火曜日, 12月 05, 2017

東京モーターショー

 
HONDA、EVスポーツ・コンセプト

ついに「色気」を放ち出した日本のコンセプトカー


第45回となる今年の東京モーターショーは、いつもと違っていた。2年に一度開催されるこのショーは、新しい技術、 次期スポーツカー、奇妙なセンスでアニメ風なコンセプトカーが際立つことで知られている。それに実は、そういったアニメっぽいコンセプトカーを見るために訪れる海外のジャーナリストも、少なくない。

ところが、今年はどうも違っている。一般公開に先駆けたプレスデイの初日、会場となる東京ビッグサイトを11km歩き回って分かったのは、日本のカーメーカーがデザインを重視するときが、ついにやって来たということだった。「デザインがよくなれば、日本車はもっと人気がでる」と言い続けてきた僕としては、やっとそのときが来たかと気分が上がる。

各メーカーが、将来のデザインにセクシーさを注入し始めたことを確信した。いや、どのメーカーも、電気自動車(EV)、自動運転、人工知能、つながる化に対しての姿勢を見せているのは、もちろんだけどね。

だが、やはり目につくのは、そういう自動運転などのテクノロジーの面ではなくデザインだった。つまり、どのメーカーにも明らかに、デザイナーたちに外観をもっと楽しく、セクシーで視線を奪うスタイルに挑戦させる余裕が見られる。ただ、この1年間ずっとウワサされていたトヨタ・スープラの後継車や、新しい日産フェアレディ、あるいはマツダのロータリー・クーペの、より市販車に近づいたコンセプトなどは登場しなかった。

2017年東京モーターショーで、デザイン競争をリードするのはマツダだ。同社がかかげるデザイン言語「Kodo」に加え、目を惹き付けられたのは、ヴィジョン・クーペだ。その息を飲むゴージャスさが脚光を浴びている。「これはもしかして世界一美しいセダンかもしれない」と同業のドイツ人が言った。エンジンについては何も語られていないが……。日本で一番かっこいいクルマのラインナップをそろえるマツダだが、このコンセプトでさらにスケールアップしている。


マツダのヴィジョン・クーペ

この流れは、うれしいことにスバルにも見られる。ヴィジブ パーフォーマンス・コンセプトは、スバル史上かつてなく美しいコンセプト車だと僕は思った。こちらも、エンジンについての詳細は「スバル特有のボクサーエンジンと4WD、さらにアイサイトの安全技術の進化版はつくだろう」との曖昧な表現しか出してない。

なぜだろうか? 世界中の自動車業界は、昨年からEVに大きく舵を切っている。が、将来どのパワートレーンを採用するかについては、明確にしないことによって、考える時間を取っているのだと考えた。おそらく電気だとしても。




スバルのヴィジブ

ヴィジブは目をとらえる美しい4ドアのスポーツ・セダンだ。三次元のグリルから、鷹の目の形をしたヘッドライド、筋肉的なふくらみを見せるリアのブリスターフェンダーまで、どれも力強く鋭く見える。そして、次世代WRXがどんなデザインになるのか、そのヒントをはっきりと巧みに示しているように感じた。これからの10年、BRZ以外のスバル車に用いられることになるグローバル・プラットフォームをヴィジブも採用する。

ホンダのEVスポーツ・コンセプトも、セックスアピールをたっぷり取り戻した。フランクフルト・モーターショーで披露されたアーバンEVコンセプトを基本とするEVスポーツは、車高が低く、流れるような後輪駆動プロポーションで、しかも低重心のデザインは、ドライブがごきげんになる楽しさを約束している。

僕としてはシンプルさ、レロト感、スポーティさと未来感というコンビネーションが気に入った。でもなにより新鮮なのは、ホンダが再びデザインにセクシーさを取り入れようとしていることだ。このクーペもやはりパワートレインはEVということ以外、詳しいことは言っていない。

トヨタ、コンセプトi


トヨタでは、ハイブリッドのGR HVスポーツ・コンセプトがブースの主役になるだろうと思っていたけど、「愛」を伝えるコンセプトが目を奪った。ステージ中央には、 AI搭載でハサミのようなガルウィング・ドアを持つ「コンセプトi」が完全に主役だった。

4人乗りのEV「コンセプトi」には、ドライバーの気持ちを読み取るディープラーニング技術が備わっている。そう、あなたの呼吸の速さ、話し方のパターンと眼の動きを読んだソフトは、あなたが運転することにどれぐらい集中しているか、道路状況をどれくらい把握しているかを教え、またあなたが何をしたいかを読み取ってくれる。

「i」という文字は英語圏の人には、インテリジェントを意味するが、日本人は「i」と言うとうれしいことに「愛」という文字も連想する。だから、僕は外国のプレスに伝える際に、この車を「ラブカー」と名付けた。あなたのことが好きで、理解してくれるクルマが実現すれば、それこそ「究極のクルマとは愛だ」という、壮大な構想だ。

さて、レクサスもセンターステージにはスタイリッシュなLS+コンセプトを配した。同社の有名なスピンドルグリルのことを最初は「好きな人は好きだろう」と思っていたけれど、ついにLC500から形を整えて来てると今では僕も考えている。LS+のスピンドル・グリルもさらに進化し、自動開閉する大型グリルシャッターが、冷却と空力性能を実現する。これらのものづくりは素晴らしい。


レクサス、LS+

しかも、このおしゃれな4ドアのセダンは、交通事故の犠牲者がゼロの世界を目指している。高速道路の入口から出口まで自動運転で走行し、クルマの流れへの合流や分岐ができて、レーン変更やレーンキープ、前のクルマとの車間距離を保つ機能などが搭載される。AIによる高性能な自動運転を2020年までに実用化することを目指している。

どのカーメーカーも、EVと自動運転の技術にスポットライトを当てているとは言え、「モーターの先へ」をテーマとする今回のモーターショーを息づかせるのは、セクシーな曲線を用いたデザインだ。それは日本の自動車業界の未来をも輝かせるだろう。





Peter Lion