アップル、無償配布したU2アルバムの削除ツールを公開。「消せないアルバム」問題に対処
iPhone 6発表イベントの一部として「代金アップル持ち」で無償プレゼントしたはずの最新アルバムですが、ユーザー個人のライブラリに勝手に追加する仕組みから混乱を招いた上に、興味のないユーザーが消したくても消せない問題が発生していました。
iPhone 6 / iPhone 6 Plus そして Apple Watch を発表したスペシャルイベントで、iTunes ストアユーザーへのプレゼントとしてアップルが用意したのがこの U2 の最新アルバム。無償提供を発表するティム・クックとボノによるコントも冴え渡り、会場の聴衆やもともとアップルに興味がありイベントを追う視聴者には喝采で受け入れられたように思われました。
U2|Songs of Innocence 無料配信 iTune限定
しかし提供方法は単なる「一定期間無料に」ではなく、ユーザーのライブラリにいつの間にか追加される(iTunes Cloudからダウンロードする)仕組みでした。このため、アップルのイベントやニュースに特に注目していなかった大多数の人々にとっては、自分の iPhone や iPad、iPod touch に突然現れた得体のしれない音楽アルバムに驚きました。よく報道される Apple ID の乗っ取り事件と結びつけて、不正アクセスで勝手に購入されたかと思い慌ててカード情報を削除したという報告もあります。
また人々の音楽的嗜好は様々です。無料とはいえ勝手に送りつけられたこのアルバムは、これまでU2 を聞いたことがなかった人にも大勢の新規ファンを生んだ一方で、個人の楽曲コレクションに嗜好と無関係な品を加えることで、U2 の楽曲が好みでない人には不快感を与えることになります。
さらに問題は、iTunes Matchの登録ユーザー以外にはこのアルバムを削除する方法を用意していなかったこと。それを知ったユーザーからは、にわかに「新手のスパム」などと批判の声があがり始めました。日本国内でも Songs of Innocence アルバムを「消せない呪いのアルバム」と表現するツイートなどが見られる事態になりました。
そうした声を受けてアップルは9月15日、アルバムを削除するためのツールを公開しました。
削除方法は、専用のウェブページにアクセスし、Apple ID とパスワードを入力するだけ。手続きを完了すると、ユーザーの iTunes アカウントから Songs of Innocence アルバムが削除されます。なお、アルバムをローカルにダウンロードしている場合はそれらを手動で削除する必要があります。
iTunes アカウントからアルバムを削除したあと、再びアルバムを入手したくなった場合は、もう一度「購入」手続きが必要です。この場合は10月13日までの無償配布期間内であれば料金は発生しません。
蛇足ですが、当の U2 は Songs of Innocence アルバムを無償配布したとたん、世界で既発のアルバムやシングルが軒並みチャートイン。iTunes のアルバムトップ200でも26のアルバムが一挙にランクインを果たしました。新作アルバムの無償配布がかなりの宣伝効果を発揮したようです。プラットフォームをコントロールするアップルだからこそ可能な「ライブラリにいつの間にか追加」は、今後も効率のよい商法として繰り返されるかもしれません。