iPhone用回線はどこを選ぶ?
0円SIM? 使った分だけのFREETEL?
最近目立って多くなった質問が、iPhoneを使い始めたいが回線契約はどうすればいいだろう、というもの。三大大手携帯会社で契約すると、少なめの1GBプランを選んだとしても月額6000円前後する。
電話もメールもほとんどしない。しかし、外出先では地図案内やWeb検索などを十分に活用したい。それならデータ通信部分ゼロ円から始められますよ。でも、使い方次第で、落とし穴もいっぱいだから十分にお気をつけください。
今回は、実際にFREETELに電話番号を引き継いで乗り換えた経験を元に、問題を分かりやすく整理してみよう。
ガラケーユーザーにも格安SIMの話は浸透してきている
これまで、ず~~っとガラケーを使い続けてきたユーザーも、高性能で価格もこなれてきたiPhone SEの登場でがぜん興味を示し始めている。でも、スマホにするとこれまでは月々数千円ですんでいたものが一気に6000円前後の利用料金を取られることになる。
それを乗り越えてまで新しいものには飛びつかなかったようなユーザーの間でもMVNO(Mobile Virtual Network Operator)仮想移動体通信事業者による格安SIMのサービスの認知度がじょじょに上がってきている。ご近所の高齢者などからもよく質問されるようになって、いよいよ本格的な普及期を迎えたな、ということを実感する。
三大キャリアで契約すると、毎月の支払い金額で端末代が実質ほとんど無料になる。
一方、MVNOを使うと、端末代は一括で購入しなければならないので、iPhone SE 16GBの場合、5万2800円かかる。
しかし、3大キャリアの契約で5GBまでのプランを申し込むと7000〜8000円程度の支払いを2年間続けなければならない。MVNOの場合は、後述するが5GBのプランを選んだとしても2000円前後ですむ。
これなら1年もしないうちに元が取れる。
一般化が進むにつれ、サービスも多様性化し、以前は存在しえなかったタイプのサービスも次々に登場して、今度は選択に困る。
月間500MBまでなら、データ通信料0円という驚異的なサービス「0 SIM」(ソネット)、
プランの選択が不要で使った分に見合うプランが自動適用される「FREETEL」(プラスワン・マーケティング)、
さらにいくら使っても全く制限のない定額サービス「b-mobile SIM高速定額」(日本通信)
など、幅広いサービスがそろっている。
携帯回線を保有する会社から回線を買い受け、それを一般利用者に合理的な価格で提供するサービス。原理的にはどの携帯会社からも回線を仕入れることができるが、現在のところ、一般ユーザーに提供している卸売り業者が複数あるのはNTTドコモだけだ。
MVNOの格安SIMを使っても、携帯ネットワークはNTTドコモの設備を使っているので、利用料金が安いからと言って回線自体の保守体制はNTTドコモと変わるわけではない。
サービスエリアも基本的にはドコモと同じ。たとえば、暴風雨の影響などでMVNOの回線のみ切れてしまうということはない。逆にドコモ回線が切れてしまったら、全MVNOサービスも、もろともストップしてしまう。
しかし、MVNOがどの程度の容量の回線をまとめて仕入れているかにより、実際に使ったときの通信速度などは大きく異なってくる。特に大勢のユーザーが一度に集まる巨大なイベント会場や渋谷交差点のような場所ではどれほどの回線容量を確保しているかにより、通信速度は大きく変わってくる。このサービスレベルを正確に把握するのは事実上不可能で、ユーザーが実際に使ってみて測定したスピードテストなどを参考にするしかない。
そうなると一番の判断基準は利用料金だ。
そこで、実際のデータ通信の利用量により、どのように料金が変化するのかグラフにしてみた。数あるMVNOの中から特徴の際立った7サービス(後述)をピックアップした。iPhoneで使うのを前提にしているので、電話回線契約700円ないし800円が乗っている(図1)。
図1●0~20GBまで高速データ通信を使った場合、格安SIMの料金は?
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5GBまでは各社並んだ感じだが、それを超えると、一気に値段が上がっているのがおわかりいただけるだろう。唯一、日本通信のb-mobileだけは2780円のまま横に延びていっている。
0 SIMは10GBで4万300円だ。ただし、誤解されないように付け加えておくと、プラン契約した一定量を超えると、そこで課金の上限を迎える。速度制限がかかり、メールを1通よむのも少し待たされるようになる。そこで、追加料金を支払えば、さらに高速通信が買える仕組み、「追加チャージ」を用意している。
0 SIMの場合、この追加チャージを買い続けていくと、こうなる、という金額を示している。決して、使い続けていくとどんどん高額になってしまう、というわけではないのでご安心いただきたい。
各社、得意領域はそれぞれ大きく異なる
図1では0MBから20GBまで高速通信を使い続けてみたら金額はどうなるかを見ていただいた。これからは、少し現実的な使い方にそって、分析してみよう。
今回、取り上げたのは、特徴のある次の6サービス。比較のためにシェアの高いIIJmioも加えた。
500MBまでの利用なら0円ですむ0 SIM、いくら使っても2780円という定額プランを打ち出している日本通信のb-mobile 高速通信、3G〜8GBあたりの価格帯で最安値を打ち出すDMM mobileと主要帯域で10円違いで追うDTI SIM、MVNO業者として独自の回線運用(L2接続)を行って「業界最速」を目指し、全体に低価格帯に収まっている上に使用量に応じて自動的にプランが選択されるFREETEL、そして利用料金に楽天市場のポイントまでつく楽天モバイル。
サービスの中には速度制限を加えたごく軽量プランもあるが、今回は除いた。快適に仕事が続けられるように高速通信を使うことを前提に計算した。iPhoneで使うことを考え、電話回線分の基本料金(700円ないしは800円)も上乗せした(掲載順はサービス名の文字コード順)。
1)0 SIM:500MBまでなら700円。以後2GBまで100MBごとに100円加算。2G~5GBまで2300円定額。5GB超で速度制限(チャージ可)。
URL:http://lte.so-net.ne.jp/sim/0sim/
2)b-mobile高速通信:3GBプラン1980円、使い放題2780円。URL:http://www.bmobile.ne.jp/bmsim/plan.html
3)DMM mobile:1GBまで1260円。2GBまで1380円、3GBまで1500円、5GBまで1910円、7GBまで2560円、8GBまで2680円、10GBまで2890、15GBまで4300円、20GBまで5980円。
URL : http://mvno.dmm.com/
4)DTI SIM:1GBまで1200円、3GBまで1490円、5GBまで1920円、10GBまで2900円。
URL:http://dream.jp/mb/sim/
5)FREETEL:100MBまで999円、1GBまで1199円、3GBまで1600円、5GBまで2220円、8GBまで2840円、10GBまで3170円。
URL:https://www.FREETEL.jp/sim/
6)IIJmio:3GBまで1600円、5GBまで2220円、10GB(ファミリーシェアプラン)まで3260円。
URL:https://www.iijmio.jp/
7)楽天モバイル:3.1GBまで1600円、5GBまで2150円、10GBまで2960円。URL:http://mobile.rakuten.co.jp/
さて、これを使用量に応じたグラフにしてみよう(図2)。
図2●0~10GBあたりを詳細に拡大した料金比較
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先ほどとは違って横軸の容量を0から12GBまでにしてみた。すると、0から1GB,10GB超の料金エリアに大きな特徴が出た。
1GB以下では0 SIMが際立つ。500MBまでは0円、以後2GBまでは利用量に応じた金額となっているのがわかる。特に1GB以下に抑えるなら他のSIMより十分に安い。
ただし、それを超えて10GBまでの利用料金を見ると、容量ごとに一長一短があることがわかる。また、前述したように5GBを超えて高速通信を維持したいという緊急時には、とても高くつくので要注意だ。
2GB台ではDTM SIMが最安値、3GB〜8GBはDMM mobileが最安値となっている。さらに、8GB以上を使うなら日本通信のb-mobileがどこまでも2780円で他を引き離す。
ただし、FREETEL以外はあらかじめ契約したプランで制限されるので、契約容量を超えると低速通信になってしまうか、追加チャージを購入してどんどん高額になってしまう。ここのところは悩みどころだ。たとえばDMM mobileの場合、8GBまで使うなら最も低額の2680円となるが、ほとんど使わない月もこの金額がかかってしまう。プランは数多く用意されているが、必要になってプラン変更を申し込んでも、適用は翌月ないしは翌々月になってしまう。しかも、一度容量アップしたら、それをダウングレードしてもその月ないしは翌月いっぱい継続されてしまうので、再び利用量が減ってきてもロスが多くなる。
FREETELだけは、使用量に応じた各種プランが用意されているが、ユーザーはあらかじめどれにするか決める必要がない。使用量に応じて自動的に適用プランが変化する。毎月利用量が大きく変わるユーザーの場合はFREETELを選ぶと融通がきいて合理的に運用することができる。
FREETELにMNP乗り換えを実際に試してみた
一般的なユーザーは毎月のデータ通信量が大きく変動する。自宅と会社を往復している日常ではモバイルデータ通信を使うのは通勤時のみ。通勤時にはメールを確認するか、新聞を読むか、あるいは、購入済みの雑誌を流し読みするか、くらいでせいぜい1ヶ月2GBくらい使うのが普通だろう。
しかし、出張や週末に旅行に出かけたりすると、一気に利用量が増える。テザリングを使ってiPadで資料を確認し、文書を作成なんて作業が入ると4G~8GBくらいは使ってしまうこともあるだろう。場合によっては動画をチェックする必要もあるかもしれない。そうなると月間使用量は10GBに迫ることになる。
そんな場合、一般的なプラン契約では、契約量を超えると、追加チャージ(クーポンと呼んでいるサービスもある)を購入することになり、一気に高額化してしまうことになる。
ところが、FREETELの場合は規定容量で段階的に金額が上がっていくが、使った容量に収まるプランが自動的に選択されるので、月間使用量が大きく変動するユーザーでも合理的に使える。
私の場合も、Wi-Fiのみで使える環境に多くいる場合の月間使用量は数100MB、離れたところに出かけた場合は8GBを超える、という月も多い。
実はすでに格安SIMの代表と目されるIIJmioを使っているのだが、10GBまで使える3260円のファミリーシェアプランにする気にはなれない。使わない月は1GBにも満たないのだから。
私のような利用パターンではFREETELが最適解と思えた。
そこで、今回、IIJmioからFREETELにMNPしてみることにした。
iPhoneやiPad向けにはモバイル回線経由でアプリのダウンロードをしてもカウントされない特別プランが用意されているのも魅力だ(図3)。
図3●FREETELのホームページ。iPhone、iPad向けの特別プランがある
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ほとんど使わない月は0円で使える0 SIMも考えられるが、5GBを超えるような場合には通信速度を我慢するか、高額のチャージを追加していくか迫られることになる。したがって、0 SIMは除外することに。
MNP転出手続きには日にちがかかることがある。余裕を持って
使っている電話番号をそのまま引き継いで、新しい携帯電話に移行することをMNP(Mobile Number Portability)という。現契約の電話会社に電話、ないしはオンラインで申し込むと15日間有効なMNP番号を振り出してくれる。これをもって次の契約を進めるということになる。
一般の三大キャリアの場合は電話するとその場でMNP番号を発行してくれるが、格安SIM会社の場合は申し込み後数日かかる。
IIJmioの場合は図のように4日間かかる、と告知された。したがって、月末に作業すると、MNP番号の入手が月を越してしまう。1日でも契約が残ってしまうと、その月の利用料金が全額かかってくることがあるので、要注意だ。月末の申し込みは1週間くらい前に取り掛かるようにしよう。
なお、音声通話機能の解約時には利用期間に応じて解約料がかかることがある。IIJmioの場合は利用開始12ヶ月以内の場合は利用月数に応じた解約料がかかる。筆者の場合には12ヶ月を過ぎていたので、解約料は無料だった(図4)。
図4●IIJmioでMNP予約番号発行をオンライン発注した
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その番号を控えて新しくFREETELに申し込む。オンラインで申し込んでも翌日にはSIMを発送してもらえる、というが、筆者の場合、MNP転出が3月末日だったせいで即日開通してくれる販売カウンターをWebサイトで探して出向いた(図5)。
図5●ヨドバシカメラ秋葉原にあるFREETELのカウンター
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ラッキーなキャンペーンに乗れた
たまたまだが、今回、4月4日までの期間限定で提供していたキャンペーンに加入でき、ラッキーだった。他社からMNP転入した場合、端末同時購入なら1年間、SIMだけ購入なら9ヶ月間、1GB分の利用料金を無料にする、というもの。現在はすでにこのキャンペーンは終わってしまっているので、これからやろうとする人には目の毒かもしれないが、参考のために図をお見せしよう(図6)。
図6●FREETELの1GB無料キャンペーン
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私の場合、アップルから直接購入したiPhone 6sなので、どこのSIMを刺しても動作するいわゆる「SIMフリー端末」だ。そのようなiPhoneがある場合は、乗り換えはきわめて簡単だ。
新しく購入したSIMをiPhoneに差し替える。
その段階では携帯網につながらないので、Wi-Fiに接続して、FREETELのサイトにアクセス。そこに置いてあるFREETEL構成プロファイルをインストールする。その際、以前に使っていた構成プロファイルを先に削除する必要がある。
ヨドバシカメラやApple Storeには無料で使えるW-Fi電波が飛んでいるので、こんな場合にもさっと作業できる。
やるべきことはそれだけ。あとは、FREETELの用意したさまざまなプラン、たとえば、1分、または5分以内の電話は何回でもすべて無料になるプランなどを申し込む。
私の場合、電話をほとんどかけないので、追加のプランは全く申し込まなかった。ただし、アプリ「FREETEL電話」をダウンロードしておくのは必須。このアプリからかけた電話はすべて通常の半額(10円/30秒間)になる。
SIMロックされたiPhoneはどうする?
前述の通り、アップルから直接購入したiPhoneはどこから買ったSIMでも刺して使えるSIMフリーとなっている。しかし、NTTドコモ、au、ソフトバンクから購入したiPhoneは、回線利用を限定するため、SIMロックがかかっている。
NTTドコモから購入したiPhoneはSIMロックされているが、サードパーティ製の格安SIMもドコモ回線を使っているために、SIMを差し替えても問題なく使える。
それ以外のiPhoneの場合は、2015年5月以降に新たに購入した機種に限り、購入後181日経っていれば、ロック解除手続きができる。具体的な機種名としてはiPhone SE、iPhone 6 Plus、iPhone 6sのみ。iPhone 6以前の機種は解除してもらえない。
解除はお店でやってもらう場合は有料だが、Webで手続きをすれば無料でできる。
機種変更する場合の手順
SIMフリー端末iPhone 6sを使っていて、回線契約を別の会社にMNPする場合はとても簡単な作業になるが、古い機種を新しいiPhoneに買い替えてMNPする場合は、いくつか踏まなければならない手順がある。
簡単に順を追って押さえておこう。
1)ヒマなときに現在使用中のiPhoneをバックアップしておく。
パスワードやクレジットカード番号などを収めたKeychain、毎日の活動データを収めたヘルスケアデータなども全部バックアップするには、iCloudまたはiTunes上で暗号化バックアップを行う。
iCloudにバックアップできる容量であればiCloudバックアップの方が簡単でおすすめ。それだけの容量をiCloudに確保していない場合はiTunesに暗号化バックアップする。暗号化を忘れないで。Apple Watchのデータの主要部分が失われる。
2)携帯電話会社に電話してMNP予約番号を発行してもらう。
番号はその場で発行。有効期間は15日間。期限までに次の機種に乗り換えできなければ、いったん無効になる。
3)新しいiPhoneをAppleStoreで購入。
4)格安SIMを購入する。以下のどちらかで。
A)オンラインで購入なら翌日~数日。本人確認書類(運転免許証など)をスキャンしてアップロードする。SIM到着後にサービスセンターに電話をかけるなどして開通。
B)家電量販店などの出先カウンターで購入すれば即日開通できることがある(店によって異なるので、要確認)。
5)購入したiPhoneに新しいSIMを挿しアクティベーションする。
6)携帯ネットワークに接続するためには、携帯会社のサーバー情報(APN)をセットしてやる。
バックアップしておいた以前の環境を書き戻す。無事乗り換えが終わったら、新料金で運用開始だ。
通信スピード
気になるのは通信スピードだ。早速、私も新しいFREETEL回線でテストしてみた。使ったのは通信スピード計測の定番アプリ、「RBB TODAY SPEED TEST」。これまで日常的に使っていた地点ではかってみると、IIJmioでダウンロード9.68Mbps、アップロード20.99MbpsだったものがFREETELを使うとダウンロード21.36Mbps、アップロード23.22Mbpsと明らかに高速化した(図7、8)。
図7●IIJmioの通信速度
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図8●FREETELの場合
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このスピードは計測時点、地点で大きく変わるので、これが決定的な指標とは決して言えないが、いまのところ、高速化している、と言えそうだ。「業界最速」 を目指すとしているのは、外れてはいないようだ。たまたま1GB無料キャンペーン中なので、3GBまで401円(データ通信部分のみ)で使えるのはとても得した気分だ。