火曜日, 4月 28, 2015

5LACK|INTERVIEW

5LACK『夢から覚め。』インタビュー

どの世界でも牽引する者は他者との比較対象や批評の的にされるのが常だ。自ら望まなくとも5lackは、デビュー間もない頃からその存在でいることを宿命づけられた日本のヒップホップシーンにおける数少ない男である。その中でも5lackはこれまでも言わないことよりも言うことのリスクを承知の上で恐れず言葉にし続けてきた。

キラーボングは5lackをこう称す。「あいつは本当にタフな男だよ」。


アルバムリリース前に行われたこのインタビューでは、本人の意向により7分のティーザー音源のみが渡された。したがって作品の全貌について事細かく聞くことはできていない。しかしそのティーザーを繰り返し聴く中で浮かび上がってきたのは、時の経過と共に移り行く環境と人間関係を経て、再びフラットになった姿だった。過去を振り返ることで未来を見通し、そして理想と現実を自問自答し続けた今作『夢から覚め。』。5lackは今何を想う。

 
Pics&Text:yaminoni



 


TROY:まずは2月27日に代官山UNITであったイベント”Diagonal”でのライヴの話から聞ければと思うんだけど、ソロライブって去年の秋の渋谷clubasiaでの”EL NINO”以来だよね。あの時はpunpeeとの2人名義だったけど。

5LACK:今回もあいつにかなりやってもらったんで、基本は前回のノリに近いっすね。

TROY:兄貴には5LACKから声をかけたの?

5LACK:そうっすね。ここはこうしたいとか一緒にスタジオ入って。あいつは盛り上げるのが上手いっていうか、そういうのをしたがる感じで。俺が作るとわかりづらくしてやろうとか企んじゃうんで。今回は他のメンツも凄いし、兄貴向いてるだろうなって思って。

TROY:へぇ。事前にしっかり構成を組み立ててたんだ。

5LACK:とはいえ、実際には酔っ払ったりするとちょっと変わっちゃいますけど。一曲忘れてたりとか。

TROY:(笑)。前だったらその場のノリを重視するために、スタジオに入って作り込むことをあえてしていなかったと思うんだけど。

5LACK:結構ちゃんとするようになりましたね。大人になったというか、みんなと寄り添えるっつうか、聴いてくれるヤツがいるっていう自覚をそろそろ少しはしないと。しないとっていうかしてみて。まぁ、いろいろやってみてるっすね。

TROY:PSGも「サマーシンフォニー」もやったりで、こんな言われ方は好きじゃないかもしれないけど、これまでのベストみたいなセットだったよね。

5LACK:俺もそんな風に言ってましたね。

TROY:それって今までだったらあえて避けそうなところっていうか。

5LACK:そうっすね。それこそ昔はわかりづらくしたり今できる最新をやりたがったんですけど、今はわかりやすくっつうか。いっぱいアルバムを出してみんなが知ってる曲も増えたんで。PVがある曲だけを並べても時間使えるし。

TROY:凄い盛り上がりだったけど、自分の手応えとしてはどうだった?

5LACK:よかったっす。だし、自分が完全に作った構成じゃないからやっててもちょっと他人のに参加してるようなセッション感があったし。

TROY:この間出てたSALUとかKOHHとか、自分より年下のラッパーたちの…
5LACK:SALUはタメだと思うんすよね。

TROY:あ、そうなんだ。

5LACK:意外とタメで。

TROY:あの辺のラッパーのこともチェックしてたりする?

5LACK:チェックっていうか嫌でも目に入るくらい目立ってますし。B.Lくんがトラック作ってるし、318君とも昔から遊んでたし、その流れでなんとなく繋がりもあったし。

TROY:音源とかも聴いてるんだ。

5LACK:日本語ラップでいいヤツいねぇのかなっていうのはちょっとは期待してるんで。

TROY:ちなみに誰かおもしろいなって思うヤツはいる?

5LACK:スタイルとか自分の好みとかは別にして、見てる側としては表で頑張ってる人は応援したくなるっていうか。そういう点では上手くいかないヤツが多い中、KOHH君とかANARCHY君みたいな人たちはやってるなって。あとFLA$HBACKSもカッコイイ。若いからこれからやらなきゃいけないことがいっぱいあって大変だろうなって思いますけど。

TROY:ほうほう。

5LACK:Kボン君とよく環境について話をするんすけど、あの人は若い頃、みんな年上で自分が一番年下って環境でやっててその中でも凄い目立ってて。俺もどこ行っても年下だったんで。もちろん先輩に良くされることもあるとは思うんすけど、そうじゃなくて自分で壊していかなきゃいけなかったっていうのがあるんで、そういう宿命が待ってるんだろうなとか思うとなんか応援しちゃいますね。

TROY:そういった新しい世代がここ2、3年で急に出てきて、日本のヒップホップもおもしろくなってきたなって個人的には思っているんだけど5lackもそう思う部分はある?

5LACK:本当にガチで言いたいこと言えって言われたら思うことは全然あるし欠点もいっぱいだと思うけど、自然に流れていくしかないから。ダメになるものはダメになるしモノがよければちゃんと残っていくし。

TROY:確かにね。ただ、少なからず新しい人たちが常に出てきて新陳代謝されてるっていうのは先があるのかなって。

5LACK:俺が出てきた時にラップ始めたヤツらでももう4、5年経つから。

TROY:
実際、すでに5lackを聴いてラップ始めましたって言う人も結構いるよね。

5LACK:いますね。最初ファンっていうか客で来てたヤツがデビューしたとか。OTOGIBANASHI’Sのbimとかもそうっすね。それよりもっと子供の子たちはさらにスキルつけるだろうし、どうなっていくのかなって。ただ、日本のシーンって一個の流行りにみんな寄っていくんすよ、何個もあるんじゃなくて。しかも流行ってることもわからずに乗っかってたりとかも結構ある。

TROY:それってアーティストだけじゃなくリスナーにも言えることだよね。じゃあ、そろそろアルバムのことについて聞いていければと思うんだけど…って言っても7分のティーザーしか聴いてないんでそこから汲み取ったものになるんだけど(笑)。まずイントロで「周りも上手くやってるみたい」って言ってるけど、それは5lack自身にも言えることで、生きていく上での問題を背負いながらも上手くやっていくことに慣れたのかなって。

5LACK:というか責任意識とか、「俺にはもっとできることがある」「変えれるものがある」って頑張ってた時期がちょっと前にあって。でもそれに対してちょっと挫折っていうか、上手くいかなくて、それにトライするのをやめたんですよ。そしたら意外と落ち着いて見れるようになった気がしてて。良い意味で適当にまた一周した感じで。

TROY:その適当さと、そうではないリリックのバランスが今作は凄くいいのかなって。

5LACK:単純に音楽アルバムとして聴いて欲しくて。音楽のモノとしては絶対に自信があるものを作ってるんで。今回ははっきりいってシーンのこととか、誰がいてとか、他人の様子はガン無視ですね。

TROY:フィーチャリングも一切ないし、トラックも2曲以外すべて自分でやってるしね。とはいえ、Kボンとオリーブオイルがプロデュースした2曲はアルバムの最初と最後に位置する今作にとってかなり重要な曲になってると思うんだけど。

5LACK:そうですね。存在感がありますよね。

TROY:この2人は5LACKの音楽的なこともそうだし、生き方にも大きな影響を与えた2人なのかなって。

5LACK:普通に仲良くなって、しょっちゅう一緒に酒飲んでますね。本当遊び仲間です。かつ、Kさんとは音楽的なセッションをしたことがなかったんで。

TROY:
オフィシャルでは今回が初めてになるけど、音楽のセッションはなかったの?

5LACK:なかったっすね。普通に遊んでましたね。女の話とか(笑)。 このトラックはKさんの事務所に遊びに行った時にかけてくれたやつで、(聴きながら)頭の中でラップしてたら思いついちゃって。ずっと凄いファンだったんですよ。出会った時から一緒に曲をやりたいって思ってたけど声をかけれるところまで気分がきたっていうか、最高のタイミングでやりたかったんで。



TROY:20代も後半になってくると周りの環境も変わっていくじゃない。その中で音楽をやり続けていくっていうことは、一般的な世の中っていうか一般的な人の当たり前とはどんどんかけ離れていくわけじゃん。

5LACK:悲しい。本当っすよね。でも一般的というか心が貧しい人間が今の日本は確実に多いなってのは思いますね。自分だけが良い気分になるためにみんなが奪い合ってて、チームワーク感がまったくないなって。人が困ったとしても自分を肯定するために助けるんじゃなく引きづりおろそうとするようなことをしたりとか、プライドが邪魔をしてカッコイイ人のこともカッコイイって言えなかったり。

TROY:それって音楽のシーンでも言えることだよね。

5LACK:まぁ、どの国でもどこの世界でもあると思うんすけど。

TROY:でも、確かに日本はよりそうなってきてるよね。

5LACK:不景気も絶対影響してますよね。稼がなきゃいけないから、余裕も時間もなくなってるし。そういうことから挫折っつうか考えることをやめて、俺もじゃあ俺のことをやろうっていう感じがさっき言った通りっすね。

TROY:福岡にはもう住んで2年ぐらい?

5LACK:1年過ぎぐらいっすね。

TROY:『5 O』を出したのが2年前ぐらいだけどその後から住み始めた感じだ。

5LACK:出た後に行ったぐらいですね。でも今も月一くらいではこっちに来てるんで、行ったり来たりしてる感じっす。

TROY:結構東京にも来てるんだね。でも生活のベースは福岡なんでしょ。

5LACK:そうっすね。

TROY:福岡の街のどういうところがいいの?

5LACK:ちょうどいいっすね。例えば東京は棘っていうか、そこは刺激だから必要なんすけど、それに対してのデメリットも生じるじゃないですか。人がいっぱいいて動きづらくてとか。そういうのが解消さててて全部の意味でちょうどいい。けど、東京にしか得られないものもかなりいっぱいあるからその辺は使い分けてます。それに飛行機で1時間半とかで着くんで、今までは地元と渋谷だった移動距離を広めたっていうか。

TROY:ちなみに福岡のヒップホップシーンにコミットはしてるの?

5LACK:今のところ何も知らないですね。オリーブさんは凄い尊敬してるんすけどあそこだけの人ではないし。ただ生活してますね。スーパー行って買い物して飯作ってあと曲は家で作るんで、それは東京でもあっちでも変わらないんで。

TROY:じゃあ自分のペースとしては、東京でも福岡でも別に同じようにやってる感じかな。

5LACK:やっぱあっち行くと落ち着きます。東京も地元だから落ち着くとこはあるんすけど。でも、来るとやっぱ東京すげぇなって着いてからの家路まででも思いますね。

TROY:そうなんだ(笑)。それこそ1st出した頃ってスケボーでどこでも行くぜって感じの、刺激はあればあるほどいい超都会っ子ってイメージだったからさ。

5LACK:東京を抜け出して客観的に見ると東京にあるメリットっていうか良かったものがわかるから、そういう点ではプラスっていうかかなり良くて。一回(東京が)住む場所じゃないのか確かめてもいいのかなって。

TROY:とは言っても、月一で東京来たりできてるんだから全然いいよね。

5LACK:そうっすね。飯が美味いとか私生活レベルのメリットがあっちは高くて。東京では一気に仕事して毎晩朝まで飲んで、1週間ぐらいでもう疲れちゃって最後落ち込んできたぐらいに帰る。

STAFF M:何も言わず帰るとかあるよね。

TROY:福岡でゆっくりしている反動があるからだろうね。

5LACK:福岡ではクラブに行かないんでクラブとか行くと、前だったらすぐ帰ろうってなってたけど、もったいなくなっちゃって最後までいるみたいな。

TROY:それは良いね。

5LACK:なんか開き直ったっていうか、自然にもうちょっとやりたいなって。作り込んでカッコつける、そういう年でもないのかなって。

TROY:今回の『夢から覚めて。』ってタイトルなんだけど、ティーザーの中だけでも何度か”時”を連想させる言葉が出てきてたけど、今作はこの”時”がキーワードになっているのかなって。特にタイトル曲の「夢から覚め」は“GOOD MORNING SUNSHINE”って『MY SPACE』の「GOOD MORE」と入りが一緒だよね。「GOOD MORE」は、朝起きたらいつもと変わらない日常が永遠に続く感じがあったと思うんだけど、それに対して「夢から覚め」は、 「起きりゃ現実の始まり/足は止めれない/自分が好きで選んだ道だから/過去には戻れないから」って、時が有限であることへの意識が強く感じられるなって。

5LACK:そういうイメージが最近すげぇあって。年をとってきたのかわかんないけど、結婚するヤツも年齢的に出てきたり、子供ができて遊べなくなるヤツもどんどん増えてくるじゃないですか。そういうことから思うことも凄いあったし。これまでストリートの中にいてやってきたのが考えが変わってOBになったわけじゃないけどちょっと振り返ってみて。その過去の部分が夢でそれから覚めたっていうか 、気づいたっていうか。

TROY:タイトルに繋がるわけだ。俺は前作の『5 SENCE』より今回の方が原点回帰してるなって強く思ったんだけどどうかな。『MY SPACE』との共通点も感じるし。

5LACK:『5 SENCE』で言ってた原点ってのはオーソドックスな90’sスタイルのHIP HOPとしてのベーシックって感じで、その他はテーマ性があるものも作ってましたよね。『この島の上』だったり『5 O』だったり。それに対して『5 SENCE』は普段録って聴いてたものからいいのを取っていって作った、それこそ前のライヴみたいなベスト盤っぽい感じなんすよ。そういう意味で原点回帰っつうかスタートラインにやっと立ったっていうか。だから『MY SPACE』から1周したっていうと確かにこれですね。

TROY:曲は相変わらずデイリーで作り続けてる感じなのかな?

5LACK:前よりはゆっくり作ってますね。前はずっと作ってたしそれがカッコイイと思ってたんすけど今は抜いてますね。これだけの人じゃないっつうか絵も描いてるし。食いぶちっていうか生き方はいっぱいあるから。

TROY:そう思うようになったのはなんでなの?

5LACK:5LACKのラッパーとしてのアイデンティティがみんなに認知される以前の自分は余裕でそういうヤツだったんですよ。バンドやったり、写真もやったし。

TROY:そこから意識的にヒップホップに没頭していたってことだよね。

5LACK:それを楽しんでましたね。ヒップホップを客観的に見つつ、そこにいるカッコイイ奴を自分で通してたし、そういう生活感だったし。でも本当にカッコよくてアンダーグラウンドにいるヤツなのか、ただ上がれないヤツなだけなのか、とかそういう風にも見えてきちゃって。もちろんメジャーで調子に乗ってるヤツは寒いけど、アングラで結局演技して無理してるヤツもファッションだし、そんなのお互い様だよ。っていうことに気づいて。なんか冷静になりましたね。

TROY:ちなみに音作りの機材環境は今はどんな感じなの?

5LACK:なんも変わってないかな。SP404も使うし、なんでも使いますね。

TROY:今回も自分で弾いたりとかもしてるの?

5LACK:少し弾いたりとかもしてると思いますね。でも作ってる過程は決まりごとがあんまないっていうか、説明しづらい。

TROY:そこはあんまり言いたくないところなんだ。

5LACK:いや、どう作ったか記憶にないっていうか。

TROY:その場のテンションで作ってるってことかな。

5LACK:機材とかもこれがいいとか全然わかんなくて。でも機材じゃなくてスキルをつけることには凄い興味があってずっとやってたんで、もうクソな機材でも絶対カッコよくできますね。っていう感じです。実は今回のトラックは『MY SPACE』の時期に作ったものをちょっといじって使ったりしてるんすよ。なんで昔の自分とセッションしたみたいな感じもしていて。でもラップのスキルは完全に上がってるからあの頃とは違う捉え方で。

TROY:へぇ、そうだったんだ。アルバムをリリース後のライヴは考えたりしてるの?

5LACK:このアルバムのライブはあんまりしないかもしれないっす。この間みたいなオールスター戦に何曲か入ってくるかって感じですね。これは作品としてこれで完成されてるんでライヴとか待つんじゃなくて、ここで結果をみんなで出してくれ聴いてくれって。

TROY:ここ最近の作品は、基本プロモーションをしないで突然音源を出して、その後の露出もあまりしないっていうスタンスだったと思うんだけど、今までの話からすると今年はおもしろい場があれば積極的に出ていこうって感じかな?

5LACK:ライヴとかあれば全然出るしそんな逃げ腰になってないっすね。昔はこれ以上顔が人に知られたくないって思ってたけど今はもう無理っしょ、今さら遅いでしょみたいな。

TROY:そりゃそうだ(笑)。

5LACK:デカイところでやりたいです。みんなもそういうアクションをトライしてほしい。この間のイベントも内容はいろいろ欠点もあっただろうけど、ああいう出来事を起こさないといけないし、やればやるしかないから。っていう人たちが増えてほしいっすね。



http://troymag.net/5lackinterview-2/


ラップは5lack、曲はSilent Poets。NTTドコモの新CM。