脳波で交信できるアートな液体「ソラリス」
ロシアのアーティスト、ドミトリ・モロゾフが制作した、脳波制御によってアートな模様を描ける液体「ソラリス」を紹介。
TEXT BY JOSEPH FLAHERTY
PHOTOS AND VIDEO BY DMITRY MOROZOV
TRANSLATION BY MINORI YAGURA, HIROKO GOHARA/GALILEO
WIRED NEWS (US)
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同氏の最新作「ソラリス(Solaris)」は、内部が動く照明「ラヴァライト」のような動きをする。見た目は映画『マトリックス』を思い起こさせるが、じっと見ていると、「デルフォイの神託」のように神のお告げが得られそうな気分になる。
ヘッドセット装着者は、タンクと交信するよう指示される。奇妙な指示に聞こえるが、装着者の脳波と関係づけられた磁気パルスによって、インクのような液体の中に隠された強力磁石が刺激される。その結果、装着者がストレスを感じていると激しく、気持ちが落ち着いていると滑らかに、黒い斑点たちが動く。
しばらくすると、一部の人は、この黒い液体と「会話」ができるようになり始める。自分の脳波によって、液体の動きを制御できるようになるのだ。上手な人なら、脈打つ斑点をテレパシーによって表面に浮かび上がらせたり沈めたり、黙想で静めたりできる(次ページに動画)。
意識の海
モロゾフ氏は、このシステムを作製するにあたって非常に長い時間装置とやりとりしていたので、フィードバックが適切にできるようになったという。「自分の認知活動や気分、集中度を変えるだけで、像を好きなように移動させたり変化させたりすることができる」という。
ソラリスというプロジェクト名は、スタニスワフ・レムによるSF小説(邦題は『ソラリスの陽のもとに』) にちなんだものだ。この小説には、惑星ソラリスを軌道上から観察する宇宙飛行士たちが登場する。
惑星ソラリスは、知性を持つ有機体である海に覆われており、この海によって数々の不可解な現象が起きる。「ソラリスの海」とのコミュニケーションを図る宇宙飛行士たちを通して、人間のコミュニケーションの限界を哲学的に探究した物語だ。
モロゾフ氏らは、ソラリスの知的で抽象的なテーマを、もっと親密で楽しい双方向体験のなかで探究したいと考えた。「われわれは、人間の心を鏡のように映し出すソラリスの海という概念を、『心』を読むことができる機械と結びつけることに決めた」。
その結果生まれたのが、ヘッドセット装着者の前頭葉が発する電気パルスを、独自の視覚的パターンに変えるこの「鏡」だ。
装着者はそれぞれ違う反応をするが、ほとんどは、最後にはこの液体と結びつきを感じるようになるという。モロゾフ氏は、異なる気分や個性はそれぞれ、似たようなパターンとして現れる傾向があると指摘している。「さまざまな感情や活動は、似たような状況ではほぼ似たようなパターンになる。もちろん、ヘッドセット装着者によるちょっとした違いはあるが」