Ferrari 488 Spider |フェラーリ 488 スパイダー
最速のオープン フェラーリ「488スパイダー」誕生|Ferrari
フェラーリは、今年3月のジュネーブ モーターショーで発表した「488GTB」のオープン仕様となる、「488スパイダー」をフランクフルト モーターショーで一般公開した。先代の「458スパイダー」同様に、リトラクタブル ハードトップをもつスパイダーは、クーペ同様に0-100km/hが3秒フラットの実力を誇るフェラーリV8ミッドシップモデル史上最速となるオープン カーである。クーペとオープン、ふたつのスタイル
振り返ってみれば、フェラーリが初めてミッドシップのオープンカーを開発したのは、1972年登場の「ディーノ 246GTS」だった。この「GTS」は、Bピラーを残した脱着式のルーフトップをもつ、いわば簡易型オープンモデルの名称とスタイルとして定着。ポルシェを中心にいわゆるタルガトップスタイルといわれることも多いこのデザインを、フェラーリでは「GTS」と呼んでいる。ルーフが取り外せるこのボディスタイルは、とくに北米や地中海沿岸のマーケットで人気を呼んだ。それ以降、フェラーリのミッドシップオープンカーは、「ディーノ 246GTS」の後継車たる1977年登場の「308 GTS」に受け継がれた後、1985年デビューの「328 GTS」、そして1989年デビューの「348ts(のちに348GTS)」を経て、「F355 GTS」へと継承されていった。
いまの我われが良く知るフルオープンスタイルのミッドシップオープンモデルが登場したのは、1983年。この年にデビューした2+2の「モンディアル カブリオレ」が最初である。
このBピラーやロールバーをもたない純オープンスタイルのモデルは、1993年デビューの「348スパイダー」でフェラーリ初の2シーターミッドシップ+オープンに進化。そして1995年に登場した「F355スパイダー」、2001年にデビューした「360スパイダー」へとつづく。「F355スパイダー」ではトップの電動化、さらに「360スパイダー」ではそれまで手動の作業であったトノカバーの電動化にも成功。スイッチひとつで簡単にオープンエアモータリングが楽しめる時代に突入した。
近代のオープンモデルは、2005年発表の「F430スパイダー」、2011年にデビューした「458スパイダー」 の両モデルが記憶にあたらしいところ。458スパイダーでは、これまでのソフトトップから前後2分割式の電動ハードトップに改められ、これはリトラクタブル ハード トップ(RHT)と呼ばれている。オープン状態では、開放感溢れる走りを、いっぽうトップを閉じた状態では、ベルリネッタ(クーペ)に相当する対候性と静粛性、そして快適性を得ているというのがセールスポイントである。クローズドスタイルは、まるでベルリネッタのフォルムそのままで、オープンとクーペの両スタイルが1台で味わえると、絶大な人気を誇っている。
クーペに肉薄するパフォーマンス
今回フランクフルト モーターショーで一般公開された「488スパイダー」は、既報の通りベルリネッタである「488 GTB」のオープン版である。注目すべき事実のひとつは、このタイミングでオープンモデル発表したというフェラーリのスピード感である。例えば、先代モデルとなる458スパイダーは、ベースモデルである458イタリアが発表されてから、約2年後に登場した。それを考えれば、488GTBの発表からからわずか半年後にスパイダーがデビューするというのは驚異的な早さであると言っても過言ではないのだ。フェラーリによれば、これは、デジタル開発技術が飛躍的に進化し、最新のシミュレーションなどがヴァーチャルなどでこれまで以上に簡単におこなえるようになった結果であるという。そうした公式コメントを聞きながらも、おなじフランクフルトの会場で同日に発表されたライバル、ランボルギーニの「ウラカン LP610-4スパイダー」の存在も無視できないと、個人的には想像する。
世界のスーパースポーツカー市場でしのぎを削るこの両車、ともにプレミアムブランドではあるがラインナップを考えれば量販モデルといえる位置づけ。 よって、ライバルの後塵を喫することは許されないはず。ウラカン LP610-4スパイダーに発表を合わせてきたという戦略を王者フェラーリが(またはその逆も)とってきてもおかしくはない。ちなみに488 スパイダーは欧文表記では「Spider」になるが、かたやウラカンは「Spyder」となるちがいがあるのは面白い、
本レポートの主役である488 スパイダーは、先にモデルチェンジをおこなったベルリネッタの488 GTBに準じたパワートレインを搭載している。すなわち、リアミッドに縦置き搭載される3.9リッター直噴V8ツインターボエンジンは、新開発のツインスクロール ターボチャージャーとフラットプレークランクシャフトの採用で、最高出力670ps、最大トルク77.4kgmを発揮。488 GTBとおなじく7段デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせている。
ターボチャージャーにボールベアリングを使用したシャフト、低密度チタニウム合金による軽量なコンプレッサーホイールなどを採用。ターボラグはほとんどゼロにちかい、とフェラーリは胸を張る。そのレスポンスは、まるで自然吸気エンジンと変わらぬもので、フェラーリのV8ミッドシップモデルから誰しもが期待する走りを実現しているという。670psとなる最高出力は、先代モデルである458 スパイダー比で、じつに約100ps増ともなることも忘れてはならない。
そうしたV8ツインターボエンジンがもたらすパフォーマンスは、0-100km/h加速が3.0秒フラット、最高速度は325km/h以上と発表されている。0-100km/h加速タイムはベルリネッタの488 GTBと同一、最高速度はわずかに5km/h及ばないが、ライバルであるウラカン LP610-4スパイダーと比較すると、データ上の0-100km/h加速タイムでは0.4秒、最高速度は1km/hのアドバンテージを488 スパイダーが得ていることとなる。いずれにせよ、歴代V8オープンモデルでも、そしてライバルのオープンスーパーカーに対してもナンバー1のパフォーマンスであることはまちがいない。
ライバルとの競演
注目のルーフは、先代モデルである458スパイダーから基本キャリーオーバーとなるリトラクタブルハードトップ。素材は軽量なアルミニウム製となる。開閉に要する時間はわずか14秒で、2分割されたトップが重なりながら、シート後方のエンジン上部スペースに吸い込まれていく。クローズ状態では、ほぼ488 GTBと変わらないフォルムで、いっぽうトップを開けた状態では、美しく特徴的なトンネルバックスタイルが強調される。両車の識別点はリアクオーターウィンドウの有無程度と、クルマに詳しくない方であれば、サイドからのフォルムでは車名を言い当てることは容易でないかもしれない。ガラスハッチを採用し、美しいヘッドカバーが外からでも確認できた488 GTBに対して、488 スパイダーではフルカバーエンジンフードを採用するが、トンネルバックのボディデザインには、3段階でポジションを調整できる電動収納式のリアウィンドウや、エンジンルームの熱気を排出するエアアウトレットなど、スパイダーならではのデザインが採用されている。電動式のリアウィンドウは、ルーフポジションにかかわらず開閉が可能で、たとえトップを閉じていても、ウィンドウを開けさえすれば、官能的なV8のエキゾーストサウンドをよりダイレクトに聞くことができる。
488 GTBに準じたエアロダイナミクス性能は、オープンモデルとして現行市販車としてトップレベルのスペックを掲げる。アンダーボディのボルテックスジェネレーターや、リアデフューザーに、ほかのビークルダイナミクスシステムと統合制御される可変フラップ、エンジンカバーの後端に位置するインテーク、バンパー内部を経由して、エアをボディ後端から排出するフェラーリ独自のブロウンスポイラーなどは、488 GTBに共通する空力デバイス。1.53と発表された空力効率は、フェラーリのオープンモデルとしては最高の数値である。
ボディを構築するスペースフレームは、マグネシウムなどの非腐食性金属を組み合わせた、11種類のことなるアルミニウム合金で製作されている。フェラーリによれば、ボディ剛性は488 GTBと同等であり、先代の458 イタリア比では、23パーセント増に値する数値であるという。ベルリネッタの488 GTBと同等と聞いただけで、ルーフに応力がかからないオープンモデルとしては驚異的なボディ剛性を得ていることがすぐさま理解できる。
期せずして―― 、いやこれはもう、狙い澄ませて発表をライバルモデルに合わせてきたといってもまちがいではないであろう、フェラーリ488 スパイダーの発表。両雄相まみえた、フランクフルト モーターショーの会場は、ワールドプレミアの新型モデルや未来的なコンセプトカーを差し置き、この両車の話題で持ちきりだったという。この正面を切ったホットなオープンカーのワールドプレミアバトルは、今後各マーケットに引き継がれ、スタイリングやパフォーマンスはもちろんのこと、熾烈な販売争も伴ってスーパーカーファンを魅了するはずである。もちろん、日本上陸の第一報にも期待が高まらないはずはない。
Ferrari 488 Spider|フェラーリ 488 スパイダー
ボディサイズ|全長 4,568× 全幅 1,952 × 全高 1,211 mm
ホイールベース|2,650 mm
トレッド 前/後|1,679 / 1,647 mm
車両重量(乾燥)|1,420 kg
重量配分 前/後|41.5% / 58.5%
エンジン|3,902 cc V型8気筒 ターボ
ボア×ストローク|86.5 × 83 mm
圧縮比|9.4:1
最高出力| 492 kW(670 ps)/ 8,000 rpm
最大トルク|760 Nm(77.5 kgm)/ 3,000 rpm
トランスミッション|7段AT(F1デュアルクラッチ)
駆動方式|MR
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30/ZR20
0-100km/h加速|3.0 秒
最高速度|325 km/h以上
燃費(ECE+NEDC)|11.4 ℓ/100km(およそ8.8km/ℓ)
CO2排出量|260 g/km
トランク容量|230 ℓ