月曜日, 6月 17, 2013

“俺”ではなく“俺たち”を自慢する日本人 週刊プレイボーイ連載 メモ

“俺”ではなく“俺たち”を自慢する日本人 週刊プレイボーイ連載(102)


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アメリカの高校生にリーダーシップがあるかどうか質問すると、7割が「自分は平均以上」と答えます。大学教授を対象とした調査では、94%が「自分 は同僚より優秀だ」と回答します。平均より優れたひとは半分しかいないはずですから、これは明らかにおかしな現象です。
心理学では、無意識のうちに自分を過大評価することを「平均以上効果」といいます。私たちの住む世界では、ほとんどのひとが平均以上に知能が高く、 平均以上に公平で、平均以上に車の運転がうまいのです。
自分に根拠のない自信を持つ傾向は、「ポジティブ・イリュージョン」として知られています。といっても、“幻想(勘違い)”なんだから矯正すべき だ、といいたいわけではありません。
子どもに対して「もっと現実を直視しなさい」と説教する親や教師がいますが、自己評価と他者の評価が一致している、すなわち“勘違いしていない”ひ との典型はうつ病患者です。あらゆる出来事をネガティブにとらえてしまうのがうつ病だとされていましたが、最新の研究では、彼らの自己認識は正確すぎてポ ジティブな勘違いができないのだと考えられるようになりました。
「日本人はうつ病にかかりやすい」という話を前にしまし たが、このことは国際比較調査において、日本人の自己評価の低さとして表われています。
日米中3カ国の高校生約3400人を対象に行なわれた調査では、「私は他人に劣らず価値のある人間である」という質問に肯定的に答えた高校生はアメ リカで89%、中国で96%だったのに対し、日本ではわずか38%でした。その一方で、「自分にはあまり誇りに思えるようなことはない」と答えたのは、ア メリカ24%、中国23%に対して日本の高校生は53%と半数を超えます。
これを見ると“自己卑下(正確な自己認識)”が日本人の特徴といえそうですが、大学生を対象とした調査では、明らかに自分を「平均以上」だと答える 項目が見つかっています。男女を問わず日本の大学生が「自分は他人より優れている」と思っているのは、“優しさ”“真面目さ”“誠実さ”です。知能や容姿 のような比較が容易なものではなく、評価基準があいまいなものには過剰な自信を持てるのです。
だとすればこれは、「日本人は現実を直視できる」という話ではなく、ポジティブ・イリュージョンの表われ方が文化や社会によってちがっているのかも しれません。
社会心理学の研究によれば、日本人のもうひとつの特徴は、「人間関係を仲介として自分自身を高く評価する傾向」が顕著なことです。自分は平均以下か もしれないけれど、自分の夫婦関係や友人との関係は平均以上だと思っているのです。
個人ではなく関係性に依存するというのは、よい面も悪い面もあります。
日本人は“俺”ではなく“俺たち”を自慢しがちです。これが「自分はたいしたことないけど会社は一流だ」とか、「俺はリア充じゃないけどニホンは世 界から尊敬されている」という意識につながっているとしたら、心当たりのあるひとも多いのではないでしょうか?
 『週刊プレイボーイ』2013年6月 10日発売号
禁・無断転載
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参考までに、菊池聡『「自分だまし」の心理学』より関連するデータを示しておきます。
自己奉仕(セルフ・サービシング)バイアスは「よいことは自分のおかげ」と考える傾向 で、ポジティブイリュージョンンの一種です。
これを見ると、もっともポジテイブイリュージョンの大きいにはアフリカ系、次いで東 欧・ロシア、アメリカの順になっており、日本人はマイナス数値で“ネガティブイリュージョン”とでもいうべき特異な自己認識を持っているのがわかります。
同じヨーロッパ系白人でも、アメリカや東欧に比べ、イギリスや西欧の自己奉仕バランス が低いのも興味深い結果です。


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“俺”ではなく“俺たち”を自慢する日本人 週刊プレイボーイ連載(102) への2件のコメント

  1. 太郎 より:


    やっぱり、日本人って世界でも特集な人種だと思う。もちろん自分も含めて。
    以前、毎日新聞のコラムで世界中の学生に、将来どんな会社に就職したいかアンケートとったら、たいがいの国ではGoogleやアップルが上位にくる んだけど、日本だけが上位にこない。
    そして、自分でイノベーションを起こして世界を変える、または驚かしたい、イノベーションに関わる仕事をしたいといった回答が多かったが、日本で は、ほとんどこういった回答がない。
    遠慮しているのか、謙遜しているのか分からないが、回答から日本の学生が極端に消極的で控え目で保守的である結果になっている。
    こないだのAERAの特集で、東大の理系は女子が少なく、中高一貫の男子校出身者ばかりで、ほとんど彼女がいなくて、まともに同世代の女子と会話し たこともない連中が多いとの事。ただ、外見は今風のイケメン。きっと童貞が多いのだろう。
    Xvideoの罪は大きいな!
    それから、笑ったのが、あるTwitterで最近の学生の服装が似通ってるというツイート。
    某駅のホームではデニムシャツにベージュのパンツを着た男子集団。
    某理工学部の教室内は同じようなチェックのシャツを着た男子学生ばっか。
    某ファミレスに集まってる女子学生全員の髪型がちゅっと茶色がかったセミロング。服装も同じような感じ。
    海外在住の日本人女性が、日本の女性誌に掲載されてる髪型やファッションがみんな同じに見えるとの事。
    あの就活生の全員紺色スーツは、何とかならないのかね。あの学生達からじゃ、とても画期的な商品やアイディアが生まれるとは思えない。
    海外で働いてる連中からすると、日本は住むには最高だけど、仕事をするには最低らしい。もちろん全員じゃないよ。
    日本代表の試合を見てると、なんとなく分かるな。今までも変わらないし、これからも変わらないのだろう。
    それこそが日本人のアイデンティティー!
  2. さんじゅ より:


    ●場違いを承知で、皆様にご相談●
    場違いを重々承知ですが、ここには金融レテラシーが高いと思われる方々が沢山おられると思いますので、皆様にご相談させて頂きます。アドバイスのほ ど、何卒お願いいたします。
    現在、住宅ローンを長期固定金利で2000万円借りていて、年の金利が3%で(60万円)とします。ここで繰り上げ返済可能な資金が溜まったとしま す。
    国家債務膨張により、今後金利が暴騰することがあった場合、この固定金利の借金2000万円は返済せずに置いておくと、お宝ローン(運用金利とのローン金 利の差額が儲かる)となる可能性があるかと思います。
    とはいえ、いつ金利高騰が起こるかわらかず、それまで高い金利を払い続けるのも結構なコストです(年約60万円)。そこで、以下アイデアを思いつき ました。 (橘玲氏著の「資産防衛マニュアル」を読んで)
    1)ローンは全て繰り上げ返済(以降年約60万円の金利を払わなくて済む)
    2)その代わり、以降支払っていたはずの金利(約60万円)分(またはその何割かでも良い)の「国債ベア」を毎年買う。
    「国債ベア」は金利高騰がなければ、時間とともに減価していきますがゼロにはなりません。 一方で、金利暴騰した場合は、数倍から数十倍に値上がりすることがありえると思います。
    つまり、金利暴騰に備えた保険(または宝くじ)として、「固定金利長期ローン」はやめて「国債ベア」に乗り換えたほうが、コストもリターンともに条 件が良くなると考えて良いような気がします。
    つまり「掛け捨て(に近い)保険」「コールオプションの買い」と考えて、国債ベアを買っておくというという発想ですが、何か見落としている気もしま す。 なぜならば、両者を金融商品として考えた場合、「確実に良くなる」ということは理論上有りえないと考えるべきだからです。
    上記考えは間違ってますでしょうか?
    理論的な面、実際的な面、その他どのような角度からでも結構ですので、皆様のご意見、アドバイスをお聞かせ下さい。どうぞ宜しくお願いいたします。
    ※なお、金利暴騰など起こらないというご回答は固くお断りします。起こるかどうかを議論するつもりはりませんので、宜しくです。


    http://www.tachibana-akira.com/2013/06/5919