ラットの神経細胞からつくった人工の脳。直径約5ミリ。内部の構造は同心円状に異なる
With six layers, things get decidedly human. (Tufts University)
|
神経細胞を特殊な物質で培養して、原始的な「脳」を人工的に作ることにアメリカ・マサチューセッツ州のタフツ大学の研究チームがラットの実験で成功しました。脳を実験で作るのは、世界で初めての成功となります。
完成した脳はドーナッツ型をしており、おおまかな構造が脳と似ています。衝撃を与えると実際の脳と同じように反応し、化学物質と電気信号を発します。脳の働きを解明するのに役立つといいます。チームは、この成果を生かして人間の細胞を使った人工脳作りも進めています。
人間の大脳は、糸状の神経線維が集まった「白質」の表面を、神経細胞が集まった「灰白質」が覆う二重構造をしています。
タフツ大学のデビッド・カプラン教授らは、絹でできたスポンジ状の物質にラットの神経細胞を含ませて培養すると、神経細胞がこの物質を足場にして成長することを発見。足場をドーナッツの形状にして培養すると、ドーナッツ部は灰白質、中央部は白質に分かれ、脳のような立体構造になりました。
完成した人工脳は6層構造となっており、それぞれの層には異なるタイプのニューロンが移植されています。また脳の層はしっかりとくっついており、カプラン教授は「異なる層の接合部分は複雑な構造をしているかもしれない」と語っています。また構造が「レゴのようだ」とも語っています。
この人工脳は、全体で1.2cmまで成長し、研究室内で2ヶ月間生存させることができました。
人工脳の研究は、外傷性脳損傷によるニューロンの活動を調べるために行われており、アルツハイマー病、うつ病、てんかん、などの治療薬の開発に役立つとされています。
驚くべきことに、脳の構造がレゴブロックのように区画を分けて付けたり外したりすることができます。これは必要な能力を持つ脳の部位を操作し、思考力を自由に変えるられることを意味します。
またこの人工脳は、より深い哲学的な問題を想起します。つまり記憶や痛みといった非常に難しい定義に答えることができるかもしれないということです。
もしかすると、この完成した人工脳はすでに意識を持っていて、何かを考えていたのかもしれませんね。脳を人工的に作り出せれば、いったい何を生命と定義できるのでしょうか。
土台となったスポンジ
The neurons in the spongy scaffolding. (Tufts University)
|
Neurons in the silk sponge region of the system. (Tufts University) |
Each concentric ring holds a different type of neuron. (Tufts University) |
The Music