月曜日, 8月 31, 2015

「ブランド」がつくるライフスタイル


出版の未来は「出版社」ではなく「ブランド」にある

ここ数年、オンラインにせよ紙にせよ、ブランドが雑誌を創刊する例が増えている。雑誌によって読者のライフスタイルに影響を与えることが、大きな利益につながるからだ。


去る6月9日、アメリカのマットレス・ブランド「Casper」は、睡眠の文化をテーマとするオンライン雑誌「Van Winkle’s」を立ち上げた。あちこちにテクノロジーを散りばめた、ライフスタイルと科学的考察のちょうど中間を、編集の切り口としている。

編集部の舵を取るのは、非常に立派なキャリアをもつジャーナリストたちだ。エリザベス・スパイアーズ(編集長兼アドヴァイザー)は「Gawker」の創刊編集者で、前職は「New York Observer」の編集長だった。ジェフ・コーエン(チーフ・エディター)は、「Travel + Leisure」と「Forbes」でトラヴェル・ライターと編集者を務めた過去をもつ。マット・ベリカル(シニア・エディター)は「Maxim」出身だし、テレーザ・フィッシャー(サイエンス・エディター)は「Mic」出身だ。

興味深いのは、睡眠をテーマとする雑誌が熟練のジャーナリストたちを雇い入れたことだけでなく、この野心的な出版プロジェクトに足を踏みいれたのが、マットレスの企業だということだ。これは明らかに、次第に見られるようになってきた、出版とマーケティングの企画、そして何より重要なのがソーシャル・プラットフォームを収束するという傾向の新たな証拠だ。

いま、こうした傾向がさまざまな文脈で明らかになっているが、その代表となるのが、Snapchatの「Discover」セクションだ。このセクションは、数ヵ月前に、アプリをミレニアル世代に向けた情報とエンタテインメントのチャンネルに次第に変身させていこうと導入された。また、近年ではさまざまなハイテク企業が名高いジャーナリストを採用するというトレンドもある。

この進化をもっとも如実に表すのが、〈ブランド・マガジン〉の爆発だ。つまり、ブランドが完全に出版社の役割を演じている。こうした例は決して真新しいものでもなんでもなく、最初の例は1900年にまで遡る。新興タイヤ企業が旅行者やグルメ愛好家を対象に出版したガイドブック、「ミシュラン・ガイド」だ。

(創業者兄弟のひとりである)アンドレ・ミシュランの直観は、いまも有効だ。質の高いコンテンツは、ブランドが向き合っているターゲットのライフスタイルを提案して(そして影響を与えて)、ついには、その習慣と製品とをぴったり一致させることに成功する。
いま、そこに新しさがあるとすれば、それはジャーナリズム出身の人間が数多く関わるようになってきていることだ(その正否はともかく、これを「ブランド・ジャーナリズム」と呼ぶ人もいる)。このプロセスはクオリティを向上させ、この2年の間にレヴェルの高いさまざまなプロジェクトを生み出すのに貢献している。



Airbnbが発行するプリンテッドメディア「Pineapple」は2014年冬号から創刊した。PHOTO COURTESY OF AIRBNB
例えば、Airbnbの「Pineapple」だ。120ページの紙の雑誌に掲載されるルポルタージュは、文章においても画像においても、そのクオリティは既存の優れたカルチャー/ライフスタイル誌と遜色ない。

Marriottの「Marriott Traveler」は、アート、モード、ナイトライフ、美食の文化のフィルターを通して都市を語る。興味深く、その内容は決してありきたりなものには収まっていない。

2014年初頭に、高級品オンラインストアNet-a-Porterは「Porter」を立ち上げた。200ページの雑誌で、紙版もデジタル版も用意されている。モードのきらびやかな世界を探索して、ストアへのリンクを設置し、あらゆる瞬間に製品を購入することができる。

数カ月前には、髭用アクセサリーを製造しているブランド、Harry’sが「Five O’Clock」を立ち上げた。非常に特殊なストーリーテリングの手法──フレッシュで魅力的な文体、淡い色彩の写真やミニマルなイラスト──を用いて、男の世界を語る。

約1年前、INGグループは、「ING World Magazine」 を立ち上げた。経済的性格のあるテーマに焦点を当てた季刊の雑誌だ。専門外の読者でも読めるトーンが特徴的だ。ING Directは、イタリアでは「We Are Social」と「Voce Arancio」を出している。「節約のためのアイデア」を集めたブログで、テクノロジーや環境に関するテーマについてのアドヴァイスやヒントを提供している。

広く知られ、また評価も高いのが、Red Bullの雑誌「The Red Bulletin」だ。2005年にF1をテーマとした雑誌として創刊した。現在は、限界に向かって進んだり、あるいは流れに逆らったり勇気(と少しばかりの狂気)をもって人生に立ち向かう人々のストーリーを集めている。これはつまり、Red Bullの価値観を体現する人々だ。

2012年には「CheFuturo!」が登場した。イノヴェイションやデジタル、スタートアップの世界についての記事や考察をブログに集約させる「CheBanca!」のプロジェクトだ。
こうした全ての例は、 ブランドの製品と価値を遠回しに伝えることのできる熟練の書き手を活用するという「先進的な」アプローチを共有している。消費者は読者として扱われ、そして読者は(おそらく)消費者へと変わるのだ。

その理由を、ルーク・シャーウィン(Casperの共同創業者、チーフ・クリエイティヴ・オフィサー)はこう語っている。

「抜け目のないブランドは理解したのです。製品がその役割を果たすのは、ある特定のライフスタイルを可能にするということにおいてのみだということを。そして、このライフスタイルに影響を与えることは、製品にどのような変更を施すよりも、大きな利益をもたらすことができるのです。

 

3Dプリンターでつくった「リアル・クローズ」|Danit Peleg

家庭用3Dプリンターでつくった「リアル・クローズ」

自分でデザインした服を、自分の家で印刷できるようになったら...。そんなちょっと楽しい空想が現実のものになることを予感させてくれるコレクションがある。製作したのはイスラエルの若きデザイナー、ダニット・ペレグだ。


ダニット・ペレグは、卒業プロジェクトとして、3Dプリンターのみで制作した5作品からなるコレクションを発表した。
服に使われているのは、FilaFlexという丈夫で柔軟性に富んだ素材。
生地はWitboxという家庭用3Dプリンターで出力されている。
コレクションのいくつかは斬新で前衛的、しかしなかには普段着としても着られそうなものもある。
ショート丈のトップスにボーダー柄のスカートを合わせたセットアップ。
コピー用紙1枚ほどの大きさを印刷するのに20時間かかったため、ペレグは3Dプリンターを集めて“3Dプリンティング・ファーム”をつくった。
プリントにかかった時間は1着あたり200時間。すべてつくるのには2000時間以上かかったという。


衣服とテクノロジーは、驚くほど多くの歴史を共有している。織物の機械生産は産業革命の始まりであり、何十年間もコンピューターの使いやすさに貢献してきたパンチカードも、もとをたどれば織物機を制御するために18世紀に開発されたものだ。
こうしてみると、いつかわたしたちは自分の服を3Dプリントするようになる、というアイデアも、それほど突飛なものでもないだろう。
ダニット・ペレグは、その可能性を追求している、最先端をいくデザイナーだ。イスラエルのアートデザイン学校、シェンカル(工科デザイン大学)における卒業プロジェクトで、彼女は自宅にある3Dプリンターのみを使って制作できる5つの作品からなるコレクションを発表した。
ペレグは最初、一般的に家庭用3Dプリンターで使用される硬質プラスチックフィラメントを使っていたが、うまくいかなかった。そこで彼女が目をつけたのが、「FilaFlex」と呼ばれる丈夫で柔軟性に富んだ素材だった。この素材は、3Dプリンターの研究者が考案した新しい多孔性構造と組み合わさっており、彼女は、布と同じように扱えるレースのような織物をつくることができた。
3Dプリンターファッションを探求したデザイナーは、ペレグが最初ではない。オランダ人デザイナーのイリス・ヴァン・ヘルぺンは、3Dプリンターで つくったエキゾチックな服を何年間もランウェイに送り続けてきた。また、マサチューセッツ州のデザイナー・デュオは昨年、まるで布のようになびくプラス チック製のドレスを制作した。
しかしペレグのコレクションは、テクノロジーが可能にするさまざまな服のありかたを示しているのだ。ドレスのうちの何点かは間違いなく最先端を行くものであり、未来的な超高層ビルの足場のような複雑な三角形をしている。
何点かはいたって「普通」である。さらに2つは、凝ったトポグラフィーをあしらった黒いドレスと、黒白のストライプスカートとクロップドトップスの セットアップだ。伝統的な布地でつくられたものとは少し違うが、その違いもそれほど大きなものではない。人前に出しても、人々の注目を集める服ではないだ ろう。
しかし、人目を引かないということこそが、3Dプリンターでつくられた服にとってはある意味で大きな成果なのだ。


とはいえ、いまから秋用のワードローブをプリントするのには、“在宅ファッション革命”は間に合わないかもしれない。オフィス用紙1枚と同じ大きさ のプラスチック布をプリントするのには約20時間かかることを知ったペレグは、数台のユニットからなる3Dプリンティングファームで生産を拡大させなけれ ばならなかった。服を印刷するのにかかった時間は、1着あたり約400時間だ。



それでも、ペレグにとってこれはアクセシビリティを試すためには最も重要な実験であり、その意味でこのプロジェクトは成功だった。「何かしらの仲介 者を入れずに制作できたことを、本当に喜んでいるの」と彼女は書いている。「自分で布をデザインして、自分の服を制作して、自分の家ですべてのことを完結 できるのよ


関連記事オーダーメイド服の仕立てをデジタル化。イタリア発スタートアップ「Lanieri」

砂糖を「シリカ」にコーティングしたダイエット甘味料|DouxMatok

砂糖を「砂」にコーティングしたダイエット甘味料が開発。糖分25~55%低減


イスラエルのスタートアップ DouxMatok が、"砂"に砂糖をコーティングした新しい甘味料を開発しました。

二酸化ケイ素(シリカ)の粒子を砂糖でコーティングしたもので、感じられる甘みは砂糖と同じながら、砂糖の成分は25~55%も減らすことができるとしています。
 

DouxMatok 砂に砂糖をコーティング

すべての写真を見る
15 枚

 
 
 



二酸化ケイ素(シリカ)というと、ビーチの砂に含まれる主な成分。といっても、この新しい甘味料に口の中でジャリジャリする砂が入っているわけではありま せん。DouxMatok が開発した甘味料は、体内で吸収されない二酸化ケイ素をナノサイズにまで細かくした微粒子を使い、それを砂糖でコーティングしています。なお、二酸化ケイ 素の微粒子は食品添加物として珍しいものではありません。

この新しい甘味料の味はというと、当然ながらまるっきり砂糖。ただ、二酸化ケイ素は多孔質で吸着力があるため、コーティングした砂糖の甘味を長引かせる特 徴が得られ、同じ甘味でも使う砂糖の量を減らすことができるとのこと。DouxMatok は、新しい甘味料には通常の砂糖に対して25~55%の糖質削減効果があるとしています。
 

現在、DouxMatok ではこの甘味料の洋菓子や清涼飲料水に使えるバージョンをテスト中。また調味料や医薬品などにも利用可能としています。近いうちにFDA(米国食品医薬品局)の承認を申請する見通しです。

価格がどの程度かはまだわからないものの、近い将来には国内でも「砂入りの低カロリーな砂糖」がスーパーの棚に並ぶことになるのかもしれません。



蛇足ですが、厚生労働省はこの6月に発表した 保健医療2035提言書 のなかで「過剰摂取すると健康を害する可能性が高いとして「たばこ、アルコール、砂糖など健康リスク」への課税を提案しました。

どんな食材や嗜好品であれ過剰摂取すれば健康を害するのは当然な気もしますが、これはそれだけ糖質の摂取を気にする人が増えているということを示しているのかもしれません。

一方でゼロカロリーを謳う人工甘味料にしても、それを摂ることで食事や間食への抵抗感が薄れてしまい、結果的に健康リスクを高めてしまうケースも考えられなくはありません。

結局のところ、砂糖だろうがゼロカロリーだろうが、その健康リスクは本人の自己管理しだいということに間違いはなさそうです。

 

Yusaku Kamekura|亀倉雄策(かめくらゆうさく)

亀倉雄策(かめくらゆうさく) (1915年4月6日 ~ 1997年5月11日)

日本のグラフィックデザイナー。代表作にフジテレビジョンの旧シンボルマーク(8マーク)や日本電信電話(NTT)のマーク(ダイナミックループ)、東京オリンピックのポスターなどがある。

Works

グラフィック'55
ポスター 1955

グロピウスとバウハウス展
ポスター 1954

EXPO'70
ポスター 1967

EXPO'70
ポスター 1969

ヒロシマ・アピールズ
ポスター 1983

ニコン
ポスター 1954

ニコンミクロン双眼鏡
ポスター 1955

ニコンカメラ、ニッコールレンズ
ポスター 1955

ニコンSP
ポスター 1957

ニコンカメラ、ニッコールレンズ
ポスター 1957

ニコンF
ポスター 1959

ニコンカメラ、ニッコールレンズ
ポスター 1960

ニコレックス35
ポスター 1960

ニコマート
ポスター 1971

勅使河原蒼風展
ポスター 1954

富士フォトコンテスト
ポスター 1955

原子エネルギーを平和産業に!
ポスター 1956

恐怖と悲しみ!ガン!
ポスター 1959

ヤマギワ国際照明コンペポスターシリーズ
ポスター 1973

ヤマギワ国際照明コンペポスターシリーズ
ポスター 1977

ヤマギワ国際照明コンペポスターシリーズ
ポスター 1979

ヤマギワ国際照明コンペポスターシリーズ
ポスター 1983

デザイン
雑誌表紙 1960

デザイン
雑誌表紙 1960

デザイン
雑誌表紙 1960

東京オリンピック
ポスター 1961

東京オリンピック
ポスター 1962

東京オリンピック
ポスター 1963

札幌オリンピック
ポスター 1969

札幌オリンピック
ポスター 1970

参議院選挙
ポスター 1971

通信機器フェアー
ポスター 1986

トップオフィス'70
ポスター 1970

デザイン博覧会
ポスター 1987

草月
雑誌表紙 1974

貿易振興雑誌
雑誌表紙 1956

貿易振興雑誌
雑誌表紙 1957

貿易振興雑誌
雑誌表紙 1958

世界のトレードマークとシンボル
編集 レイアウト 1965

モリサワ
ロゴタイプ 1982

明治チョコレート
パッケージ 1974

明治製菓
ロゴタイプ 1971

グッドデザイン
シンボルマーク 1959

NTT
シンボルマーク 1985

TOSTEM
シンボルマーク 1985



 関連記事

今話題のアートディレクター・佐野研二郎の世界