体における女性の割合が大きくなっているのに対して、コンピューターサイエンスだけは1984年から女性の比率が減少傾向にあり、現在では20%を切ってしまっている、という悲惨な結果。アメリカのナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は「When Women Stopped Coding(女性がコーディングを辞めた瞬間)」としてこのグラフをピックアップしています。


とは言っても比率が減少しているだけで、コンピューターサイエンスを専攻する女性の数は徐々に増加している可能性もあります。そこで登場するのが、1970年から2011年までの期間にコンピューターサイエンスおよび情報科学分野の学位を取得した人数を、National Center for Education Statisticsのデータから明らかにした以下のグラフ。


上のグラフを見ると、コンピューターサイエンスおよび情報科学分野の学位を取得する学生の数は1970年から増えており、これは男性と女性のどちらにもみられるものであることが分かります。そして、1976年から1985年にかけて男性の学位取得者の数は女性の学位取得者よりも急増しており、これにより男女比が男性側に大きく傾いていったことも分かります。

この理由について、1980年代にコンピューターサイエンスおよび情報科学分野の学位取得者数が急増しているのは、男性がコンピューター関連の広告のメインターゲットになる場合が多かったからでは、とNPRは推測しています。なぜ80年代の広告代理店がコンピューターを男性に売り込んでいったのかは不明ですが、80年代からコンピューターオタクが登場する映画や雑誌や小説などは複数あり、これらにより「コンピューターは男性向けのもの」という思い込みのようなものが形成されていったのかもしれない、とのこと。

実際に80年代のテレビコマーシャルを見てみると、コンピューターが「男性向けの端末」といった位置づけで市場で売り込まれていることがよく分かります。

80's Radio Shack Color Computer Commercial - YouTube


Apple computer ad 1985 JH - YouTube


そして、1986年からはコンピューターサイエンスおよび情報科学という分野全体の学位取得者数が減少しており、この減少現象が1993年まで続いているのがグラフを見ると一発で分かります。なお、1993年のコンピューターサイエンスおよび情報科学分野の女性学位取得者数は、それまでのピークであった1985~86年度の約52%しかなかったそうです。


その後の1997年から2003年までの期間、再びコンピューターサイエンスおよび情報科学分野の学位取得者数は急激に増加しており、第2次ブーム(1997~2003)が巻き起こっていることがよく分かります。第1次ブーム(1976~1985)と第2次ブームの大きな違いは、ブームが始まる時点で既に男女の学位取得者数の間には大きな溝があった、という点。第2次ブームでは男性の学位取得者数が毎年143%ずつ増加していったのに対して、女性は毎年124%ずつしか増加しなかった、とのこと。なお、第2次ブームはドットコムバブルの時期と重なっており、ドットコムバブルがIT業界への興味関心をかきたてた結果、コンピューターサイエンスおよび情報科学分野の学位取得者の数が増え、バブルがはじけると同時に取得者の数が減少していった、ということのようです。


さらにその後は、2003年から2009年にかけては再び学位取得者数が減少。男性の場合は2004年のピーク時から単位取得者の数が36%減少しており、女性に至っては2003年のピーク時から50%以上も単位取得者が減っています。

なお、初めはIT業界でプログラマーとして働くにはコンピューターサイエンスの学位を取得するのがほぼ唯一の道であったそうですが、現在ではさまざまな方法でプログラマーになることが可能です。さらに、プログラマーといっても、学術的なことを研究する人からゲームプログラマーやITサービスを開発するプログラマーまでその種類は多種多様なので、80年代中頃からはコンピューターサイエンスの学位を取ることだけがプログラマーになるための道ではないと判明し、コンピューターサイエンスおよび情報科学分野の学位取得者数が減少していったと考えられるそうです。