水曜日, 7月 25, 2012

攻防:ヒロシ・ミキタニが語る。 楽天 Kobo は、いったい誰と戦うのか?


1 2 3


AmazonやGoogleと戦うということ


「インターネット登場の前と後とではすべてのことが変わっています。行政も、教育も、医療も、すべての領域でいままでのやり方、考え方が変わっています。 自動車業界だって『カーシェア』なんて考えが出てきてクルマの所有という概念が変わり始めた以上、関係ないなんて言ってられませんよね。そういったことに 対する感覚のない経営者が経営している会社は、これからどんどん厳しい状況に追い込まれると思いますよ」

楽天が2年前に敢行した社内における英語の公用語化(Englishnization)は、当時多くの冷笑や失笑をもって迎えられたと記憶する。しかし、 ここに来てその英断の意義は明らかになっている。楽天のエンジニアリング部門のトップ6人のうち3人は外国人だというが、全社的に英語化を徹底したおかげ で楽天サイドとKoboサイドのコミュニケーションは極めて円滑だという。新設される米国本社、欧州本社、アジア本社のトップには日本人が就くことになる というが、そのうち2人は2年前までは英語が得意ではなかったそうだ。

「やればできるんですよ。たかが語学の問題じゃないですか。誰にもできるんです。そのことを証明したいんですよ。実際にやってみてですか? いやあ、いい ですね。何がいいって、英語を公用語にしたおかげで国内と海外って線引きが社内からなくなったことですよ。これは重大な成果だと思いますね。いずれにせ よ、これをしなかったらAmazonやGoogleと世界を舞台に互角に戦うなんてできませんよ。何も国際ルールに迎合しようって話じゃないんです。日本にいいものがあれば、それがコンテンツであれ、経営スタイルであれ、国際的な土俵で世界にちゃんと伝えていくということなんです

世界のeBook市場においてKoboはAmazonの唯一のコンペティターになるだろうと言われている。英国、フランスではすでにAmazonと市場を ニ分するほどまでの勢力になりつつある。日本では果たしてどうだろうか。Amazonとの本格的な一騎打ちはどうやら来年以降にもち越しとなりそうだが、 Amazon云々以前に、Koboがその真価を十全に発揮するためには、まず別のものと戦わねばならないのかもしれない。

これからの経営者に求められる資質について、三木谷は「覚悟と決断。そして足を引っ張らないこと」だと語っている。「変革」の足を引っ張っているのは誰な のか。何なのか。疑念の目は、世の経営者だけでなく、ついこの狭い島国に規定されがちなぼくら自身のマインドセットにも向けておいたほうがよさそうだ。

TEXT BY KEI WAKABAYASHI
PHOTOGRAPH BY JAN BUUS @ DONNA

雑誌『WIRED』VOL. 4をAmazonで購入する