動画:謎の自然現象「デスバレーの動く石」の仕組みを解明。GPS内蔵石で潜入調査
米国カリフォルニアの山中にあるデスバレー国立公園には、引きずったような跡を残して「移動する石」が存在します。「滑る岩」や「帆走する石」とも呼ばれ、長きに渡り多くの仮説が唱えられてきたこの現象について、米国の研究チームがその仕組みを解明したと発表しました。
[Image credit: Mike Hartmann]
「動く岩」は地面に軌跡を残すことから移動したことは分かるものの、数年に一度程度の間隔でしか動かないため観測も難しく、また近い距離にある同じような大きさの石でも動くものと動かないものがあったり、動く距離や方向も異なるなど、詳しい原理は謎のままでした。
米国の研究機関 Scripps Institution of Oceanography の Richard Norris 氏が率いるチームは、2011年の冬に調査を開始。
従来は「強風で動く」「苔で滑る」「氷の上を滑る」などの説が唱えられてきましたが、Norris 氏のチームが観察を続けた結果、石は氷に押されて移動していることが明らかになりました。
その仕組みは:
- 冬に雨が降って石の周囲が池になる
- 池が夜の冷え込みで凍る
- 日が昇るとともに氷が融けて割れる
- 割れた氷が風に吹かれて池の上を移動する
- 同時に石を押して移動させる
水が干上がると移動した跡だけが残るため、あたかも石が自走したかのように見えるというわけです。
今回の調査では、石の移動速度は分速2-6m ほどで、移動距離は60m 以上移動した個体を確認しています。
石の移動に必要なものは:
- 秒速3-5m の風
- 「風で移動できる程度に薄く、石を押せる程度に厚い、窓ガラスのような」、厚さ3-5mm 未満の氷
- 「氷が自由に動ける程度に深く、石を押すのに適切な浅さ」の、水深7cm ほどの池
調査の手順は、まずカスタムメイドの小型GPS を付けた15個の石を持ち込んでデスバレー内に設置。GPS の電源は石が動くとオンになるモーションアクティベート式です。石をわざわざ外部から持ち込んだのは、国立公園内の石にGPS を付けることは許可されていないため。
また同時に公園の許可を得て観測所を設置し、広大な国立公園に点在する石の観察を始めました。チームの一人Ralph Lorenz 氏いわく「史上もっとも退屈な実験」。
Norris 氏も、石が動くのを目撃するまで5年から10年はかかると見込んでいたため、開始から2年で確認できたのは幸運だったと述べています。
また今回の調査によって、旅行者が石を持ち去ったためにできたと考えられていた公園内の石のない道が、実際は氷の影響でできたものであることも判明しています。
なお最も最近の移動の形跡は2006年頃。気候変動の影響で、1970年以降は移動回数が減りつつあるとしています。