月曜日, 2月 15, 2016

「相対性理論って何?」と聞かれたときのために

子どもに「相対性理論って何?」と聞かれたときのために概要を分かりやすく簡単に解説





子どもに「相対性理論って何?」と聞かれたときに説明できるように、かなりアバウトに相対性理論を解説したものです

同時に、相対性理論を「まずは概略的にでも理解したい」という方にも有用な内容になっていると思います。


より理解を深めたい方は、こちらの記事にお進み下さい。
上のリンクの記事は中学で習う数学のみを使って、相対性理論というものを解説しています。使うのは中学の数学のみですが、扱っている現象は難しいですので、まずはこの記事でイメージを作っていただけれるとスムーズに進めると思います。



相対性理論とは?

相対性理論とは、アインシュタインが1905年から作り上げた物理の理論で、相対論と略されます。その内容は「ものが縮む」「空間が曲がる」など、非常に難解なものになっています。
また、アインシュタインの式と言われる
E=mc2
という式を見たことがある人もいるのではないかと思いますが、これも相対性理論の一つを表しているものです。

相対性理論は大きく二つに分かれます。「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」というものです。

特殊相対性理論の方が難しそうですが、実際は一般相対性理論のが何倍も難しいです。
今回は特殊相対論・一般相対論のエッセンスのみをお届けします。


どんな現象が起きるの?

最初に相対性理論とはどのような現象を指すのかを書いてしまおうと思います。
(特殊)と(一般)は、それぞれ特殊相対論から分かること・一般相対論から分かること、という意味を表しています。

相対性理論の現象

結果1 光の速度よりも速く動けるものはない(特殊)
結果2 光の速度に近い速さで動くものは、縮んで見える(特殊)
結果3 光の速度に近い速さで動くものは、時間が遅く流れる(特殊)
結果4 重いもの*1の周りでは、時間は遅く流れる(一般)
結果5 重いものの周りでは、空間が歪む(一般)
結果6 重さとエネルギーは同じ(特殊)

というものです。一つ一つ簡単に説明を加えます。
*1:本来は「質量が大きいもの」結果5・結果6も同様

 

結果1 光の速度よりも速く動けるものはない*2

*2:この内容をググると、「ニュートリノが光速と超えた!」という記事が良く出てきますが、デマですので一応。

文書そのままで、光の速度よりも速く動けるものはないということです。光というのは1秒で地球7周半ほど進める速さです*3。これはものすごい速さですが、無限に速いわけではありません。
*3:約30万km/秒

つまり将来、いくらテクノロジーが発達してものすごい速さの新幹線やロケットができたとしても、それは光の速さを超えられないのです。*4

*4:この内容は光速度不変の原理を表している訳ではないので一応



発展 なぜ光の速さを超えられないのかの説明☆

相対性理論によると、スピードがあるものは、若干重くなります。つまりあなたが止まっているときと、走っているときでは走っているときの方が体が重くなるのです。*5*6
体が重くなると走り辛くなるでしょう。つまりスピードが出し辛くなります。
それでも頑張ってもっとスピードを出したとしましょう。するともっと体は重くなります。もしも光の速度で走ると、あなたの重さは無限になります。そして体が重すぎてこれ以上[つまり光の速さ以上]スピードを出すことができなくなるのです。

*5:これは極論です。実際に増える分というのはあまりにも小さすぎて変化は体重計なんかでは見えません

*6:「なぜ重くなるのですか?」という質問に答えるためには、数式をいじくる必要があるので今回は割愛します。

 

結果2 光の速度に近い速さで動くものは、縮んで見える

 



この図で、左側ではロケットは止まっています。右側ではロケットが光の速度に近いスピードで飛んでいます。[結果1]で説明したように、光の速さより速く飛ぶことはできません。
すると右のロケットは止まっているときよりも縮んで見えます。このロケットは横に動いているので、縮むのは横方向のみです。縦方向には縮んでいるように見えません。*7
結果には“光の速度に近い速さで動くものは”と書きましたが、実際には光の速度に近くなくてもかまいません。そのへんを走る車も、歩く人も、実は縮んでいるのです。ただ、縮む量があまりにも小さすぎて、僕たちの目には識別できないのです
目に見えるぐらい縮んで見えるには、光の速度に近い速さで動く必要があります。

*7:ここで「縮んでいるように見えます」と書いてありますが、これは錯視によってそうなっているのではありません。実際に縮んでいるのです。しかしロケットの中から見ると、ロケットの中は通常通りに見えます



発展 逆にロケットから地球を見ると…☆

地球からロケットを見るとロケットは縮んで見えるので、ロケットから地球を見たら地球は伸びて見えるのでしょうか?
答えは[ロケットから見ても、地球は縮んで見える]が正解です。この理由の説明は非常に難しいですが、限りなく簡単に言うのならば、“地球から見ると動いているのはロケットだが、ロケットから見ると動いているのは地球だから”ということになります。
「周りから見ると動いているのは電車だけど、電車の中から見ると動いているのは周りの景色」というのと似ています。

 

結果3 光の速度に近い速さで動くものは、時間が遅く流れる

 




図の左側では、ロケットが止まっています。このときロケットの時間と地上の時間は同じですが、右の図を見ると、ロケットの時間の方が遅れています。こういったことが起こるのです。

結果には“光の速度に近い速さで動くものは”と書きましたが、実際は光の速度でなくともかまいません。結果2と同じですが、そのへんを走る車も、歩く人も、飛ぶ飛行機も、実は時間は遅く流れているのです。ただ、遅くなる時間の量があまりにも小さすぎて、僕たちの間隔では捉えることができないのです

頭で分かるぐらい遅れるには、光の速度に近い速さで動く必要があります。

 

結果4 重いものの周りでは、時間は遅く流れる

重いものの周りでは、時間が遅く流れます*8。

*8:これは[結果5]と連動する内容で、実際は「重いものの周りでは空間が歪み、時間が遅く流れる」という論理です






繰り返しになりますが、僕たちがこの効果を感じるのは宇宙の巨大な星やブラックホールなど“めちゃくちゃ重いものの周り”に限られます。上の図は誇張してますので。

またこの文章を裏返すと「重いものから離れると、時間は早く流れる」となります。僕たちは地球という重い星の上にいますので、「海の底」と「エベレストの頂上」では、地球から離れている「エベレストの頂上」の方がちょっぴり時間が早く進んでいることになります。


 

結果5 重いものの周りでは、空間が歪む

これも大変難しいことです。どのように歪んでいるのかは分かりませんが、とにかく歪んでいるのだそうです。
天体級に重いものになると、空間を極端に曲げ、そこを通る光さえも曲げてしまうのです。

 

結果6 重さとエネルギーは同じ

今までエネルギーとは、力がかかっていたり*9、熱をもっていたり、電気が流れていたり、ものが動いていたりしないとないものだと考えられていました。

*9:[発展]保存力を意味しています

しかし相対性理論を解いていくと、止まっているものにもエネルギーがあることが分かりました

そしてそのエネルギーは重さに比例するのです





それを表した式が有名なアインシュタインの式

E=mc2

です。

ここでEはエネルギー、mが重さ*10、cは光の速度を表します。
*10:本来は質量


光の速度は決まっていて定数なので、Emが比例していることが分かります。

つまり重いものはそれだけでエネルギーが大きく、軽いものはエネルギーが小さいということになります

 

参考動画

上のものをイメージしやすいように、ユーチューブからリンクを貼っておきます。5分ちょうど辺りから、相対性理論の効果を極端に表した「アインシュタインランド」という世界の説明が始まりますので、参考にして下さい。








相対性理論の実例

実際に使われている相対論の実例として、GPSを紹介します。上で説明した通り、相対論はかなりスケールの大きい話にならないと見えてきません。自然と実例もビッグなスケールのものになります。*11

*11:GPSによる時間の補正は、これ以外にも様々なものがあげられるそうですが、ここでは分かりやすい部分のみ扱います。

 

GPSと相対性理論

僕たちが使っているカーナビなどに、GPSが使われています。これのおかげで僕たちは道に迷わずにすむわけですが、正確な情報を得られるのはGPS衛星の中の時計が正確に動いているおかげです。

GPS衛星ですが、地球の周りをものすごいスピードで毎日グルグルとまわっています。ものすごいスピードでまわるので、[結果3 光の速度に近い速さで動くものは、時間が遅く流れる]から、GPS内の時計は遅れてしまいます。

一方、GPS衛星というのは地表から2万キロメートル(※ブコメでのご指摘ありがとうございます)以上の高度にあります。すると今度は[結果4 重いものの周りでは、時間は遅く流れる]を言い換えた「重いものから離れると、時間は早く流れる」が関係してきます。この効果により、GPS内の時計は進んでしまいます。

まとめると[結果3]から時計は遅れ、[結果4]から時計は進みます。実際に計算をすると[結果4]の方が影響が大きいため、全体として時計は進んでしまうのです。

GPS計算はこれによる補正を自動で行うため、僕たちは正しい位置情報を得ることができます。この補正がなければ1日に10km以上のずれが生じてしまい、使い物にならないのです