金曜日, 7月 31, 2015

The Honest Company 女優ジェシカ・アルバの経営哲学

1000億円企業を生んだ女優ジェシカ・アルバの経営哲学

 

 

「映画の中でビキニを着てタフに振舞う女の子」——世間がジェシカ・アルバに抱くイメージはそんなものだと言って本人は笑う。

実際には、この34歳のハリ ウッド女優の活躍の場はスクリーンの中だけではない。彼女が4年前に創業した家庭用品のブランドThe Honest Companyは、今や推定時価総額10億ドル(約1,237億円)。その15〜20%を所有するアルバは今年、成功した女性経営者としてフォーブスの表紙を飾った。

The Honest Companyが扱うのは、有害物質を含まないおむつやおしり拭き、オーガニックの蜜ろうを使った日焼け止め、フェイクレザーを使った170ドルの上品なママバッグなど、健康と環境に配慮したグッズの数々。起業のきっかけはアルバ自身の妊娠だった。

「生まれてくる娘のために安全で健康的な環境を整えようと思い、それを可能にする製品を探しました。ところが現代女性に響く、確実に安全な原料だけを使った透明性の高いブランドが見つからなかったのです」とアルバは振り返る。

3年以上にわたるリサーチ、人脈作り、さらに米国の有害物質規制法(TSCA)の見直しを求めるロビー活動を経て、2011年に17種類の自社製品を販売するオンラインショップをオープン。
瞬く間に女性ユーザーの支持を獲得し、昨年の年商は1億5,000ドル(約186億円)、2015年は2億5,000万ドル(約309億円)に達する勢いだ。

アルバは一体どのようにしてビジネスを急成長させたのか? フォーブスの女性サミットで彼女が語った成功の秘訣を以下に紹介する。

 

自分よりも「仕事ができる人」の助けを求める

 

The Honest Companyを立ち上げるにあたり、アルバは公的機間の専門家からトリー・バーチのような有名企業家まで、無数の先達にアドバイスを求めた。皆が皆、彼女の計画に乗り気だったわけではないものの、ビジネスプランや戦略を立てる上でそれぞれ強力な味方になってくれたという。アルバ曰く、人に会う時に忘れてはならないのが「その場で一番賢い人にならないこと」。

「どこへ行っても、必ず自分よりも賢い人がいます。その人から学べることがあります。ビジネスウーマンにとって、助けを求めること、そして批判を恐れないことは必須です」


 

Noという声に耳を傾ける

 

アドバイスに耳を傾ける一方で、直感を信じることも大事だ。暮らしに関わるすべてのものが「安全で、ヘルシーで、見た目も良くて、お手頃価格であるべき」と考えていたアルバは当初、ベビー用品から、洗剤、生理用品、ペンキ、絨毯まで幅広い商品展開を想定していたが、事業計画書を見た人々から主力製品を一つに絞るべきだと助言された。
アルバはこの反応をポジティブに転換し、プランを練り直してローンチ時の製品数を17に絞った。
「人々の反対意見は私を止めるどころか前に押し出してくれました。自分が本当にしたいことを見極めるためにも、私はノーと言ってくれる人を必要としていたのです」



 

「鈍感力」を身につける

 

役を得るためにオーディションを受け、映画が完成すれば評論家に批評され、私生活でもパパラッチに追われる女優のアルバにとって、面の皮を厚くすることは処世術。これが生き馬の目を抜くビジネスの世界でも役に立っているという。
「間抜けな評論家のヘイト発言でしかないような意見も含めて、すべての(批判や非難の)声が届いてきますが、被害者意識は持たないようにしています。特に母親になり私自身が成長したことで、うまく受け流せるようになった気がします」

 

 

失敗しても進み続ける

 

The Honest Companyの試練はローンチ後も続いた。その道のりを「一歩進むごとに岐路が現れるかのよう。そしてどの道を行っても、障害物があったり、山がそびえていたりと難関が立ちはだかります」とアルバは表現する。
オンラインショップを開業して5週間目には、顧客に商品を発送する一方でクレジットカード決済ができていなかったことに気づいた。幸いにもすべての顧客が快く再請求に応じてくれたが、この経験を通して失敗しても立ち止まらずに進み続けること、そして同じ失敗を繰り返さないことが重要だと学んだという。万が一、繰り返してしまった場合は?

「一度目より進歩していれば大丈夫でしょう。でも二度目まで。三度目はありえません」

 

 

社会を変えたい思いを持ち続ける

 

新商品を次々に開発し、最近はアジア進出も果たしたThe Honest Companyだが、アルバが「私たちはまだまだこの産業に足を踏み入れたばかり」と言う通り、家庭用品のマーケットは巨大だ。「とてつもなく大きな可能性が広がっています。

世界の人々の健康に変化を起こすには、莫大なお金がかかります」とアルバは野心を隠さない。

週に85時間以上働くアルバを突き動かしているのは、世の女性、特に母親たちの毎日を改善したいという使命である。つい先日、アルバはある母親からThe Honest Companyのおむつに変えた途端に赤ちゃんのおむつかぶれが消えたことを告げられた。

「私たちは彼女の暮らしを良い方向に変えました。それはとても素晴らしいこと。何が素晴らしいかって、私たちは変えようと思ったことを実際に変えたのです」









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木曜日, 7月 30, 2015

2014年度(第63回) 朝日広告賞 決まる!

2014年度 第63回 朝日広告賞


一般公募の部 受賞作品

「一般公募の部」の応募総数は1117点。候補作品が30点余りに絞られた段階で中間講評を実施。各審査委員から注目した作品への感想や推薦理由が 述べられた。上位の決定においては、「こなれて安定した作品よりも新しさがある作品を最高賞にすべき」「新しさがあっても、難解すぎる作品を最高賞にして よいものか」などと、審査委員の意見がまっ二つに分かれ、議論が白熱した。その結果、KADOKAWAの課題を扱った作品が最高賞に輝いた。

 

朝日広告賞

KADOKAWA 「角川文庫」  
時田侑季



「何がいいとはっきり言えないのだが、目を留めてしまう」(前田知巳氏)
「深読みさせることが応募者の意図だろう。だが、実際この広告が新聞に掲載されたときに、果たして読者が深読みしてくれるだろうかという気もする。審査委員でなかったら素通りする表現かもしれない」(タナカノリユキ氏)
「『わからない』という強さが相当あって、ひきつけられる」(上田義彦氏)


「パッと見たときにかなり引っかかって、何かすごくザワザワした。理屈はわからないが、ほかの作品と並べて見たときに、一つ抜けているなと思っ た。“ザワザワ”の正体を突き詰めると、おそらく写真の不可思議さで、目に見えること以外の何かがあると感じさせる。審査委員たちも、写っていないことを 探そうとした。この写真の不可思議さが、自分を日常とは違う世界に連れて行ってくれるという『本を読む』行為にどこかつながっていて、KADOKAWAの 広告として成り立っていると思う」(児島氏)

 

準朝日広告賞

キッコーマン 企業広告「おいしい記憶をつくりたい。」
 増田光宏、タルボット才門、平田正和、服部伸崇、水澤覚之介、太田幾織



「ビジュアルが秀逸。世界的に認められているしょうゆビンのデザインの美しさが訴求できている。デザインが『記憶』という課題に沿って機能していると思う」(佐藤氏)
「栄久庵憲司さんがデザインしたしょうゆビンが、化粧ビンと並んでも堂々としていて、かついい違和感が出ていてすばらしい」(浅葉克己氏) 「パッと見た時の印象が美しく、キッコーマンの企業広告として機能している」(副田高行氏)
「化粧ビンとしょうゆビンを一緒に見せるということは、食品が薬品っぽく見えてしまうので、実際の広告ではやれないだろう。そこを堂々とやってい るところがいい。男の人は、しょうゆの焦げた匂いなどが大好き。『男をつかむ香り。』というコピーが化粧品ではなくちゃんとしょうゆに落ちている」(児島 氏)



はとバス 「はとバス」 
上原恵太、谷川瑛一



「『HATOBUS』と『親孝行してますか?』というシンプルな組み合わせは見た印象としてとてもスピード感がある。デザインとしてもなかなかいい」(葛西薫氏)
「好きだった作品のひとつ。ただ、『親孝行してますか?』というコピーは少し安易に感じた」(佐藤氏) 実際に新聞に載ったらとても目立つと思う。はとバスのブランディングをしながらマーケティングもしている。自分は『親孝行してますか?』というコピーはいいと思った。母の日などに掲載したら、効果がありそう」(児島氏)



えひめ飲料 ロングセラー商品「ポンジュース」
 萩原陽平、井上みすず、中山 大



「見ていると、ぽんジュースを飲みたくなる」(川口清勝氏)
「イラストレーションが印象に残った」(タナカ氏) 「思いつきそうで、何で思いつかなかったんだろう……と感じさせる。見ていてうれしくなる、とても気持ちのいい表現。つい触りたくなるほどイラストレーションの精度が高い」(葛西氏)

 

梶祐輔記念賞

新潮社 「新潮文庫」 
鈴木純平、majocco



「全国の書店員が自分の店にポスター代わりに貼ったら効果がありそう」(小山氏)
「コピーとイラストの関係が絶妙で、気持ちにグッとくる。女性の折れた薬指、触れていそうで触れていなさそうな二つの手、そうしたイラストの雰囲気に、文学や文章に漂う時間のようなものを感じさせる」(タナカ氏) 「何か昭和の匂いがする絵の雰囲気が独特で、目に留まった作品」(葛西氏)
「『好きと言えたら、文学なんていらない。』というコピーは王道だが、不思議な雰囲気の絵と合わさることでいい作品に仕上がっている」(副田氏)

入選

ノリタケカンパニーリミテド 「上質な暮らし」を提案するノリタケ食器 
鷲見まゆみ、稲垣厚作、小谷圭祐
「食器が変わると和食が洋食に見えるということは確かにあるだろう。お皿と食の価値観の変化をうまく表現している。視点はシンプルだが奥行きを感じる」(タナカ氏)
「ノリタケのショールームに貼ったらよさそうなビジュアル。ポスター的だが朝日新聞に掲載されたら企業が誇りを感じられるだろう」(小山氏)
「商品の良さや食事の楽しさを伝えている。細かいところまで神経が行き届いている」(葛西氏)
「ある種の実証広告。レベルの高い玄人技の表現だが、昔からある手法なので、ビックリはしなかった」(川口氏)




トンボ鉛筆 「TOMBOWの文具のブランド広告」  
永松りょうこ、山口 舞、古川泰子



「トンボ鉛筆の課題を扱った作品は例年数が寄せられるので、よほどの表現でないと驚かなくなっている。香りに着目したこ の作品は目新しかった。鉛筆独特の香りは、誰もがかいだことのある記憶。『畳』『田んぼ』『線香』などの香りと一緒に並べてあることで、『文明的に忘れ去 られてしまいそうなものたち』という深い見方ができて、いい作品だと思った(前田知巳氏) 「紙媒体である新聞に、鉛筆や紙の香りを持ち込むことで、『想起させること』に成功している」(タナカ氏)




ハインツ日本 「ハインツ トマトケチャップ」
 佐藤正人



「ハインツの味、おいしさ、ケチャップをつけて食べたいという気持ちをシズル感たっぷりに表現している」(タナカ氏)




ハインツ日本 「ハインツ トマトケチャップ」
 江畑 潤、樋口舞子、中島順子、佐野夏記



「これからの時代の新聞広告は、商品を売るためというより、企業の誇りや記念のために額に入れて取っておけるような表現が適していると思う。この作品は役員室にアートとして飾ってもよさそう」(小山氏) 「絵がすばらしく、初見のインパクトが大きかった」(葛西氏)



新潮社 「新潮文庫」 
田中圭一、吉村 亮



「『執筆期間12年9ヶ月 定価391円』というコピーが、“おトク感”や、創作の効率は悪いけれど読む価値がある、ということをうまく伝えている。テレビやネットではできない、新聞にしかできないコミュニケーションだと思った」(佐藤氏)
「コピーがいい」(川口氏)




トンボ鉛筆 「TOMBOWの文具のブランド広告 」 
モリタクマ、富田美紀子



「この広告を見てトンボ鉛筆を買うかについては疑問だが、朝日新聞に30段で展開することで企業の誇りになると思う。この作品も役員室に飾るとよさそう」(小山氏)



カルチュア・コンビニエンス・クラブ
「TSUTAYA」動画・音楽レンタルサービスの利用促進
 
窪田浩紀、宇良貴志



「映画タイトルのオリジナルロゴを使っていることが、作品の魅力を上げている。映画それぞれのシズルが感じられる上、タイプの違う映画を組み合わせたことで面白さが増している。小型広告のアイデアっぽいが、15段でやることで強さが出ると思う」(児島氏)




トンボ鉛筆 「TOMBOWの文具のブランド広告 」 
大久保里美、松實良知、鈴木孝彰、黒田輝海、吉崎千佐子



「鉛筆に添えられた言葉を、つい一つひとつチェックした。鉛筆と持ち主の関係性がうかがえ、“トンボ採集”が、“人間採集”にもなっている。ただ、『ムシャクシャトンボ』『タイセツトンボ』などは良かったが、『イチネンセイトンボ』『ミンナのトンボ』などはわりと普通で、全部が個性的な“人間採集”になっていたらもっと良かった」(児島氏)




ハインツ日本 「ハインツ トマトケチャップ」
 清水龍之介、葛西亜理沙





















「ポップアートの巨匠・ロイ・リキテンスタインの作品をモチーフにする感覚はなかなかすごい。赤い網点は、よく見るとケチャップ。この広告が実際に掲載されたらある意味時代を変えるのではないかと思う」(浅葉氏)




トンボ鉛筆 「TOMBOWの文具のブランド広告」 
 豊田丈典、橋本 暦



「素朴なタッチでコピーを書いたことで、コピーが生きた」(前田氏)
「『神様がフリーハンドで描いたから、世界は面白くなった』というコピーはいいが、“フリーハンド”を表現した絵がもう一歩」(浅葉氏)

 

小型広告賞



高橋酒造
「日本を代表する素材「米」を原料とした「しろ」の魅力を表現する」
 
姉崎真歩、遠藤生萌



カルチュア・コンビニエンス・クラブ
「TSUTAYA」動画・音楽レンタルサービスの利用促進
 野中優介、橋本祥平、山本絵理香、加藤直人、篠崎舞子

審査委員賞(イラストレーション賞)



丸美屋食品工業 「のりたま」 
北山和徳



資生堂 「HAKUメラノフォーカスCR」
 白川温未





審査のポイント

「朝日広告賞は新人クリエーターの登竜門的な意味合いがあると思うが、『とはいえ、この表現を出稿した結果、売れるか』という視点を持って審査した」(佐藤尚之氏)
「新聞広告を、『企業が誇りを持てる装置』と位置づけて審査した」(小山薫堂氏)
「次回応募する人たちが、『こういう考え方もアリなんだ』と思えるような、いい呼び水になるような表現に票を投じたい」(児島令子氏)
など、多様な意見が上がった。


総評

「例年、プロにはできない大胆さや斬新さ、実際の広告ではできない表現のジャンプ力などを審査基準にしているが、今年はそれに該当するものがあまりなく、イラスト表現に少し見られた程度だった」(タナカ氏)
「飛び抜けた秀作はなかったが、イラストの力作やコピーの力作など、部分的にいいなと感じられるものがあった」(葛西氏)
「今年は昨年に比べてコピーに優れた作品が上位に残った印象。次回の応募者に『新しい表現の提示』を求めているが、どこか常軌を逸したものや、ブラックなものでないと、なかなかその域に飛べないのかなと、ここ数年の審査を通して感じている」(川口氏)
「最高賞の作品は、審査委員全員が気になって、これをどう評価したらいいだろうとかなり長く議論した。『気になって仕方がない作品』ということでは新しさがあったのではないか」(副田氏)
といった意見が聞かれた。

 

広告主参加の部 朝日広告賞・準朝日広告賞

「広告主参加の部」の中間講評では、1点の作品に審査委員の評価が集中。結果、Appleのシリーズ広告が最高賞に輝いた。

朝日広告賞

AppleWorld Gallery 4点シリーズ
(企画・制作:TBWA Media Arts Lab)

2015年3月2日付 朝刊 全30段 2015年3月9日付 朝刊 全30段
2015年3月16日付 朝刊 全30段 2015年3月23日付 朝刊 全30段
「“平熱感”がよかった。これからの報道写真がどうなるのかという議論も含めて静かな波紋を呼んでいる広告だと思う」(原研哉氏)
「新聞をめくってこの紙面に出合い、グッときた人は多かったと思う」(前田知巳氏)
「『iPhone6で撮影』という言葉がすべてを語っている。ビッグフォトは非常にオーソドックスでベーシック。その根底にヒューマンな匂いが 漂っているところが何ともいえない。デジタルの最先端にいるiPhoneが新聞広告というアナログの紙メディアで十分に効果を発揮した」(中島祥文氏)
「スマホは都会で使ったり、近い距離で友達同士を写したりというイメージがあるが、旅してみたくなるような場所や、大自然の中で撮った写真を展開しているところに“抜け感”があって、すごくシャレている」(タナカノリユキ氏)
「スマートフォンなのに写真にフォーカスしてキャンペーンを組み、ウェブサイトや街のビルボードでも写真が見られるというキャンペーンはもちろんすばらしい。ただ、新聞広告でやる意味があるのだろうかと個人的には思った」(佐藤可士和氏)
「アップルは、『客』ではなく『ユーザー』に向けてメッセージを発信している。『あなたと私たちは同じ場所で物を見ているんですよ』というポジショニング からワールドワイドに今回のような展開をされてしまうと、日本のキャンペーンでは太刀打ちできないという気がする。“してやられている感”があって悔しい が、このキャンペーンは企画も制作物も断トツだった。新聞広告に出すことによって“真打ち登場”的な効果があったと思う」(川口清勝氏)
「圧倒的にすばらしいと思った。このキャンペーンを初めて見たのが新聞広告だったが、キャッチフレーズやコピーの概念を飛び越えた 『iPhone6で撮影』という言葉や、ありそうでなさそうな写真の“中距離感”が新鮮で、30段を目にした時の衝撃はとても大きかった。新しいビジュア ルが出るたびに、何でこういう写真を選んだんだろうと思わされて、自分はスマートフォンはあまり好きではないが、『やられたな』という感じがした」(葛西 薫氏)
「圧倒的に写真がきれいで、『何だろう、この広告は』と思って目を写すと『iPhone6で撮影』とあって、『あっ、なるほど』となる。うまい作りだった」(恩藏直人氏)
「ほとんどの審査委員がこの作品を支持していて、『やっぱいいいものはいいんだな』と思った。何がいいのかと考えると、プロが作り込んでいながら “素人発”のように見せている広告が多い中、そういう匂いがしないからではないか。写真の選び方がリアルで、『自分に近い』と感じさせる。雑誌の大きさだ と普通だったと思うが、新聞30段の大きな紙面で見られたのはとてもよかった」(大宮エリー氏)
「『新聞でどこまで世の中を変えられるか』という視点でいうと、すばらしいキャンペーンだと思う。ただ、写真としていいのは鹿の写真だけで、他については、もっといい写真が撮れたのではないかと思った」(浅葉克己氏)

準朝日広告賞


東日本旅客鉄道ウフフ!北陸新幹線
(企画:電通、dof、Hotchkiss 制作:Hotchkiss)
2015年3月14日付 朝刊 全15段





「ウフフ!ほ~くりくしんかんせん♪」というテレビCMの歌のトーンを新聞広告にサラッと入れ込んでいる感じ、力が抜けている感じがいい」(原氏)
「人の気配を感じさせるイラストが北陸の楽しさを伝えている」(中島氏) 「北陸新幹線開通のニュースがテレビで絶えず流れていた日にこの紙面を見て、びっくりした。ニュースでは新幹線の映像が映し出されていたが、新聞広告はイラストのみ。その思い切りの良さとニュースとの兼ね合いがとてもよくて、新鮮に感じた」(佐藤氏)
「タレントを起用したディスティネーションキャンペーンと、イラスト表現による開業告知キャンペーンの使い分けが秀逸なキャンペーンだった」(川口氏)




パルコPARCOシーズンキャンペーン Lily, from Solstice to Solstice 2点シリーズ
(企画:パルコ 制作:アールシーケーティー、ロケットカンパニー)
2014年10月7日付 朝刊 全15段 2015年3月31日付 朝刊 全15段
「得体(えたい)の知れないビジュアルが記憶に残る。昔のいい時代のパルコを思い出させる」(タナカ氏)
「フランスで人気のある『M/M(Paris)』という2人組のアーティストを起用したキャンペーンに、パルコの新しい動きを感じる。新聞広告にもそれが反映されたのがうれしい」(浅葉氏)




資生堂企業
(企画:資生堂 宣伝・デザイン部、博報堂ケトル、ナカハタ 制作:博報堂)
2015年1月1日付 朝刊 全15段





「制作のトライの仕方がとても面白いと思った。レディー・ガガのセルフィー(自分撮り)の1/50という切り口も良かった」(中島氏)
「今までの資生堂にない巨大なロゴとレディー・ガガのセルフィーの組み合わせは、どこか暴力的な感じがしないでもないし、キャンペーンの仕組みは自分の好みではないが、インパクトはあったと思う」(葛西氏)

 

広告主参加の部 各部門賞作品

くらし部門賞


ルイ・ヴィトン ジャパンルイ・ヴィトン “Celebrating Monogram”キャンペーン
(企画・制作:Louis Vuitton Malletier)
2014年11月14日付 朝刊 全30段

食品・飲料部門賞

味の素和・洋 調味料群
(企画:電通 制作:電通、たき工房、トーン・アップ、ONE TONE、レブロン)
2015年3月21日付 朝刊 全30段

出版部門賞

講談社元旦広告 「その言葉から、物語がはじまる。」3点シリーズ
(企画:講談社 制作:NEWSY、博報堂)
2015年1月1日付 朝刊 全15段
東京本社版
2015年1月1日付 朝刊 全15段
大阪本社版
2015年1月1日付 朝刊 全15段
西部本社版

電機・情報通信部門賞

パナソニックTechnics
(企画:パナソニック 制作:クリエイターズグループMAC)
2015年3月26日付 朝刊 全30段

不動産・金融部門賞

森ビル森ビル 2015企業広告 Hello, Mirai Tokyo ! 2015
(企画:電通 制作:サン・アド)
2015年1月5日付 朝刊 全15段

自動車関連部門賞

ダイハツ工業COPEN
(企画:博報堂コンサルティング、博報堂、FUTURETEXT、サン・アド 制作:サン・アド)
2014年6月20日付 朝刊 パノラマワイド

教育・公共部門賞

近畿大学超近大プロジェクト
(企画:近畿大学 広報部 制作:博報堂 関西支社)
2014年7月31日付 朝刊 全15段

エネルギー・産業部門賞

JX日鉱日石エネルギー企業広告 「聖火はいつも、未来を照らす。」
(企画:電通 制作:電通、T-FOX)
2015年3月27日付 朝刊 全30段

運輸・サービス部門賞

全国都道府県及び20指定都市換金忘れ防止広告
(企画:東京アドエージェンシー 制作:A・C・O)
2014年12月14日付 朝刊 全5段

流通・エンターテインメント部門賞

カルチュア・コンビニエンス・クラブ蔦屋書店 人材募集広告 「急募。」
(企画:カルチュア・コンビニエンス・クラブ 制作:渡辺潤平社、博報堂)
2014年9月17日付 朝刊 全15段

 

広告主参加の部 朝日新聞特別賞・小型広告賞

朝日新聞特別賞

シャボン玉石けん企業広告「無添加石けんの製造・販売40周年記念広告」 2点シリーズ
(企画:シャボン玉石けん 制作:BBDO J WEST、案)
2014年6月10日付 朝刊 全30段 2014年6月23日付 朝刊 全15段


アウディ ジャパンブランドキャンペーン 2点シリーズ
(企画:電通 制作:電通クリエーティブX)
2014年5月28日付 朝刊 全15段 2014年6月15日付 朝刊 全15段


大和ハウス工業共創共生「萩市・伝える」編 元旦広告
(企画:インターブランドジャパン、サン・アド 制作:サン・アド)
2015年1月1日付 朝刊 全15段


全国共済農業協同組合連合会「いい将来月間」
(企画:電通 制作:朝日新聞社広告局)
2014年11月1日付 朝刊 全7段 2014年11月11日付 朝刊 全15段 2014年11月30日付 朝刊 全15段

小型広告賞

ナブテスコ1コマ ナブテスコ 46点シリーズ
(企画・制作:朝日新聞社)
2014年8月12日付
朝刊 小型
2014年8月13日付
朝刊 小型
2014年8月14日付
朝刊 小型
2014年8月15日付
朝刊 小型
■「1コマナブテスコ」一覧表はこちらです

神奈川県歯科医師会啓発広告「あなたの歯、大丈夫?」シリーズ 12点シリーズ
(企画:神奈川県歯科医師会、朝日広告社 横浜営業部
制作:朝日広告社 横浜営業部、スコール)
2014年4月20日付
朝刊 小型
2014年5月18日付
朝刊 小型
2014年6月3日付
朝刊 小型
2014年7月20日付
朝刊 小型
■「あなたの歯、大丈夫?」一覧表はこちらです
その他の掲載日はこちらです
2014年 8月16日付 朝刊 小型 2014年 9月21日付 朝刊 小型
2014年10月19日付 朝刊 小型 2014年11月 8日付 朝刊 小型
2014年12月21日付 朝刊 小型 2015年 1月18日付 朝刊 小型
2015年 2月15日付 朝刊 小型 2015年 3月15日付 朝刊 小型


審査委員

一般公募の部
  • 浅葉克己、葛西 薫、川口清勝、副田高行、タナカノリユキ、前田知巳
    上田義彦、児島令子、小山薫堂、佐々木 宏、佐藤尚之、森本千絵、竹内圭介
広告主参加の部
  • 浅葉克己、葛西 薫、川口清勝、副田高行、タナカノリユキ、前田知巳
    大宮エリー、恩藏直人、佐藤可士和、中島祥文、原 研哉、阿部 毅、竹内圭介
    (順不同・敬称略)



インタビュー・講評

メッセージを伝えるための場を5年間ずっと探していた一般公募の部 グランプリ Imaginarium(イマジナリウム) 代表取締役・アートディレクター 時田侑季氏


時田侑季氏
時田侑季氏
2014年度 第63回 朝日広告賞「一般公募の部」のグランプリは、KADOKAWAの課題「角川文庫」を制作したアートディレクターの時田侑季さんが受賞した。時田さんは、クリエーティブ会社のImaginarium(イマジナリウム)を経営し、企業ブランディングのプランニングやデザインワークを行っている。
「スタッフは私ひとりの小さな会社で、取引先も小さな会社がほとんどです。外部スタッフと連携しながら、広告全般のコンセプトメーキング、紙媒体やウェブコンテンツの制作、企業CIの開発などを行っています。必要な時は、私が記事やコピーを書くこともあります」。
朝日広告賞への応募は初めて。コンペへの応募自体も初めてだったという。今回応募に至ったのは、5年前に一目ぼれし、パソコンに保存しておいた写真を「新聞広告なら生かせるかも」と思ったからだそうだ。
「フォトグラファーの友人が日常的に彼女の祖母の写真を記録していて、見せてもらった中に今回使った写真がありました。一見様子のおかしなそのたたずまいのただならぬ生命力というか、逆に破壊力というか、形容しがたい不思議な魅力に興奮し、『何かはわからないけれど、とにかく何かに使わせてほしい』とお願いしたんです」
友人が撮った写真は、日常を切り取ったスナップ写真もあれば、演出したものもあった。時田さんが引きつけられたのは、友人が実家の裏にある物置の前に祖母を立たせて撮影した写真だ。
「写真を見た時、漠然とはしていましたが、私の中には、伝えたいメッセージ、作りたいメッセージが確かにありました。しかし、通常の仕事においてはそれを形にできそうな案件も依頼もなく、月日が過ぎていきました。そんなある日、朝日広告賞の募集告知をネット上で見つけて、『新聞広告なら面白い』と直感しました。新聞のザラッとした質感にあの写真が載ったら面白いと思ったのです。実はそう思ったのは昨年でしたが、目の前の仕事に忙殺される中で締め切りが過ぎてしまい、『今年こそ』と思っていました。今年も日々の仕事が忙しく、応募をあきらめかけたのですが、締め切り直前に何か虫の知らせのようなものがあって、制作に取りかかりました」

おばあさんは、目に見える世界と目に見えない世界をつなぐ媒介


作品の制作にかけられる時間は、正味半日しかなかった。課題をざっと見渡し、角川文庫に決めた。
「出版の世界は、児童文学、純文学、SF、歴史、趣味・実用、ゴシップなど、扱うテーマが幅広く、そのぶん自由に遊べるのではないかと考えました。数ある出版社の中からKADOKAWAを選んだのは、『革新的なことに取り組む会社』というイメージがあったからです。被写体はおばあさんでも、高齢者を意識したメッセージにするつもりはなく、むしろあの写真には本質的でトガッたメッセージを届ける力があると感じていたので、KADOKAWAがふさわしいと思いました」
クライアントから依頼を受け、課題解決のための道筋を考え、アウトプットに至るという通常の仕事の流れとは異なるアプローチだったと、時田さんは振り返る。「目に見えるものだけが、世界のすべてではない。」というコピーは、時田さんが考えた。課題をKADOKAWAに決めた時、このコピーが自然に「降ってきた」そうだ。
「作品に込めた思いの一つは、『既成概念や常識を疑え』ということ。人は、自分の物差しで測れるものがすべてだと思いがちですが、実際は物差しで測れないことのほうが多く、それを知るための最強のツールが本である、というメッセージです。もう一つは、『目に見えない世界がある』ということ。パワースポットブームに象徴される、人知を超えた世界への関心の高まりが昨今あって、非言語の領域を扱ったビジネス書などが売れています。そうしたことの価値を伝えたいと考えました。KADOKAWAの課題と出合ったことで、おばあさんの存在が、目に見える世界と目に見えない世界をつなぐ媒介というか、アイコンというか、そういうものになったような気がします」

固定的なイメージを打ち出さず、受け手の想像力に委ねた



審査会では、「実際に新聞広告として掲載されたら、読者はどう理解するだろうか。難解すぎないか」という意見もあった。新聞広告で展開されることをどのように想定していたのだろう。
「固定的なイメージを打ち出さず、受け手の想像力に委ねたいと思っていました」
半日間という短い制作時間ではあったが、立ち止まって悩んだこともあったという。
「実は、気になる写真がもう1点ありました。おばあさんの手にホースはなく、ただじっと斜め上を見据えている写真で、まさに見えない世界を感じさせるようなたたずまいでした。最後まで迷いましたが、ビジュアル的に強いと感じたほうを選びました。また、もう一つ悩んだのは、空の色です。晴れた空色にしたら映えるのではないかと一瞬考えましたが、曇天のほうがコピーが伝わりやすいと思い、そうしました」
受賞の連絡を受けた時、「腰を抜かしそうだった」と時田さんは笑う。
「応募後に初めて、どうやら若手クリエーターの登竜門らしいと知って、若い時期をとうに過ぎた自分などが参加してしまって大丈夫だったのだろうかと恐縮していたところ、グランプリをいただくことになり、びっくり仰天しました。自分の無精者気質を考えると、受賞したことと同じくらい、応募までたどり着けたことが奇跡のようでしたが、今思えば、メッセージを伝えるための場を5年間ずっと探していたような気がします」
作品の被写体となった友人の祖母は、1年半前に89歳で亡くなったそうだ。写真を提供した時田さんの友人は、受賞の報告を受けて「あの写真が?」と驚き、「亡くなったおばあちゃんが浮かばれる」と返事をくれたという。
最後に、今後の抱負について、時田さんにたずねた。
「今回のクリエーティブワークは、何の制約も受けず、作りたいものを100%出し切ったものでした。それを評価していただけたのは何よりの収穫。というのも、以前、感性のかたまりみたいな経営者の方と一緒に仕事をした時に、感性を信じる仕事っていいな、もっとそういう仕事を増やしていきたいなと実感したことがあったんです。受賞を糧に、自分の感性を信じて新しいステージを目指していきたいと思います」
時田侑季(ときた・ゆき)Imaginarium(イマジナリウム) 代表取締役・アートディレクター
フリーランスのデザイナーとして活動後、2008年株式会社Imaginarium(イマジナリウム)を設立。 代表取締役・アートディレクター・デザイナー。



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