How can we update the borders between Matters and Images? We render that possibilities by 30 femtoseconds laser. Exploration between
「CREATIVE HACK AWARD 2015」グランプリを受賞した作品、「Fairy Lights in Femtoseconds」。
映像と物質という関係性をハックし、更新する。触覚ある映像は物質と区別がつかない。フェムト秒(10の-15乗秒)の単 位でプラズマを発火させ、空中に浮かせています。このプラズマという現象は、本来はとても危険なものです。しかし、フェムト秒程度の一瞬であれば、その触 り心地を確かめられます。ここで我々が狙っているのは、通常のメディア装置の発想で視覚に属すると思われているような光を、触覚的に味わうことです。私た ちは光には視覚が、音には聴覚が対応すると考えがちですが、それはテクノロジーが規定してきた条件に過ぎません。現代のテクノロジーは光が触覚を操ること を可能にしているのみならず我々の受容器の写像としてのメディア装置の存在を覆そうとしています。我々はこの作品によって映像と物質というパラダイムの間 にあるもの、新たな魔法的表現によるハックを可能にしました。
──落合陽一
──どうして今回の受賞作品をCREATIVE HACK AWARDに出そうと思ったのですか?
ここ2年くらい「映像と物質ってどうやって越えられるのか」という課題に取り組んでいるので、既成概念をハックするというCREATIVE HACK AWARDのお題に合っていると思ったからです。
──2015年11月に出版された著書『魔法の世紀』に書かれている内容にも近い話ですね。
そうです。「どうやったらこれから3次元の時代になるか」ということを考えていくときに、紙とペンの役割をするものをつくろうということです。
──もう少し具体的にお願いします。
つまり、紙には色を書く道具があったわけですが、そうではなくてプラズマで書くとか、モノを浮かべて書くとか、そういうような「3次元的に映像のメ タファーを行える装置とは何だろう」って考えたのです。物質は時間と空間には分解できますが、どちらか片側しかできないんですよ。解像度を高くするか、時 間性を切って3次元を2次元にするか。でも次元数の話にはいきたくなかったから、解像度とエネルギーの話でいこうと思って、フェムト秒レーザーに挑戦した のです。
──次元数にいきたくなったのはなぜですか?
次元数だとこの現実空間にあるものって、モノになってしまったら、もう駄目なんですよ。例えばレコードは2次元体に1次元情報が乗っているじゃな い? 動かないもので記録できる次元数って、大体「3」が限界なんですよ。そっちにはいきたくなかった。だから4次元分の情報をつけるにはホログラムをつ くるしかなくて、それをつくるためにフェムト秒レーザーで再生するような方向に行くことにしたのです。
映像みたいに出てきて、だけど物質みたいに触れられるものがつくれたという意味において、映像と物質の概念をハックしていると思っています。
──「映像は触れないもの」というのが映像の既成概念の部分ですか?
そうですね、あと「物質は触れるけど動かないもの」が物質の既成概念です。そのどちらでもないものはどうやればつくれるか、「モノがなくても触れて 光るみたいなものとは何だろう」って考えたわけです。最近それに対する俺の中での答えは空気なんです。空気って人間が生きている限り空間に絶対あるものな ので、「空気をどうメディア化するか」という課題はかなり興味があります。空中に触覚をつくることも全部空気を構造化している話なんですよ。
メイクアップアーティスト、研究者。1987年東京都生まれ。東京大学大学院学際情報学博士課程修了。筑波大学大学院助教。デジタルネイチャー研究室主宰。も のを動かす概念を変え、現実世界の書き換えをするべく光、電場、空気場、音、磁場、電波、超伝導といった「場」のコントロールを研究領域としている。親: 落合信彦
『WIRED』日本版VOL.22(2016年4月9日発売)では、CREATIVE HACK AWARD 2015グランプリ受賞の副賞として実施されたCREATIVE HACK TOUR「ロンドンのクリエイティヴシーン探訪」の模様が掲載される予定。96ochiai.ws