iPhoneと持ち歩ける真空管ポタアンTU-HP01 & 専用革ケース
最近、一部のオーディオ好きたちの間で流行っている「ポタアン」こと、ポータブルヘッドホンアンプ。ポタアンの中でも変わり種として話題なのが、このイー ケイジャパン製の真空管ハイブリッドポタアン、「TU-HP01」です。今回、試聴機をお借りできましたのでさっそく試してみたいと思います。
・ぽたあん?
iPod やウォークマンなどに標準で付属するヘッドホンで音楽を聴いていると、その音質がなんとなく物足りなくなってヘッドホンを交換したという人は多いと思いま す。ほんの少し高めのヘッドホンに交換するだけで聴き違えるほど音が良くなったりするものですが、奮発して高級なヘッドホンにしてみたけれど、期待したほ どでもなかったということもあるでしょう。ポータブルプレーヤーのヘッドホン出力は、あまり高い出力を持っていないため、高級なヘッドホンを鳴らし切るに はパワーが不足する場合が出てきます。そんなプレーヤーのパワー不足を補い、いいヘッドホンでいい音を聴かせてくれるのが、この「ポタアン」です。
・真空管の音
TU-HP01 は、 入力部に真空管、出力部にオペアンプを使用したハイブリッド構成を採用しています。本体の電源を入れると、「VACUUM TUBE」ランプが緑色に点灯し、ボディ上面に開けられた6つの穴からは真空管のほんのりとした明かりが見えてきます。
真空管といえば、発熱で熱くなりそうなイメージがありますが、TU-HP01 で使用される米レイセオン社の真空管「6418」は、ほとんど発熱がなく低消費電力で、真空管の中でも「電池管」と称されるバッテリーに優しいタイプのも のです。また基板に固定せずクッションで浮かせることで、真空管にショックを与えたときに発生するノイズを抑えています。
TU-HP01 を iPhone 5 に接続して音楽を聴いてみると、iPhone に直接ヘッドホンを接続したときの音に比べ高音域の耳障りな感じは抑えられつつも中低音が豊かになる傾向で、厚みやまろやかさが増した印象の音でした。さ らにポタアンなしではあまり聞こえていなかったリバーブによる響きやウッドベースの柔らかい低音などがよりよく聞こえ、全体の音圧も高くなりました。
・交換可能なオペアンプ
TU-HP01 のもう一つの特徴は、電子工作キットメーカーでもあるイーケイジャパンの製品らしく、出力側のオペアンプをユーザー自身が交換できる設計になっていること です。標準で搭載されているオペアンプは新日本無線の MUSES8820 ですが、聴き比べ用にバーブラウン製 OPA2604 が付属しています。
オペアンプは初心者でも簡単に交換が可能なので、実際に OPA2604
へ交換をしてみます。オペアンプなどの電子部品は静電気に弱いので、必ず静電気を除去してから作業します。まず、電源など操作パネルとは反対側の蓋につい
ているツマミを2つとも外します。そして、付属品の六角レンチを使って操作パネル側のネジ2本を外し、操作パネルの縁を持ってゆっくりとケースから基盤を
引き出せば2つの真空管、オペアンプ、電池ソケットなどが現れます。このとき、電池はすぐに取り外しておきましょう。
オペアンプを外すには、まず先の細いマイナスドライバーをオペアンプのお腹側に差し入れて下から浮かせます。そしてラジオペンチでオペアンプを掴んで、 まっすぐ上方向に引っ張ります。これでソケットから簡単に引きぬくことができるはずですが、誤って斜めに引っ張ってしまうとオペアンプの足を曲げてしまう ことがあるので、よく注意して作業する必要があります。
無事オペアンプを取り外せたら、今度はこれから使うオペアンプをソケットに装着し、元通りに組み上げればOKです。付属のOPA2604に交換してその音 を確認してみると、先ほどの押し出しが強かったMUSES8820に比べて、上から下までバランスのとれた感じの音になりました。ギターの音などがはっき り聴こえるようで、ユーザーによってはこちらのほうが好みかもしれません。
このように、TU-HP01 はオーディオとしての音質を追求するほかに、パーツを自由に取り替えてその音の変化を聴き比べるという楽しみ方をすることもできます。なお、マニュアルに は交換可能なオペアンプの一例が紹介 されており、実売価格400円程度から数千円のものまで、数種類が音質的特徴などの参考情報とともに掲載されています。
なお、TU-HP01 に推奨されるヘッドホンはインピーダンス16~32Ω、インイヤータイプのものが相性が良いようです。
電源は単4型アルカリ乾電池、またはニッケル水素充電池x4本を使用。本体サイズは幅78 x 高さ16 x 奥行き139mm、電池を除く重さは125gです。
・もっといい音で聴くには
今回の試聴は付属の3.5mm ステレオミニケーブルを使用し、TU-HP01 の入力端子と iPhone 5 のヘッドホン端子を接続して行いました。それでも音質の変化は楽しめましたが、本来はライン出力からの音声を直接ポタアンへ入れるほうが、iPhone 内蔵のアンプを通さないぶんだけ劣化のないベストな音を楽しめます。
iPhone 4S までの 30pin ドックコネクタなら市販の 30pin - 3.5mm ステレオミニ変換ケーブルを使えば簡単ですが、Lightning 端子搭載を搭載する iPhone 5 や iPod などではそうはいきません。実はLightning 端子はアナログのライン出力が省略されています。よって、まず DAC を内蔵しライン出力が可能になる Apple 純正のLightning - 30pin アダプタを装着し、そこに先ほどの 30pin - 3.5mm ステレオミニ変換ケーブルを使用する必要があります。30pin - 3.5mm ステレオミニ変換ケーブルは Amazon などで入手可能です。
・高級皮革「ブッテーロ」製の専用ケース
TU-HP01 には、アパレル雑貨などを手がけるバリューイノベーションの「abrAsus」ブランドから、iPhone との組み合わせに特化した「iPhone 用真空管アンプケース E0501」が発売されています。上質なヌメ革の「ブッテーロ」を使用し、iPhone と TU-HP01 の組み合わせのために職人の手によって作られたもので、なめらかな手触りが高級感を醸し出します。
カラビナフックなどを付けられるループもあり、携帯性は非常に良いといえるでしょう。また、iPhone にフィットするように作られていますが、iPhone 5 に薄手のハードケース(STOR. 製 IRUAL)を装着した状態でも問題なく収納することができました。さらにサイドにあるベロを利用してヘッドホンのコードを巻きつけておけるので、いざ、 使いたいと思ったときにヘッドホンだけ忘れてしまうということもありません。