木曜日, 10月 01, 2015

この装丁がすごい!~漫画装丁大賞~2014 【ベスト100+α】

この装丁がすごい!~漫画装丁大賞~2014 【ベスト100+α】

年1回お送りする時間泥棒企画、『この装丁がすごい!~漫画装丁大賞~2014』の発表です。

紹介数ベスト100+α、どうぞご覧ください。


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【第1位】 デッドデッドデーモンズ
             デデデデデストラクション 1巻 / 浅野いにお 


デデデデ


侵略者を乗せた円盤が空に浮かんでいても、毎日はそれほど変わらない、そんな少女×日常×ディストピア作品。

メガネっ娘の顔、そしてクイッという音が聞こえてきそうな仕草だけを最大限大きく見せるイラストの横配置。タイトルと作者名は口のしたあたりに配置されているがとても小さいため、ぱっと見こちらを覗きこむような顔だけ写った表紙に見えるが、手に取ってみると、さらに半透明のロゴが大胆に顔に重なって印刷されていることがわかる。この半透明のロゴの存在感はとても強く、アップイラストのインパクトとロゴのインパクトが同時に存在している。また、可読性を度外視したロゴを使う場合には読ませるためのタイトルも加える物が多く、こちらの表紙の口の下の文字がそれにあたるが、読ませるための文字が米粒ほどの大きさというのもなかなかに大胆、かつ良い位置に配置されていて意外に目立って読みやすい。

表紙をめくるとカラーでドラえもんのオマージュ的な作中作が始まる(画像右上)。目次ページでは半透明のロゴ部分がどういう形になっているか確認できる。半透明のロゴ部分に箔押しを使う案もあったという話だが、結果的に今までにないくらい浅野先生の人物イラストを素直に全面に出した表紙になって良かったと思う。そもそも浅野先生の作品でキャラを大きく配置した表紙が画集寄りの『Ctrl+T』ぐらいだったので、素直な人物イラストの表紙に苦手意識があるのかと興味があったが、その辺のことは『MdN Voi.248』の本作品のデザインについてのインタビュー記事で触れられていた。ちなみに同書では、先生の単行本のデザインはかなりご本人が指定しまうので、デザインを担当している黒木さんに非常に申し訳なく思っているという旨が語られていたが、分担の量はどうあれ、デザイナーが違えば炒飯を作っていたらピラフなるくらいの変化は起こりうると思え、何と言うべきか、いつもおいしい炒飯ありがとうございます。

出版:小学館
装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香

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【第2位】 春風のスネグラチカ / 沙村広明

春風のスネグラチカ

舞台は極寒のロシア。謎多き少女と従者の宿命と歴史のロマンが折り重なる、そんな1冊完結作品。

表紙には、寒空の下で車椅子の少女に眼帯の従者がひざまずき、その手に忠誠のキスを捧げる1シーンが描かれている。横斜めのイラスト配置によって、姿勢の違う二人が大きく表紙に収まり、情報をそぎ落とすことなくその二人の関係性を語っている。加えてイラストの斜めの角度は、縦置きの整ったタイトル文字によって強調されつつ、静かな一枚絵に落ちるような不安定感を与えることで、物語のドラマティックな展開を予感させている。トリミングの威力を感じさせるデザイン、と言いたい。*

出版:太田出版
装丁:内川たくや

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【第3位】 パレードはどこへ行くの? / 鈴木志保

デデデデ

さまざま動物たちが仲良く暮らす、サーカス島の不思議な日々を描いた1冊完結作品。

裏表紙から続く人の腕の上に列をなす愛らしい動物達。カバーには、モノクロに加工された写真が使われている。手は実写で動物達は切り抜き。虚構のキャラを遊ばせた本物の手はまるで創造主のものであるように目に映り、色の無い世界でその指差す方向に動物達が足を踏み出す様は、問いかけるようなタイトルと重なって、儚げで幻想的で、酷く暗示的でもある。その先には何が待っているのか。とても冒険しているデザインで、でもこれしかないと思えた。*

ちなみに、表紙に用いられた手は鈴木先生ご自身のもの。ボニータ編集部のツイートで、撮影の裏側が紹介されている。

出版:秋田書店
装丁:deconeco 小石川ふに,太田虎一郎(撮影)

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【第4位】 せっかち伯爵と時間どろぼう 1~3巻 / 久米田康治

せっかち伯爵と時間どろぼう

時を越えて現れた長帽子の伯爵と、稀代の面倒くさがり屋の少年。せっかち×ゆっくり、時間をテーマにしたギャグ作品。

黒枠と時計盤、影絵ののような人物イラスト。ほぼ白黒で、1巻はオレンジ、2巻はグリーン、3巻はパープルと、アイテム1つと沢山ある数字の中でその巻を示すの文字だけが違う色を付けられている。ギャグ漫画としてスタイリッシュに仕上がりすぎたのか、1巻の後書きには「サブカル気取ってこんな表紙にしたわけではないんです」という作者の弁。インク代削減でたまたますごいオシャレになった、それなら仕方ない。

出版:講談社
装丁:hive 久持正士,金子歩未

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【第5位】 きみが心に棲みついたS 1巻 / 天堂きりん

きみがこころに棲みついたS1

Sacrifice(サクリファイス/生贄)という物騒な英語の頭文字を引っさげて復活を果たした、『Kiss PLUS』(講談社)からの移籍作品。

煌びやかなホールでドレスから艶かしい生足をさらけ出し佇むヒロイン。窓の外からは、王子様や森の動物達が冷たい視線を投げかける、そんなイラスト。文字情報はイラストの外に散りばめられ、所々が涙の跡のように滲んでいる。

無印版のメルヘンで可愛らしい絵本のようなデザインによってオブラートに包まれていた作品の悪意成分がむき出しにされて、美しくシリアスな衣替えとなった。彼女の未来は、今だ明るくない(もちろん良い意味で)。

出版:祥伝社
装丁:コードデザインスタジオ

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【第6位】 All You Need Is Kill 全2巻

/ 桜坂洋,竹内良輔,安倍吉俊,小畑健 

All You Need Is Kill

人類が「ギタイ」と呼ばれる化け物との戦争を続けている世界で、初年兵が一日を繰り返すループに巻き込まれて死にながら成長していく、同名のSFサバイバル小説、コミカライズ作品。

同時発売の全2巻で、青と赤の対構造で主人公とヒロインをそれぞれ振り分けた表紙。コミカライズ作品ということで、クレジットすべき名前が4人と多めだが英文タイトルに合わせて名前が全てローマ字表記になっていて、表紙には日本語が一切ない。おかげで複数クレジット配置時によく発生する野暮ったさをまったく感じさせていない。背表紙は日本語で表記されているものの、これはかなり大胆。逆に作者名を見付けづらいというデメリットは発生するかもしれないが、一目で「小畑健」だとわかるバストアップイラストを採用しているので多分まったく問題はない。

ちなみに本作品はヤングジャンプに掲載されていたが、流通やターゲットを想定してか、単行本はジャンプコミックスサイズになっている。しかし、表紙の文字部分や血の後が浮いている加工や、カラー印刷された見返し、幕間に挿入される原作小説の1節が書かれた黒ページなど、こだわり具合は青年コミックのそれだった。

出版:集英社
装丁:ジェニアロイド

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【第7位】 白い本の物語 〔新装版〕 / 重松成美

白い本の物語


父を亡くした少年は、二人の若き職人と出会いによって美しい製本の世界の扉を叩く。「IKKICOMIX rare」レーベル作品の、新装版。

こげ茶色の線で詳細に描かれた本作りの工房の風景。黒い文字の大きなタイトルは3文字、1文字、2文字の独特の分割で目立ちつつも、軽やかなフォントの使用でイラストと調和して落ち着いた雰囲気を出している。カバー全体の色合い、手触りが上品で、「製本」を扱った作品によりふさわしいリニューアルになった。 ちなみにイラストの中で少年が手に持っている本のタイトルは、作者の連載作品『BABEL』になっている。


そんなこんなで、スピリッツの増刊号として生まれながら独自の装丁デザイナー生態系を築き、一味違った本のデザインで楽しませてくれた月刊IKKIが休刊。ありがとうございました。しかしIKKIさんがいなくなると、本企画で紹介したい作品が減ってしまうことは確定的に明らか。これはいったいどうしたものか…。

ヒバナさん「おいすー」

出版:小学館
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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【第8位】 イズモがゆく。 / 新めぐみ

イズモがゆく。

作者の実家で飼われている二頭の犬とのあれこれを語った犬エッセイ作品。

主線が太く、塗りわけがはっきりした白部分が多めのイラストに、読みやすい柔らかなロゴが合わさって、洗練されたシンプルさを感じさせる表紙。
犬⇒犬⇒作者の「最小EXILEのアレ」とでも呼びたい位置をずらした1列の構図で犬の存在感を最大限に引き出しながら、妙に後ろの作者も目立たせる位置取りの絶妙さは、同じイラストを使った背表紙や中扉で、何を見せたいかでイラストのバランスが変えてあることからもよくわかる。

巻末のおまけマンガには関さんも登場していて、このカバーはとんとん拍子に決まっているとか。

出版:小学館
装丁:VOLARE 関善之

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【第9位】 レビウス 1巻 / 中田春彌

レビウス

人体と機械を融合させて戦う「機関拳闘」という格闘技が行われている、スチームパンク的な世界におけるバトル作品。

緻密で硬質なイラストを際出せるオレンジ色の背景色と青色の印刷。このシンプルな構成にマンガらしからぬブランド品のロゴのようなタイトルが載せられて異質な美しさを強調している。世界を視野に捉えるべく、全編=横書き&左開きというグローバルスタイルを採用している、ということで背表紙も左に来ていている。また、表紙のタイトルには振り仮名が付いているが、作者名はローマ字表記のみ。とことんシンプルなデザインになっているが、バランスのためか文 字でCHPER(話数)や掲載誌のURLが載っていたりと、使えるものは有効に活用するという姿勢もうかがえる。

こちらもIKKI掲載作品で、ウルトラジャンプへの移籍が決まっている。

出版:小学館
装丁:gift unfolding casually

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【第10位】 お前ら全員めんどくさい! 1巻 / TOBI

お前ら全員めんどくさい!1

教師×生徒×生徒×生徒の、めんどくさいハーレム作品。

白衣三つ編黒髪メガネ娘のあっかんべーイラスト。イラストの上にはキャラが作中で喋った台詞が描き文字として散りばめられていて、白背景とイラストのシンプルな組み合わせに一味違ったアクセントを加えると共に、そのキャラのめんどくさい個性も紹介していることになる。白系が元々好きなのはあるけれども、最近 そこになにか一手間加えた白+系が自分の中で熱い。

カバー全体の使い方も面白いと思ったポイントで、台詞の描き文字は表紙をめくると見える左の袖にまで続いていて、キャライラストは左の袖、背表紙、裏表紙へとはみ出して広げたときに楽しめる連続性を作りつつ、左の袖は作者自画像とコメント、裏表紙は作中のコマを抜粋して綺麗にレイアウトした作品紹介エリアになっていて、単独でも見栄えが良い。手元にある人は、2巻と合わせてカバー全体を眺めてどういうフォーマットを形成している把握してみると、言いたいことが伝わるかもしれない。

出版:フレックスコミックス
BALCOLONY. []

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【第11位】 夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない
/ 宮崎夏次系 

夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない

人間のあらゆる種類の「さみしさ」を描いた九つの物語が収録された短編集。

灰色で描かれた森、奥には一人の少女。さらに奥は真っ黒に塗りつぶされているが、黒いエリアにはぽつぽつと色とりどりの々が散らばっていて、夜空や宇宙が広がっているようにも感じられる。本記事内の紹介作品の中でも特に印象的な長文タイトルは、大胆に崩れたいびつなフォントで大きく載せられている。このタイトルのデザインに、タイトルのニュアンスや作中の人物に共通する不器用さが感じられると共に、タイトルが表紙を飾るためオ洗練されたオブジェクトとしても有効に機能していると思える。

出版:講談社
装丁:セキネシンイチ制作室

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【第12位】 累 2~4巻 / 松浦だるま

累 2~4巻


昨年の1巻紹介から1年で3冊。1巻で、複数案がある中で大きく顔をクローズアップしたデザインが採用されて改めて良かったと思える。

出版:講談社
装丁:hive 久持正士,土橋聖子

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【第13位】 Q[クー] 1巻 / シヒラ竜也

Q

巨大生物が溢れて多くの都市が廃墟と化した世界で不思議な少女が大暴れする、特撮風SFアクション。

表紙いっぱいに描かれた巨大生物の残骸、その上に乗っかったドーナツの袋と異形の手を持つ少女。少女のイラストは中扉に掲載されているもの(画像右上)と同じものがそのまま小さく載せられていて、暗い部分が多い背景の中、空の白いラインに重なって目立っている。巨大生物を含め背景部分がとても暗いため、何が描かれているのだろうと良く見ようとすると、黒い部分に仕込まれた細かい星のホログラムがキラキラと光る、このホログラムを気づかせる構成が秀逸。また、タイトルの「Q」の文字はキャラの上に配置され、そこから読みや作者名が一列に並んで斜めに伸び、
巻数は「Q」の中に入っている。かなり変わったことをしている気がするが、それが悪目立ちしたり、情報の認識を妨げたりすることはなく、綺麗に収まっているのが地味にすごいと思える。

出版:集英社
装丁:成見紀子

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【第14位】 蟹に誘われて / panpanya

蟹に誘われて

日常と非日常の入り混じった世界に読者を誘う、奇妙でどこか懐かしいお話の集まった短編集。タイトル、風景イラスト、表題作のあらすじと地図。豊富な装飾要素がグレースケールで硬くまとめられていて、それは一見無骨で小難しそうな海外の翻訳本のように見える。しかし、よくよく読んでみるとあらすじが面白おかしいことが書いてあり、タイトルもばかばしいことになってくる、そんなユーモアが仕込まれている。とにかく個性的な著自装の1冊。ちなみに左上には楽園コミックのシンボルマークが赤と白で大きく配置されているが、もはやカニにしか見えなくなってしまった。*

出版:白泉社
装丁:panpanya

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【第15位】 おもちゃの教祖さま 1巻 / 高崎ゆうき

おもちゃの教祖さま 1巻


見た目は子供、実年齢37歳、職業:「永遠教」教祖。ロリババァ新興宗教コメディ。『のじゃロリ&ロリババァ』(←検索して漫画界の懐の深さを知った)と『月刊コミックバース』掲載作品。

人物を横に配置して、その空いたスペースには沢山の文字。文字には黒のほか、銀色も使われている。スペースが足りないというわけでもなく、タイトルの大きな「教祖」の文字に嵌める形で作者名を配置するなど、独特のレイアウトが目を引く。左下には教祖様のありがたい訓言。カバーを全体で見てみるとキャラがエロかっこよくなる。

出版:幻冬舎コミックス
装丁:コードデザインスタジオ

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【第16位】 夜とコンクリート / 町田洋

夜とコンクリート


短編集。

収録作「夜とコンクリート」を表題に使用。紺色のスペースに、白の線画で描かれた建物と黄色の文字、黄色の窓。一般的に通じる意味でのデフォルメと言ってしまうと何となく違うようにも思える、簡略化・抽象化されたビルの立ち並ぶ、無機質なはずの景色が何故かとても優しく見える。

作品内の絵柄が想像しにくいタイプの表紙ということもあって、面白く読めたことが表紙への好感を大きく上げているし、内容が面白いと思えたからこそ紹介したくなった表紙という側面はあるものの、この独特の町並みの造型、それ自体が作者の持ち味を雄弁に語っていると言えるかもしれない。

出版:祥伝社
装丁:坂脇慶

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【第17位】 魔犬 ラヴクラフト傑作集 / 田辺剛

魔犬 ラヴクラフト傑作集


クトゥルフ神話の創始者とも言われるラヴクラフトの傑作をコミカライズした作品集。収録作品は「神殿」「魔犬」「名もなき都」の3編。

イラストは表題作「魔犬」のもので、表紙から裏表紙にかけて、打ち棄てられた廃墟と無残な墓場が広がっている。松明をもった人物は薄い黄色で着色。陰影の強い写実的な背景に重厚感があって、タイトルやボックスに着色された明るい黄色もこれを和らげることなく、毒々しさを加えている。右上の黄色いボックスの情報の英語表記は元の作品の海外らしさを出しているが、このボックスは裏表紙にまで続き、そのままバーコードを配置するエリアになっていて、バーコードもあまり気にならない()。

中のデザインは画像右上がカバー下、右下が中表紙で、どちらも黒色と銀色。装丁も、物語も心が休まるポイントが存在しない硬質な作品。心なしか、本自体も重たいものに感じられる。

出版:KADOKAWA/エンターブレイン
装丁:セキネシンイチ制作室

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【第18位】 賭ケグルイ 1巻 / 河本ほむら,尚村透

賭ケグルイ 1巻


ギャンブルに強いものだけが人間であることを許される、狂気の学園賭博バトル作品。

普段はガンガン系作品として違和感のないすっきりした絵柄の人物達が、感情を露にするときリアルに表情をゆがめる、
そんな顔芸を駆使する作品ということもあり、表紙のイラストも顔芸発動時寄りのリアルタッチで描かれている。
バックの白色によって人物イラストの暗さが強調されていて、その暗さの中で目や爪に挿された赤色が目立つ。
また、さらにカバーにはキャンバス地のような凹凸があり、この凹凸が色の暗い領域での方が白味がかるため、
赤色部分が浮いて光っているという錯覚すら起させる。

ホラーマンガでもないのにそれに近い凄みが作品の狂気を上手く表現していると言えるが、
背表紙単体で見るともはや、普通にホラーマンガのそれになっている気がする。

出版:スクウェア・エニックス
装丁:川谷デザイン

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【第19位】 彼女とカメラと彼女の季節 5巻 / 月子

彼女とカメラと彼女の季節 5巻

キマシTOWER!!!!!!!!!!(感無量)

出版:講談社
装丁:NARTI;S 新上ヒロシ

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【第20位】 おじさんとマシュマロ / 音井れこ丸

おじさんとマシュマロ

マシュマロ大好きおじさんと、マシュマロ大好きおじさんが大好きなOLの、ラブ(未満)オフィスコメディ。Pixiv掲載の大人気シリーズ、フルカラー書籍化作品。

おじさんとOLの周りの無地の部分には、エンボス加工で浮き出たマシュマロが散りばめられている。エンボス加工の部分は無色にも関わらず陰影だけでくっきり目立っていて、マシュマロがとてもマシュマロらしい。加えてカバーの手触りがしっとりとして個性的であり、気がつくとマシュマロ部分を指でなぞっている。

出版:一迅社
装丁:井上則人デザイン事務所 安藤公美

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【第21位】 レストー夫人 / 三島芳治

レストー夫人


毎年二年生の7クラスが「レストー夫人」という同じ演劇を違う台本で上映する学校を舞台にした、とあるクラスの生徒たちの物語。

白とシルバーの上下二色分割構成。文字の置き方が控えめで飾りなく、そのシンプルさで文学作品のような雰囲気を持ちつつ、イラストの目立たせ方はマンガ的と も思え、アオハルレーベルのコミックの中でも異質な静けさを放っていた。人物イラストは、作中から切り取られたものになっているが、実際のシーンでは微笑んでいたものが、表紙に用いられる際には口と共に表情が消された、ニュートラルな状態で用いられて、それが波の無い静謐な空気を形成しているように感じられた。

出版:集英社
装丁 art direction and design:AAA Ddesign
   editorial producer:里見英樹


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【第22位】 月刊すてきな終活 / 小坂俊史

月刊すてきな終活

14歳女子中学生から、78歳無期懲役囚まで。17人の「終活」オムニバス4コマ。

沢山のキャラが、自分の遺影を抱えているイラスト。それぞれのキャラには名前と年齢が添えられている。背景は、大切な人に読んでもらうエンディングノートの1ページになっていて、名前を書くスペースに作者名を配置している。タイトルロゴは、クレヨン描き風。同じように、死を扱った『薄命少女』(装丁:里見英樹)が自分の遺影を自分で持たせるデザインになっていたが、あちらはブラックユーモア寄りでこちらは前向きなニュアンスが強い。とは言いつつも、中扉の方は遺影がずらっと並んでいてブラックなインパクトがあり、こちらが表紙になっていたら手に取っていたかと想像してみるとちょっと面白い。ちなみに奥付も遺影風にデザインされている()。

出版:竹書房
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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【第23位】 いぬやしき 1・2巻 / 奥浩哉

いぬやしき

『GANTZ』の次の作品。そのタイトルが『いぬやしき』で表紙にはおじいさんの笑顔。あらすじを見ていなかったこともあり、ネットで書影を見て「大量の犬を一軒家で買う無責任な老人の話」なのかと明後日の方向に妄想を膨らませたが、実物を手に取った瞬間、全体に浮かび上がった細かい球体状のホログラムがその雰囲気を大きく変えて、妄想が間違っているであろうことを瞬時に悟った。ホログラムが手前で浮き出て見えて、何気に不思議な表紙に仕上がっている。

出版:講談社
装丁:hive 久持正士,土橋聖子

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【第24位】 恋は光 1巻 / 秋★枝

恋は光_1

特定の条件を持つ女性の周りに煌く「恋の光」が見える男性の能力を軸にした、キャンパスライフ・ラブストーリー。

白と銀色の二色で構成された大学構内の風景が一面に広がったカバー。そこに表紙に描かれたヒロインを含め、メインキャラクターだけを色づけして目立たせている。ヒロインの周りやタイトル部分には同じ形の光。さらに、本の角度を変えると一部分がパールのように光を反射する()。その光がささやかで上品。そして作者名に入った「★」がもっとも良く馴染んでいるカバーになっているかもしれない。

ちなみに、主人公が見える光は裏表紙のあらすじで「恋の光」と呼ばれているが、作中ではっきりと「恋をしている女性の周りに見える」
と解明されているわけではないので上の紹介文が回りくどい言い方になったが、そういうところを踏まえて続く2巻の表紙がまた面白いことになっていた。

出版:集英社
装丁:GENI A LOIDE 堀井奈々子

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【第25位】 ギリギリアウト 1巻 / ソウマトウ

ギリギリアウト1


ヒロインが尿意と戦い、そして黒星を重ねるおもらしラブコメ作品。

発売されたのが2014年1月下旬で、3月発売のウルトラジャンプに掲載されるコラムの候補として、『せっかち伯爵と時間どろぼう』『レビウス』と共に挙げていたのがこの作品。しかし、3作共にすごく見所がある作品という感覚でいた自分に対し、編集さんはこの作品だけヒロインが可愛い表紙という印象を持って いてピンときていなかった。「そうじゃないんだよ」という想いを胸に、休日の喫茶店の隣のテーブルで優雅に談笑する奥様方を気にしながら、「おもらし」「尿意」などの必須ワードを盛り込み、「3コマと信号色」、「1コマだけでは何故ダメなのか」(カバー下には3コマ目の全身イラストあり)、「コマ割系デザインの発展型としての表紙」等などのポイントを説明して、この表紙が内容に合ったすばらしいものであるということを伝えるために30分間の議論を行った。結果、「紹介してもいい」というところまで持ち込めた。その後『せっかち伯爵と時間どろぼう』をどう紹介するかをさらっと決めて、その日の打ち合わせを終えた。

出版:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
装丁:コメワークス 高橋忠彦

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【第26位】 運命の女の子 / ヤマシタ トモコ

運命の女の子


女刑事が大量殺人犯と対峙するホラーサスペンス『無敵』。苦い初恋の呪縛から逃れられない青年をリリカルに描く『君はスター』。使命を背負わされた少女と少年の冒険譚『不呪姫と檻の塔』。長編読み切り3編を収録した作品集。

表題作はなく、3作品を総括するような形で『運命の女の子』というタイトルがつけられている。表紙の人物は、ホラーサスペンス『無敵』に登場するが、少し乱れた髪、覗き込むような視線、そして大胆なトリミングが合わさって、見ていてどことなく不安になってくる。人物の瞳の中には赤ホロ箔。この赤ホロ箔は背表紙のタイトル部分にも仕込まれているが、表紙の中ではタイトル部分に使われず、瞳だけが浮き出ている。デザイナーさんは「瞳にゆらぐ焔を、赤ホロ箔で表現しました。」とコメント。「瞳に宿す強固な意志的なアレね~」と解釈して読んでみたら、そうではなかった。

出版:講談社
装丁:note 芥陽子

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【第27位】 かつて魔法少女と悪は敵対していた。 1巻 / 藤原ここあ

かつて魔法少女と悪は敵対していた。

無防備で人懐こい魔法少女と、彼女に一目ぼれしてしまった悪の参謀、愛と葛藤の4コマ。斜めのラインで少女と悪を対峙させたイラスト。

タイトルの「かつて」から「して」までが空いたスペースに等間隔ですっきりと収められることで、そこから逸脱した「いた。」の文字から大きさに見合ったインパクトが出ている。さらに「敵対」と「して」の部分が花を避けるように離されていて、「敵対、して、いた。」とリズムを生んでいる。美麗なイラストの邪魔をせず、かつ印象に残る文字配置。ライトノベルのような長文タイトル、その料理方法の可能性を見た。

出版:スクウェア・エニックス
装丁:コードデザインスタジオ

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【第28位】 燐寸少女 1巻 / 鈴木小波

ギリギリアウト1


妄想を見るのはお客さん。持ち主の身に余る不思議アイテム販売系作品、燐寸(マッチ)限定版。

年代物のマッチ箱のようにデザインされた表紙。色は主に茶色、黄色、赤色、クリーム色。アナログ感の強い作者イラストや作品タイトルがデザインと馴染んでいるのは当然として、「Kadokawa Comics A」のレーベル表記従来のフォントそのままで意匠の一部ように溶け込んでいて、探さないと見つからない。カバーの手触りも良く、作中で少女が口にする、「レトロ調でオシャレ」という表現がとても似合っている。

出版:KADOKAWA/角川書店
装丁:LALA HANDS 佐々木基

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【第29位】 幸子に幸あれ 1巻 / 生春巻

幸子に幸あれ 1巻

貧乏で不幸な暮らしの中で病的な健気さが染み付いた女子高生、その日常を描いた4コマ作品。

その表紙は、右にイラスト、左に4コマと、まさに4コマ漫画の第1話のように見える。それもそのはず、表紙のベースは第1話の1ページ目(画像右下)。そこに、元のページにはないアオリが過剰に詰め込まれていて、なんだか本物の第1話よりも第1話らしく感じられるのだから面白い。さらに、アオリが自然に作品の内容を説明する役割も果たしている。作品が4コマ漫画であることも含めて、大事なことが非常に分かりやすい表紙になっているということは、ヤングマガKCレーベルに所属する作品としてとても重要。そもそも4コマ作品は表紙に4コマを載せるとその作品が4コマ作品であることがわかりやすいというのは当たり前の話ながら、4コマという絵面は表紙に使う素材としては扱いが難しいように思える。それをこの作品では4コマという素材を第1話の1ページ目という大きな枠組みごと持ってきたのでパーツを切り貼りした感じがないのが上手なところかもしれない。

ちなみにカバーの表面には手触りのよいつぶつぶがついていて、質感を底上げしている。おそらく『惡の華』4巻~6巻のカバーで使われている加工と同じタイプのもので、本企画でも何回か取り上げていると思われる。この加工は折られる部分で取れて白く剥げやすいという弱点がある。そこを今回のカバーでは折られる部分だけ折られる部分だけつぶつぶが付いていなくて、痛みが目立ちにくくなっている。この何気ないダメージ対策の改良にうれしくなった。

出版:講談社
装丁:banjo 坂上和也

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【第30位】 文房具ワルツ / 河内遙

ギリギリアウト1


擬人化された文房具が悩める持ち主達を見守る、穏やかな短編集。紺色の下地とクリーム色の背が目立つ、ノートのようなデザイン。写真を切りぬいたようにイラストを収めたひし形の枠は、絵の密度を高める一方で紺地の余白を広く見せ、ノートらしさを印象づけている。タイトルやイラスト部分は光沢のある加工がされており、表紙に華を添えると共に手触りの違いによって、さらりとしたノートの感触を思い起こさせる。カバーの質感は作品を読む手にも感じられて、持つこと自体が心地よい。良い文具のように愛着の沸く、1冊。

出版:小学館
装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香

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甘々と稲妻(3) (アフタヌーンKC)【第31位】 甘々と稲妻 3巻 / 雨隠ギド

1,2巻では一塊になっていたものを分割してきっちり縦に配置したタイトル。
タイトルが落ち着いていて、その分人物の元気よさが際立つ。

少女の瞳や靴・ネギの緑色や、買い物袋の黄色、
スイカシャツや半ズボンの赤色など、
小物の鮮やかな差し色がクリーム色のカバーの上で調和していて、
眺めていて飽きがこない。

出版:講談社
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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長閑の庭(1) (KC KISS)【第32位】 長閑の庭 1巻 / アキヤマ香

文学教授(64歳)と大学院生(23歳)、年の差 恋愛未満ストーリー。

イラストを囲む植物の飾り枠、タイトル、作者名の枠、巻数表記の囲み、イラストの窓枠。整った美しいデザインであると同時に、作中のモノローグの枠やコマワリの線に工夫がされた作品にとても馴染んでいる。
表の飾り枠と形を合わせた裏表紙のデザインは、
バーコードが無くなったことをとても上手に利用している。

出版:講談社
装丁:コードデザインスタジオ
裏表紙
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Sunny 5 (IKKI COMIX)【第33位】 Sunny 5巻 / 松本 大洋

晴れの日でも傘を差す少年は、顔アップの表紙でも傘差し。
傘で目を隠してしまうことで、もじゃもじゃの髪や
鼻水、タートルネック、ランドセルなどキャラを構成する要素が
より強調されている。
傘があることによって、本来文字を置きにくい
顔のおでこあたりの良い位置にタイトルが来て
赤と黒でいつもよりも目立っている。

出版:小学館
装丁:セキネシンイチ制作室

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おかゆネコ 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) 【第34位】 おかゆねこ 2巻 / 吉田 戦車






1巻は黄色と黄緑、そして2巻は黄色とピンク。
このシリーズの色合わせはとても気になる。

出版:小学館
装丁:cozfish 祖父江慎, 福島よし恵

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スティーブズ【第35位】 スティーブズ 1巻 / うめ(小沢高広・妹尾朝子),松永肇一

ジョブズとウォズニアック。史実を元に描かれた、二人のスティーブによるアップルコンピュータ革命譚。
人物二人と齧られた林檎。服装がシンプルで、林檎が良く目立っている。巻数、タイトル、林檎部分には光沢があり、表紙の中央にも無色のタイトルロゴが仕込まれている。巻数表記の後ろにある作品にぴったり似合いすぎるドットは、編集さんのタイプミスから生まれたらしい。参考:関さんのツイート

出版:小学館
装丁:VOLARE 関善之

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聲の形(5) (講談社コミックス)【第36位】 聲の形 5巻 / 大今良時

『このマンガがすごい!WEB』さんのゲスト企画でお題を決めて3作品紹介することになり、チョイスしたのがこちらと『亜人』5巻、『累』3巻。 「次巻のデザインが気になる」かつ「内容もオススメできる」という縛りを独自に設けた結果、他の紹介者の個性的なラインナップと比較してずいぶんと「普通に話題なっている」作品を選んでしまったかもと少し後悔したすぐ後で、チョイスした3作の新刊の表紙の、これまでの流れを踏襲しつつその巻の特徴を出した素敵な仕上がりを確認。そうそう、これよこれ。

出版:講談社
装丁:RedRooster 高木紗耶

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ジュウマン 1 (ビームコミックス)【第37位】 ジュウマン 1巻 / 羽生生純


混沌の巨大戦隊ヒーロー作品。

戦艦を模したコスチューム(作業服)を着て仁王立ちしたオッサン。オッサンを囲んで無地の背景を埋めるタイトル、その隙間には作者名や煽りが添えられる。右上に小さく人が描かれていて、それくらいオッサンが大きいというのは分かりづらいが、文字組みで人物がそそり立つ雰囲気が良く出ているように感じられる。

出版:小学館
装丁:セキネシンイチ制作室
ロゴ拡大
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現代魔女図鑑 1【第38位】 現代魔女図鑑 1巻 / 伊咲ウタ

現代に生きる魔女達の日常を描いた、オムニバスストーリー作品。
魔女/魔法少女モノその1。
青空、無味な階段、制服などの現代要素、帽子、箒、長い髪、黒猫などの魔女要素。程よく現代の日本感を出した魔女達のイラスト。
背景の枠や、単語ごとに分割された漢字のタイトル、辞典で使われそうなフォントによるふりがなの装飾が、さりげなく表紙を図鑑のようにまとめている。
中表紙は白黒+青のイラスト。明⇒暗の流れが気持ち良い。

出版:一迅社
装丁:imagejack 團夢見
中表紙
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幻想ギネコクラシー(1)【第39位】 幻想ギネコクラシー 1巻 / 沙村広明

SFにファンタジー、エロ、グロ、パロ。圧倒的な画力で描かれる突拍子もない12の物語が収録された短編集。猫耳の目立つリアルなタッチの女性に、各エピソードに関連したアイテムを無節操に絡ませて、まったく意味不明かつ妙な凄みのあるイラスト。その余白を埋める控えめなタイトル。背景を無地にして、イラストのインパクトで勝負したシンプルなデザインに見えるが、カバーにはキャンバス地の布目風な凹凸と色むらがあり、これが絵画のような質感を持つ作者イラストの魅力を最大限に引き出している。見て、眺めて、触ってほしい。*

出版:白泉社
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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瑠璃宮夢幻古物店(1) (アクションコミックス(月刊アクション))【第40位】 瑠璃宮夢幻古物店 1巻 / 逢坂八代

大体バッドエンド直行古道具販売系作品。

手間の黒猫が、奥に座る女店長を見つめる構図。
タイトル・作者名を含め、キャラを避けるように散りばめられた
文字が、猫と女店長の存在を強調している。
幕間には作中に登場した個物の解説ページが挟まれており、
本全体でコードデザインスタジオ成分が強い。

出版:双葉社
装丁:コードデザインスタジオ
キャラアップ
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俺物語!! 5 (マーガレットコミックス)【第41位】 俺物語!! 5巻 / アルコ,河原和音

純白のスーツに身を包み、薔薇の花束を携える強面主人公。
主人公のキャラが分かっているため普通にカッコよく見えてしまうけれども、
(電通の匂いがする方の)「壁ドン」が似合いそうなキャラにこれをやらせても、
ここまでパンチのある表紙にならないであろうことは予想できる。

影と組み合わせた「アルコ×河原和音」とレーベルマークも
既刊の中で最も有効利用されていると思える。

出版:集英社
装丁:川谷デザイン

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新装版 UMA大戦 ククルとナギ(1) (KCデラックス )新装版 UMA大戦 ククルとナギ(2) (KCデラックス )【第42位】 新装版
 UMA大戦 ククルとナギ

1・2巻 / 藤異 秀明 
昨年発売された同作者の『真・女神転生 デビルチルドレン』新装版がゴールドだったのでこちらはシルバー。こちらの作品を含め、当時の読者を対象にしているのか、『ボンボン』復刊作品のデザインの気合いの入りようがとても興味深い。

出版:講談社
装丁:arcoinc 楠目智宏,池田悠

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カオスノート【第43位】 カオスノート / 吾妻ひでお

日記形式の妄想シュールギャグ作品。
どてっと立ったペンギン、その足に潜り込む形で、
吾妻先生が木箱を机に漫画を描いている。
表紙のほとんどが白と水色で占められているが、
先生の部分を指で隠してみると、
股下にちょこっと先生がいるだけでぺんぎんが可愛いイラストが
ユーモラスな表紙として完成していることがよくわかる。

出版:イースト・プレス
装丁:鈴木成一デザイン室

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亜人(4) (アフタヌーンKC)【第44位】 亜人 4巻 / 桜井画門

不気味さと凄みを兼ね備えた、ファイティングポーズの異形。その登場数わずか2ページ、計4コマ(部位だけのコマを含める)。そして「しかし亜人4巻表紙キャラの活躍しなかった感もすごい」というツイートをしたところ、担当デザイナーさんにふぁぼられるという事案が発生した。

現在ドラム缶の中でオヤジ汁を醸造していそうな本体(消防士、妻子持ち)の5巻、飛んで6巻以降の活躍に期待する。

出版:講談社
装丁:アルティザン 深海和宏

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The Mark of Watzel (ヤングジャンプコミックス)【第45位】 The Mark of Watzel / 武富智


武富先生のリクエストにより実現した草野さんデザイン。

TV ドラマ『怪傑ワッツェル』で人気を博した元俳優ジェイソンのもとに「病で寿命を宣告された娘・エリンを騙してほしい」との依頼が…と余計なネタバレをぜずにあらすじをまとめるのが面倒な作品なのだけれども、情報がなくとも映画のポスターのようにわくわくできる表紙だと思う。

出版:集英社
装丁:草野剛デザイン事務所 草野剛

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子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)子供はわかってあげない(下) (モーニング KC)【第46位】
 子供はわかってあげない

上下巻 / 田島 列島
味のあるイラストを邪魔せず読みやすい、タイトルの巻数表記と合わせた4×3全体配置。上巻は水色で下巻は黄緑と、カバーイラストの基調にカバー裏や見返し、目次や帯の色も統一されている。各話のタイトルの入れ方や区切りの黒ページなどシンプルで丁寧な作りこみを感じさせる2冊。
出版:講談社
装丁:セキネシンイチ制作室

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ドミトリーともきんす【第47位】 ドミトリーともきんす / 高野文子

架空の学生寮を舞台に、母子が偉業を成し遂げた科学者達の若かりし姿と対面し、その交流によって科学者の思考や視点に迫っていく作品。

大判で大体ナウシカサイズ。このぐらいのサイズになると細かいイラストの本が増える中、シンプルすぎるくらいシンプルなイラストとシンプルな色使い、大胆な空間の使い方が異彩を放っている。サイズがシンプル感を際立たせた、懐かしくて洗練された新しい表紙。

出版:中央公論新社
装丁:服部一成

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NEW GAME! (1) (まんがタイムKRコミックス)【第48位】 NEW GAME! 1巻 / 得能正太郎



「このコントローラー欲しい!」というのが第一印象。

同時期に発売されたKRコミックスの中でも際出だっていた表紙の感じの良さは、(参考:ジャケ買いの種/2014年2月後半)、きっと「今日も一日がんばるぞい!」で興味を持った読者の購入を大きく後押ししたと思っている。

出版:芳文社
装丁:コメワークス 加賀谷遥

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テガミバチ 18 (ジャンプコミックス)【第49位】 テガミバチ 18巻 / 浅田弘幸

明るい景色と人物の引き具合でいつもと雰囲気が異なり少し新鮮な風が吹いた18巻。
以前、海外の人が向こうの掲示板らしきところで、過去の本企画を目にして「テガミバチが入っていないなんて、ちょっとありないよボブ」みたいなことを言っていたことがあったが、「何巻も出ている長編作品だと以前の紹介の有無や前巻との違いなど、色々紹介しやすさが変わってくる、そういう問題ですよ」と、相手が国外の人だと何故か丁寧に教えたくなる。

出版:集英社
装丁:-

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ねこ背を治したいにゃー (コミックエッセイの森)【第50位】 ねこ背を治したいにゃー / はませのりこ

姿勢改善について綴られた猫マンガ、もとい猫「背」マンガ。

小田扉絵に通じるゆるいタッチのイラストにマッチした、
気負いのない、脱力系描き文字タイトルデザイン。
大きな「にゃー」の文字が、
左端から飛び出した猫が発しているように見える構成が
じんわりと面白い。

出版:イースト・プレス
装丁:川谷デザイン

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orange(3) (アクションコミックス(月刊アクション))【第51位】 orange 3巻 / 高野 苺

別マ発、月刊アクションから再出発した少女漫画作品。
未来から手紙が来るストーリーから、手紙をモチーフに1・2巻が繋がるコラージュ形の表紙になっていたのが旧版。対して再出発版の1・2巻は同一構図で1巻に現在のキャラ、2巻に未来のキャラを描く時間に焦点をあてた表紙になった。続く3巻では、表紙から裏表紙に一本の道が続き、表紙に現在の自分達、そして裏表紙にはそれを見つめる未来の自分達が描かれている。デザイナーさんの公表がなくてもどかしい。

出版:双葉社
装丁:-
裏表紙
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ニッケルオデオン 青 (IKKI COMIX)【第52位】 ニッケルオデオン 青 / 道満晴明


1冊目が「赤」、2冊目が「緑」で、こちらは実質的な3巻であり最終巻となる「青」。主線のない切り絵のような木々や木の葉が重なったような森の背景。キャンバス地のようなカバー上に発色の良い青色が載っていて質感がとても良い。

多分、こちらと18位、39位のカバーは同じ紙を使っていて、
どれも紙の違った魅力を引き出している。

出版:小学館
装丁:nist 柳谷志有

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ミミクリ【第53位】 ミミクリ / ai7n

お皿に盛り付けされた少女たちが目を引き手に取ってみたら、文字通り少女たちが食べられる作品だった(料理的な意味で)。

グロありエロありで人を選びすぎてオススメするのを慎重にせざるをえない作品でも、少女達が盛り付けられた構図とさらりと添えられたタイトルが印象的とか本の手触りが良いというアピールポイントを持ってさらりと紹介できるのは、この企画の便利なところだと思っている。

出版:太田出版
装丁:hive 久持正士,土橋聖子
拡大
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凪を探して: 『猫がいない』短編集 (リュウコミックス) 【第54位】凪を探して: 『猫がいない』短編集 / 脇田茜

愛する「猫」という存在を通して、5人の女性の心の機微を、優しく、鮮やかに描き出した作品。
作中ではあらゆる理由で猫が素直に出てこない作品ばかり収録されていて、猫マンガなのだけれども『猫がいない』短編集、という個性的な副題が印象に残る。表紙の上では、『猫がいない』の文字の隣に作者名が配置され、作者名の名前と苗字、さらに「猫が」と「いない」を分ける形で作者名のローマ字表記が入り、大事な副題を目立たせるべくささやかなひっかかりを加えている。

出版:徳間書店
装丁:装丁:VOLARE 関善之

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魔犬 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)【第55位】 いちえふ 1巻 / 竜田一人

福島第一原発作業員が描く原発ルポルタージュ漫画。

脳裏に焼きついたお馴染みの建屋のカットに、
大きく配置された4文字タイトルに、赤字で内容を強調した副題、
散りばめられた灰色の煽り。
作品の内容は世間を煽るようなものではない、と前置きしながら、
下品さのないセンセーショナルなデザイン、と表紙を褒めたい。

出版:講談社
装丁:セキネシンイチ制作室

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主婦を休んで旅に出た よくばり世界一周! 上 (朝日コミックス)主婦を休んで旅にでた よくばり世界一周!  下 (朝日コミックス)【第56位】 主婦を休んで旅にでた
 よくばり世界一周! 上下巻

/ 東條さち子
一人旅エッセイ作品。世界地図の背景と、くるくる回りそうな地球に乗っかった作者。「世界一周」がこの2冊に入っているということがとても明確にわかるデザイン。副題の入れ方にも何気に個性が出ている。

出版:朝日新聞出版
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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月に吠えらんねえ(1) (アフタヌーンKC)月に吠えらんねえ(2) (アフタヌーンKC)【第57位】 月に吠えらんねえ
1・2巻 / 清家雪子
萩原朔太郎や北原白秋らの作品から受けた印象をキャラクターとして創作された、詩人たちと近代日本の業と罪と狂気の物語。
旧字体の古めかしいフォントを使った沢山の文字が散りばめられたカバー。薄くて読みづらいそれは、読むより早く脳に飛び込んできて、詩人の苦悩に似た圧迫感を与えてくれる。
出版:講談社
装丁:note 芥陽子

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アオハライド 10 (マーガレットコミックス)【第58位】 アオハライド 10巻 / 咲坂 伊緒


シンプルでスッキリした白タイプのデザインは6巻まで続き、7巻からはそこに鮮やかな水彩が付加されいく。さらにこちらの10巻からは、深みを増す長編ストーリーに呼応させるように、より複雑に色が重ねられるようになった。背景に色か付いて、代わりに白抜きになって見やすくなったタイトルを見て、今更ながら描き文字のようなタイトル、振り仮名的なローマ字配置、英文とそこ構成が面白くまとまっていることに気づいた。

出版:集英社
装丁:川谷デザイン
ロゴ拡大
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こいのことば【第59位】 こいのことば / 緑のルーペ

女子中学生がエロ漫画家の部屋に入り浸って爛れた逢瀬を重ねる、これしかるべきマーク付かないの?ならばここで紹介してしまおう、というラインの作品。
制服も下着も脱ぎ散らかして、布団の上でメモをしたためようとする少女。この温い光の差し込んだ甘ったるいイラストを、一部がすっぱと切れた白いタイトルがシャープに引き締めている。
各話の扉ページに、話数・各話のタイトルと共に入った「Words of love」がちょっと好き。

出版:太田出版
装丁:草野剛デザイン事務所 草野剛
拡大
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恋愛ラボ (10) (まんがタイムコミックス)【第60位】 恋愛ラボ 10巻 / 宮原るり


10巻到達というキリの良いタイミングで、『僕らはみんな河合荘』で繋がりの出来た川谷デザインにより、デザインのフォーマットもリニューアルされた。

一箇所にまとまったポップなロゴは細くスタイリッシュなタイプに変わり大きく配置され、ロゴに含まれていたハート成分は巻数表記に以降。巻数マークには可愛い個性が付いた。

出版:芳文社
装丁:川谷デザイン
巻数
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はなしっぱなし 上はなしっぱなし 下【第61位】 はなしっぱなし
上下巻 / 五十嵐 大介
アフタヌーン発・幻想短編系作品、その復刻版の新装版。
白系から風景系になって、より怪奇なムードが伝わるようになった。ちなみに今回の表紙イラストは前回袖に分割で収録されていたものとなる。

出版:河出書房新社
装丁:坂野弘美

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箱入りドロップス (3) (まんがタイムKRコミックス)【第62位】 箱入りドロップス 3巻 / 津留崎 優


箱入り娘、初めてづくしのスクールライフ4コマ作品。

表紙で何らかの箱に収まっているヒロインの3巻での収まり先は洋風の菓子折りの1スペース。チョコのブラウン色と箱の紺色の多いビターな色合わせで1・2巻より少し大人っぽく、タイトルと作者名の入れ方も既刊の中でもとてもスマート。

出版:芳文社
装丁:コメワークス 木緒なち

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さくらの園 1 (少年チャンピオンコミックス・タップ!)【第63位】 さくらの園 1巻 / ふみ ふみこ

絵柄はゆるふわな百合SF作品。

奇妙な植物が生い茂る森で寝そべる少女達を中心に点対称で配置された、
ブロックを切り出したような面白い文字を使ったタイトルと作者名。
文字のバランスの取り方が面白くも、大きい作者名に違和感はないが、
紹介しているほかの作品を眺めてみると思いのほかこの表紙の
作者名が突出して大きいということがわかり、意外だった。

出版:秋田書店
装丁:Pri graphics 川名潤

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かわうその自転車屋さん 1 (芳文社コミックス)【第64位】 かわうその自転車屋さん 1巻 / こやまけいこ


店長はかわうそさんで店員は羊さん。坂の上にあるカフェみたいな自転車屋の物語。

オシャレな佇まいの自転車屋さんと、普通の自転車より小さいかわうそ店長の
愛くるしいイラスト。お店に続く道が自然と帯状のタイトル配置エリアの役割を果たしている。

出版:芳文社
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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セトウツミ 1 (少年チャンピオン・コミックス)セトウツミ 2 (少年チャンピオン・コミックス)【第65位】 セトウツミ 1・2巻
/ 此元 和津也

男子高校生2人が、川べりでひたすらダベるマンガ。

男二人が出てオシャレなカバーデザインとなると、友情とは別方向の匂いがしてしまうことが多いので、この空気感は貴重。

出版:秋田書店
装丁:芦田デザイン事務所 芦田慎太郎
拡大
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星の案内人 1 (芳文社コミックス)【第66位】 星の案内人 1巻 / 上村五十鈴


小さな町のプラネタリウムを舞台に繰り広げられる、人と宇宙の優しい物語。

自転車を引き、空を見上げる少年。右手には小さな私設のプラネタリウム。文字が折れる場所が丸まっていて、隙間があり、ところどころが星座のように繋がっている、そのタイトルロゴは朗らかで、手描き感のあるロゴとは違った優しさが出ている。芳文社のHCレーベルは何気に行き届いたデザインの作品が多い。

出版:芳文社
装丁:arcoinc 楠目智宏

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新世紀エヴァンゲリオン 14【第67位】 新世紀エヴァンゲリオン 14巻 限定版 / 貞本義行,カラー

エヴァ搭乗者揃い踏みの最終巻・限定版。銀色の少し入ったちょっとリッチな表紙を眺めていると、装丁がどうのと言うか、「コミックス版も面白い」と1・2巻を手渡されたときに「このペースでいったら完結するまで何年かかるかわからないよね」と口にしたのを思い出した。



出版:KADOKAWA/角川書店
装丁:BE-ENTO 鹿住忠広
裏表紙
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橙は、半透明に二度寝する(1) (講談社コミックス)【第68位】橙は、半透明に二度寝する 1巻 / 阿部洋一


荒唐無稽でグロほっこりする、船溜まりの町のオカルトオムニバス。

寄り添う少女と生首の満面の笑顔。オレンジ色のタイトルや飾り枠で暖色系でまとめられた色あせたようなイラストがくしゃくしゃにシワのついたわら半紙のような下地に貼られているようなデザインになっていて、ほんのりと文学の香りが漂う。

出版:講談社
装丁:RedRooster 下山隆

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ヤマトダイブラザーズ 【第69位】 ヤマトダイブラザーズ / 日高チトセ

兄弟でバンドを結成している3兄弟の日常を描いた、BLレーベルにおける非BL作品。

白地の背景に同一キャラを沢山配置したキャラ散りばめ系。3兄弟を1セットにして、さまざまなシチュエーションを散りばめているのが特徴になって、このタイプのデザインの賑やかさを備えつつ、類系の中でもまとまりがあってすっきりしているように感じられる。キャラやタイトルの部分にはツヤあり。

出版:ふゅーじょんぷろだくと
装丁:野本理香

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一畳間の純チャン (近代麻雀コミックス)【第70位】 一畳間の純チャン / 野村 宗弘

とある雀荘に集う訳ありシスターと迷える子羊たちの、ちょっぴり狂ったほのぼの麻雀漫画。人物のイラストも小さめに、緑色を基調として金色の飾り枠や十字架形のタイトル枠を設けた表紙は、聖書のようでとても厳か。しかし、これは麻雀漫画なので麻雀牌もあるし、シスターが持っているのも点棒、飾り枠には牌の模様まで入っている。聖書と麻雀と、何とも罰当たりな組み合わだが、その違和感を感じさせないほど丁寧なデザインの仕事ぶりが面白い。麻雀漫画の中でも異色なこだわり装丁。ひとつ出ると二つ目も出るもので、面白い試みが次に繋がるかもとわくわくしている。*
出版:竹書房
装丁:hona graphics
拡大
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ふらいんぐうぃっち(1) (講談社コミックス)【第71位】 ふらいんぐうぃっち 1巻 / 石塚千尋

青森を舞台にしたほのぼのまじょまんが。
魔女/魔法少女モノその2。

木漏れ日の降り注ぐ神社の境内に少女一人、黒猫一匹。。
ひらがなタイトルの最初と最後が伸びてロゴを特徴付けている。
のどかな雰囲気の中に、ほんのりと確実に魔女っぽさを加えた
クセのない優しい味わいの表紙。

出版:講談社
装丁:RedRooster
拡大
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ラーメン大好き小泉さん 1 (バンブーコミックス)【第72位】 ラーメン大好き小泉さん 1巻 / 鳴見なる

ラーメン大好きな女子高生・小泉さんの日常。
背景は、調理場をカウンターが囲むラーメン屋の店内。主人公は小さく描かれているが、イラストの中心で。モブの上に大きく重ねられた長いタイトルの隙間で存在感を強く出している。

表紙のお店は第1話で登場する『ラーメン二郎三田本店』らしく、googleで画像検索を行ってエア胸焼けを起した。

出版:竹書房
装丁:名和田耕平デザイン事務所
キャラ拡大
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クジラの子らは砂上に歌う 2 (ボニータコミックス)【第73位】 クジラの子らは砂上に歌う 2巻 / 梅田阿比



巨大な遺跡の船で砂漠の海をたゆたう人々の物語。

通巻で、バストアップの繊細なイラストの頭の上に重なるように
縦書きの長いタイトルを載せてしまう大胆な構成をとっている。
世界観を結晶化したようなタイトルの造型がお気に入り。

出版:秋田書店
装丁:コメワークス 木緒なち

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よんでますよ、アザゼルさん。(11) (イブニングKC)【第74位】 よんでますよ、アザゼルさん。
11巻 / 久保保久
イラストのタッチとデザインを合わせて、昭和のジャンプ作品を連想させるレトロな雰囲気を演出している表紙。袖にもジャンプコミックスらしい作者の自画像が載っていて、作者と同姓のジャンプ作家を連想させる。しかし骨折しそうなほどひねりを効かせていて、よく見るとさ

店員「それ以上いけない」

出版:講談社
装丁:L.S.D. シマダヒデアキ

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お前はまだグンマを知らない 1 (BUNCH COMICS)お前はまだグンマを知らない 2 (BUNCH COMICS)【第75位】
 お前はまだグンマを知らない

1・2巻 / 井田ヒロト
群馬県の「あるある」ネタいじり倒し作品。
追い詰められた表情の男を閉じ込めるかのように、怖いフォントを使ったタイトルと血を被せてホラーなデザインに、群馬を秘境としていじる「グンマー」ネタの認知が加わって完成するギャグ表紙。
出版:新潮社
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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あしたのファミリア(11) (ライバルKC)【第76位】 あしたのファミリア 11巻 / 樋口彰彦


最終巻。

これまで風景なし+人物が表紙から裏表紙に掛かるダイナミックな構図というフォーマットで続いてきたので、人物が直立で背景が作品の拠点+青という第1巻的な王道要素が、逆にラストを飾るのにふさわしく感じられる。おつかれさまでした。

出版:講談社
装丁:5GAS 宮村和生
第1巻
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リュウマのガゴウ 5 (ヤングキングコミックス)リュウマのガゴウ  (6) (ヤングキングコミックス)【第77位】 リュウマのガゴウ
5・6巻 / 宮下裕樹


5巻は黒背景、6巻は背景が写る隙間も無いクルーズアップ。こうしてみてみると、文字位置を頑なに変えていないのにどちらの構図でもカッコよく成立させているのが大胆で面白い。

出版:少年画報社
装丁:川谷デザイン

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死神ナースののさんの厄災【第78位】 死神ナースののさんの厄災 1巻 / 麦盛なぎ


死神と噂されるナースと、隔離棟に収容された謎の少年。
昭和初頭のサナトリウムを舞台にした怪奇サスペンス。

レトロな印刷感を出す、黒、薄茶、赤でまとめた色使い。
ナースと少年のイラストのいたるとろに、体の部位や着衣、道具の名称が
旧字体で記載されていて、興味を引く不気味さを演出している。

出版:マッグガーデン
装丁:simazima 平谷美佐子
拡大
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天地明察(7) (アフタヌーンKC)【第79位】天地明察 7巻 / 槇えびし,冲方丁






上下逆さま系は見たとき脳がびっくりするのだけれども、
それが水面だとわかると落ち着いて美しいものだと認識される。

出版:講談社
装丁:SPICE 柳川価津夫,大野裕介

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アルテ 1 (ゼノンコミックス)【第80位】 アルテ 1巻 / 大久保圭

16世紀初頭・フィレンツェ。画家を目指す女性の物語。

絵画が関連する作品ということで、イラストはフレームに入って飾られているが、フレームが硬質感を感じさせるものになっていて、女性がひとりで生きて行くことに理解のなかった時代、主人公が困難に立ち向かう物語に相応しい「堅さ」を出しているように思える。
ロゴもすっきりしていて見やすい。

出版:徳間書店
装丁:crazy force 竹内亮輔
ロゴ
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昇る朝日にくちづけを (ヤングジャンプコミックス)【第81位】 昇る朝日にくちづけを / TNSK

日本の地方の風景と、その地で生きる人々の“禁断の恋"を繊細に描き出す連作短編集。2話の独立した短編の後に、締めとして3話連続の表題作が収録されていて、表紙のイラストは表題作3話目の印象的なシーンがモチーフになっている。タイトルの青、イラストの薄い着色、薄い青色の太陽。朝をまとった日の出の空気が良く出ている、というか朝日というアプローチがそもそも珍しいのかもしれない。YJ系のコミックとしては珍しく中表紙、目次ページに加え、奥付()にも手が加えられていて、統一感のある中のデザインもさりげなく印象が良い。

出版:集英社
装丁:arcoinc 楠目智宏
奥付
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ノストラダムス・ラブ (IKKI COMIX)【第82位】 ノストラダムス・ラブ / 冬川智子

1999年7月、世界が終わるはずの10日前の物語。
クラフト紙のような薄茶色のカバーに黒い印刷の文字とイラスト+蛍光色の黄色。少ない素材とシンプルな味付け、そこにTVが点いたままの暗い部屋がある。
発売前にAMAZONに出ていた白背景の仮バージョンの書影をブログに載せいたところ、それを見たデザイナーさんからわざわざ完成版を送っていただいた。これも一つの愛かもしれない(仮書影の差し替えはお忘れなく)

出版:小学館
装丁:note 芥陽子
拡大
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北斗の拳 イチゴ味 2 (ゼノンコミックス)北斗の拳 イチゴ味 3 (ゼノンコミックス) 【第83位】 北斗の拳 イチゴ味
2・3巻 / 徒妹,河田雄志

原哲夫,武論尊
本物以上に本物らしいイラストと本物らしいデザインで本物にも許されていて、笑わせてくるのがとてもずるい。田中圭一よりもずるいしドリヤス工場よりもずるい。ついでにドリヤス工場のクロスアンジュもずるい。

出版:徳間書店
装丁:crazy force 竹内亮輔

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滅子に夜露死苦(1) (IDコミックス REXコミックス)【第84位】 滅子に夜露死苦 1巻 / クール教信者

「顔には出てないのにお腹が結構きてるね」体型のケンカ師を主人公にした新感覚ヒロインコメディ。

ボテっとしたお腹と共に仁王立ちする主人公の存在感に負けない、ピンクと黄色のロゴ。右側は3文字で左側4文字。右側の開いたスペースを巻数や作者名など使える文字で埋めて、表紙にどっしりとした安定感を生み出している。
不敵に笑う「苦」の文字のデザインが面白い。

出版:一迅社
装丁:arcoinc 楠目智宏

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群青戦記 グンジョーセンキ 2 (ヤングジャンプコミックス)【第85位】 群青戦記 1巻 / 笠原真樹



校舎丸ごと戦国タイムスリップ作品。

胴鎧の上に上着を羽織って戦地に赴く学生。
作者の本来のイラストの個性はそのままに、
ほんの少しのタッチの差で人物が戦国風になっている。

出版:集英社
装丁:五十嵐卓也

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書かずの753 1 (ビッグコミックス)【第86位】 書かずの753 1巻 / 相場英雄,中山昌亮

『震える牛』相場英雄×『不安の種』中山昌亮、地方新聞社ドラマ作品。

新聞紙風の表紙。中には主人公の女性記者が北海道の弱小新聞社への出向を命じられるという話導入がイラスト部分を含めて記事の体裁でまとめられている。下に見出しが載っている記事も、作中のエピソードに関わるもの。斜めのレイアウトと赤いタイトルで、報道の緊張感と臨場感が生まれている。
書くと「祟られる」とか、そういう「書かず」ではなかった。

出版:小学館
装丁:セキネシンイチ制作室
拡大
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刻刻(8)【第87位】 刻刻 8巻 / 堀尾省太

最終巻。
基本的なデザインはそのままに、巻数が右上から左下に移り、デジタルな形の英字タイトルが下に寄せられることで重心が下がって安定。これが落穏やかなイラストと組み合わさって、最後らしい落ち着いた雰囲気の表紙に仕上がった。

20位の作品など、2014年は新上さんが作品の個性を引き出していた講談社青年系の作品が幾つか綺麗に完結してしまい、少し寂しい。

出版:講談社
NARTI;S 新上ヒロシ []

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おしえて!  ギャル子ちゃん 1 (MFコミックス)【第88位】おしえて! ギャル子ちゃん 1巻 / 鈴木健也

気立ての良いギャル・オタ娘・天然お嬢様の3人組、女の子Q&Aマンガ。

蛍光カラーが特徴的なオールカラー漫画であり、柱の人物紹介を含めて
中身をそのまま持ってきたような表紙になっていて、
とてもわかりやすく、そして個性的。
表紙のマンガのフキダシの中では台詞が絵で表現されて、
表紙をめくるとそれが何を喋っているのかすぐにわかる仕掛けになっている。

出版:KADOKAWA/メディアファクトリー
装丁:Aoki Kenichi
1ページ目
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満ちても欠けても 2【第89位】 満ちても欠けても 2巻 / 水谷フーカ

午後11時のラジオ番組を中心に、届ける人、聞く人、支える人等、さまざまな角度からラジオを愛するエピソードを紡いだ作品。
深夜のビルの屋上に並んだ番組スタッフのみなさん。夜空には、星と共にさりげなく音符が混じっている。カバーのポイント何と言っても表面の質感。さらさらしてして鈍く光るカバーで、夜空も星も明るく見えて、がんばる人達がいる賑やかな夜の空気が形成されているが、この空気感がカメラにどうしても映らないのが今回困ったところでもある。なので手に取ってみてほしい作品の1つ。

出版:講談社
装丁:G×complex 久遠敦司

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ごきチャ (3) (まんがタイムKRコミックス)【第90位】 ごきチャ 3巻 / るい・たまち



背景色との差でコミカルなタイトルが既刊より目立った3巻。

「小さい生物」ならではの構図で描かれた、見る機会のないアングルの、
しかしその雰囲気を覚えている祭りの景色。
34位、そしてこちらと祭りネタ一つにしてもその作品の味が出る。

出版:芳文社
装丁:BALCOLONY.

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ばくおん!! 5 (ヤングチャンピオン烈コミックス)【第91位】 ばくおん!! 5 / おりもとみまな

『けいおん!』の単行本カラーをなぞり続けて早くも5巻。highschool編の黄緑色が来るか?という予想を外し、使われたのは『まんがタイムきらら』付録である4巻用カバーのピンク色。元ネタのカバーのキャラはミュージシャン由来の中野さん、そして本カバーのキャラはレーサー由来の中野さん。
かくして、中野さん(ツインテール)から中野さん(ツインテール)にバトンは託された。そして残るネタのストックは(多分)2冊分で黄緑と白。どうする?どうなる?ばくおん8巻。

出版:秋田書店
装丁:芦田デザイン事務所 芦田慎太郎

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ホリミヤ 6巻 初回限定特装版ラバーストラップ付き(SEコミックスプレミアム) (Gファンタジーコミックス)【第92位】 ホリミヤ 6巻 限定版 / HERO,萩原ダイスケ



付属したラバーストラップと同じ格好をした、
アニマルフーディのキャラクター達。

通常版は制服キャラを並べた通常運行ということで、
これは良い差別化。

出版:スクウェア・エニックス
装丁:caro design 橋本清香
通常版
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穴殺人(1) (講談社コミックス)穴殺人(2) (講談社コミックス)【第93位】 穴殺人 1・2巻 / 裸村


水着など露出の多い服を着た人物の非着衣部分を、水玉をくり貫いたような壁で隠すことで、空間補完効果により元絵が裸体であるかのような錯覚を引き起こさせる。写真もイラストもその適用を免れない。「水玉コラ」、それは悪魔が授けた奇跡のコラージュテクニックである。

出版:講談社
装丁:futaba NISHIHARA HIROYUKI

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ばけもの町のヒトビト(1) (アクションコミックス(月刊アクション))ばけもの町のヒトビト(2) (アクションコミックス(月刊アクション))【第94位】
 ばけもの町のヒトビト

1・2巻 / くまのとおる
人とばけものが共存ずる町の、日常コメディ。
横2色分割構成。横長のエリアに普通の人間の全身が収まる縮尺で、キャラを一列に配置。絵に収まりきれないキャラクターを入れて、サイズ感を強く出している。

出版:双葉社
装丁:Lightning
タイトル,帯
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死役所 1 (BUNCH COMICS)【第95位】 死役所 1巻 / あずみきし

死者の行き先を振り分ける、あの世とこの世の境にあるお役所の仕事を描いた作品。

白いイラストエリアを黒い縦帯で挟み込んだ、鯨幕を連想させる構成とタイトルで作品のあの世的な要素を匂わせ、顔の半分がなくなった女性の痛ましい姿でインパクトを出しつつ、すっきりしたデザインで目を背けたくなるほどの怖さは抑えられたバランスがちょうど良い。

出版:新潮社
装丁:ARTEN 石川照美

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魔法少女さん (ジェッツコミックス)【第96位】 魔法少女さん / 縛

ゆるキャラな風貌とオッサンの精神を持つ、魔法少女同居4コマ。

赤一色の背景と、主線と塗りのくっきりしたイラストが、
よく出来た商品パッケージのようによく目立つ表紙。
作者名は縛(ふぅ)。この1文字の作者名は縦書きのタイトルの下に
英字を挟んでハンコのように配置され、
作者名であることが自然に伝わるようになっている。

出版:白泉社
装丁:fabric engine
作者名拡大
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金魚屋古書店 16 (IKKI COMIX)【第97位】 金魚屋古書店 16巻 / 芳崎せいむ

16巻では『藤子.F.不二雄ミュージアム』がお話の舞台として登場。

なだれを起して店員に圧し掛かる大量のドラえもん、
そのインパクト。
ドラミちゃんは1個。

正しく使えば、版権は強い。

出版:小学館
装丁:葛西恵

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妄想高校教員 森下 (1) (ヤングガンガンコミックス)【第98位】 妄想高校教員 森下 1巻 / 西渡槇


「YES妄想、NO TOUCH」がモットーの変態紳士・森下先生の脳内お花畑作品。

はだけた胸元から見える分厚い筋肉、軌跡を描く鋭い眼光。
只者ではない雰囲気を放つ教員の力強いイラストと
変態まっしぐらなフキダシのギャップ。
そしてメガネには女性達の姿が映っている。

出版:スクウェア・エニックス
装丁:On Graphics
メガネ拡大
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レムルローズの魔女 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)【第99位】レムルローズの魔女
/ 神江ちず,霜月はるか,日山尚
霜月はるか・日山尚が送るファンタジーボーカルアルバム『レムルローズの魔女』(CD作品)のコミカライズ。
二重の枠状になった背景、キャラクター、そしてタイトルロゴの枠。細かく描かれた美麗なイラストに、作り込まれたタイトルロゴの枠が非常によく馴染んでいる。多数の四角の枠によって縦横の規律がはっきりした空間に入った剣の斜めのラインが美しい。

出版:一迅社
装丁:imagejack 團夢見
ロゴ
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俺とSEXすれば売れる 2 (ゼノンコミックス)【第100位】 俺とSEXすれば売れる 2巻 / 香穂





男魂さえ描かれていなければセーフというレギュレーションは
どういう文化圏で適用され得るものなのか。
私、気になります。

出版:徳間書店
装丁:アフターグロウ 寺田鷹樹

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ここまでがランキング発表。

最後に、カバー下や特殊加工など別なところに注目した作品を別枠で22作品紹介していきます。




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【表裏賞】 さかな&ねこ / 森井ケンシロウ

猫と魚は大の仲良し、でも猫は魚を食べる、それが全てのシンプルな4コマ作品。

家で、会社で、学校で、どんなに仲良しな猫と魚がいても、4コマ目には魚は猫の胃の中にいる。「その関係に行き着くまでに魚は食われてなきゃおかしいだろ!」という無粋な突っ込みをするタイミングもなく、テンポ良く食物連鎖の犠牲となっていく魚。そんな作品の個性が濃縮されているのがカバーの裏表。

さかな&ねこ


まず、表紙にはタイトルと作者名をなるべく小さくして、黄色い背景に魚と猫を描けるだけ描き込まれていて、食う側と食われる側が集まって仲良く会食する、シュールでコミカルな景色が広がっている。そして裏表紙にもまったく同じ構図が描かれているが、そこには魚だけがいない、というオチが付く。

さかな&ねこエンボス


イラスト部分はエンボス加工によって盛り上がっており、ツルツルのカバーの上でイラストの輪郭が光に反射する。このためキャラの存在が際立ち、描き込まれた猫の数、魚の数に見合ったインパクトが生まれている。エンボス加工が特に効果的に作用していると感じたカバーでもある。

出版:竹書房
装丁:VOLARE 関善之

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【カバー外し賞】 バベルの図書館 / つばな

バベルの図書館


紙に触っただけでそこに書かれる全ての文章を読む力を持つ少と、天使の存在を信じる平凡な少女。少年が少女と一言一句まで同じ作文を書いたその日から、ひとつの物語が始まった――、という作品。

ムラがある形でほんのり色づいた背景、手を繋ぐ少年と少女。少年には不気味なシミが重なっている、これが表紙で上の画像の左半分。そして画像の右半分がカバーの表紙部分の裏側。カバー裏には古文書のように言語不明の文字とイラストがみっしりと描き込まれており、表紙のシミは裏表紙の一部が染み出たものになっていることがわかる。

バベルの図書館


カ バー下には青空が印刷されている。カバー下に青空があると大抵ストレートに爽やかなものになるが、古文書と組み合わさると意味深なものに感じられる。カバー裏の古文書は、いくつかの素材をパターン的に配置するように構成されているが、丁寧に作りこまれていて見ごたえあり。

出版:太田出版
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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【特殊装丁賞】 サヨナラフラグ / マキヒロチ

サヨナラフラグ


別れをテーマにした作品を多く収録した、作者の初作品集。

白シャツ、女性の青い髪とショートパンツ、黄色い付箋。青、白、黄色でまとめた表紙。カバーは半透明。カバーにもカバー下にも黄色の付箋が散らばっていて、2層に渡る付箋がさりげない奥行きを形成する。作中で沢山の付箋が登場する物語は「あなたがかえるまえに」。作品をまとめるに府さわさしい物語を表題作に選びつつ、違う物語のアイテムを表紙イラストのモチーフにしているのがポイント。

出版:祥伝社
装丁:川谷デザイン

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【エクストリーム装丁賞】 犬マユゲでいこう かんたんいぬまゆげ / 石塚2祐子

犬マユゲでいこう  かんたんいぬまゆげ


本企画で紹介するのも3度目で、相変わらず漫画であるかどうかすら判別できないゲームあれこれ作品。

今回のデザインはキャラ弁風で、料理写真撮影研究家・山下コウ太による出来た弁当写真が表紙に用いられているが、
もちろん作中の内容との関係は一切ない。誰のイラストにしたら手にとってもらえるか、どういう構図にしたら内容がわかりやすいかと悩んだり、帯という付属品のために本来のデザインが制限されるという逆転現象に気を使ったり等、多分苦労しているであろう普通の作品とは別の次元にいて、どこに向かっているのかはさっぱりわからず、作中でも「誰得」という自虐すら入っているデザインではあるが、誰かが全力で楽しんでいるのはわかる。

出版:集英社
お弁当撮影:山下コウ太
何でも撮影隊:和田篤志,長谷部英明
装丁:ビーワークス 木内早帆理


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【ホラー賞】魔の断片 / 伊藤潤二

魔の断片

伊藤潤二の8年ぶりのホラー物の新刊コミックス。

収録作品に関連した人物や怪異が「ムンクの叫び」風にまとめられたイラスト。ストレートにホラーな表紙と言えるが、手に取ってみると、何か変なものが映りこむ。

魔の断片


光にかざしてみると、隠れていたる悪魔の姿がはっきりと浮かび上がる。どれくらい隠れているのかと目を凝らしてみると、カバー全体にびっしりと悪魔が潜んでいた。

魔の断片3

カバー下には透明の加工で隠れていたイラストが印刷されている。こうしてわかるように、1枚のカバーのために、2枚分の全体イラストが描き下ろされていることになる。

出版:朝日新聞出版
装丁:Rocket Bomb 簑原圭介

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【HO★MO★SHOW!】 菊門高校モテ部 1巻 / 絶蝶

菊門高校モテ部 1巻
基本的にBL作品を紹介しない本企画において、紹介したくなった本作品。紹介文などで「創作BLweb漫画」と銘打たれて逃げ道がないな~と思いつつも、内容的にこれはBLでなくBG(Boy's Gag)だと自分だけ納得させてここに紹介する。

本作品の発表媒体は創作サイトやpixivで、そのときのタイトルはダイレクトに『菊門高校ホモ部』。それが商業化するにあたって、
『菊門高校モテ部』というマイルドなタイトルに改題され、表紙にはちりばめられた作中のコマの上に『モテ部』の文字が載せられた。
『菊門高校』4文字と『モテ部』の3文字が分かれていて、『モ』の上が空いているのが気になるが、『モテ』と『部』の縦のラインがずらされていることと合わせて、そういうデザインなのだろうと思えてくる。しかし、この空いている部分を見てみると…

モテ部仕掛け

透明な印刷で隠された『ホ』の文字。さらに、タイトルの『テ』以外の文字はツルっと膨らんでいる。
光に当てれば、そこに『菊門高校ホモ部』が現れる。

出版:マッグガーデン
装丁:コードデザインスタジオ

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【LO★LI★SHOW!】 薄花少女 2巻 / 三浦靖冬

薄花少女

昨年と同様に、この作品を「目次賞」として真面目に紹介する、という選択も考えていたものの、今回紹介したいポイントは真面目に解説だけすると意図しない形で草が生える可能性がある。そのため、HO★MOとセットで紹介しておけば何か知らないけれどプラマイゼロ的なアレになるであろうと踏んだ結果のコレ。

そんなわけで、休刊したIKKIから『のじゃロリ&ロリババァ』『サンデーGX』に移籍した本作品。カバーデザインはほぼそのままで、背表紙の一番下で枠に収まり収まったGXのロゴがIKKI時代の名残をとどめている。そして、1巻で注目していたオシャレな遊び紙のデザインはどうなっていたというと、なにやら湯煙の向こうで少女(80歳家政婦)が着替えている。やばい、これは丘野上ヒナゲス・チャン大使激おこ案件か?と緊張が走る。そして恐る恐るページをめくると…。

薄花少女2-2

はい、大丈夫でした。これにはチャン大使も苦笑い。

と いうくだらない前置きは置いておいて、シルエットの周りが透けていた1巻とは真逆になっていて、遊び紙越しに想像できるイラストと、実際に見えるイラストが違う、という仕掛けになっていた。仕掛けの種類で分類すると、93位の水玉コラ(93位の作品の中表紙にも表紙の元イラストが掲載されている)と同系と言え、水玉コラの原理を応用したアイディアとも思える。ホラー系作品とも親和性の高そうな仕掛けかもしれない。

出版:小学館
装丁:chutte

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【アイディア賞】 モリミテ / 中野シズカ

モリミテ


花を配達した帰りに道に迷い、闇深い森へと誘い込まれるように足を踏み込んだカズシとリュック。不思議な少女達に出迎えられた二人がそこで見てしまった森に閉じこめられた真実とは…。いくつもの伏線から導き出される幻影の森の物語。(アックスストア解説文より)

闇に包まれたような暗いカバーに浮かび上がるように描かれた一人の少女の線画。よく見てみると、その少女を取り囲むように沢山の少女が描きこまれていることがわかる(オンマウスで書影拡大)。

モリミテ現

見えやすい中心の少女に対して、周りの少女達の色はは背景色に近い。

モリミテ消

さらに、さらさらとした質感のカバーに光を当てると、ぼんやりと全体的に白みがかるため、
カバーを見る角度によって、少女達が見えなくなるが、
見え方が結構極端なので、少女達が暗い森の中で突然現れたり消えたりと面白い視覚効果を体験できる。

出版:青林工藝舎
装丁:永井ミキジ

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【合体賞】 リピートアフターミー 2巻 / ヤマモトマナブ

 リピートアフターミー


ここで唐突に自分が『このマンガがすごい!2015』に投票した作品を振り返ってみる。まず『子供はわかってあげない』、これは各方面で名前が挙がっていてもう何も文句がない。『レストー夫人』は38位でめでたい。『ぷらせぼくらぶ』は『このマンガを読め!』の方で7位とこれもめでたい。
『ラブラブエイリアン』は『すごい』の方でちょっとピックアップされていたし、きっと2巻も出るし良しとする。

だがしかし、1位に推した『リピートアフターミー』が全然どこでも目立っていない、これはちょっとよろしくない。「ヤリナオシ」と1000回唱えてみても全然すっきりしない、これはいかんともしがたい、表紙だってせっかく全2巻で合体してるのに!そんな怒りの合体賞。

そんなわけで2014年もいくつかの合体表紙が登場していて、その中でこの作品は全2巻に登場する沢山のキャラや出来事を2冊分のスペースに落としこんでよくわからないけどドラマティックで賑やかな表紙しているのが特徴的だった。1巻と2巻の発売には半年程度間が空いていて、そのため上下巻にもなていない が、最初からプロットをしっかり定めた上での全2巻なので、このように綺麗に合体している。

とは言うものの、上で言っている「よくわからないけど」という部分はやはり弱点で、この表紙だけを見ても、この作品が同じ日を何回も繰り返すループ物で、繰り返しによる学習を最大限に有効活用して大事件に立ち向かっていく映画のようなストーリーラインを持つ作品だ、ということが伝わらないのは非常にもったいない(←回りくどい作品紹介)

超有名作品と比較してこの作品が売れてないのはおかしい的な主張をする気はさらさらないものの、この作品を楽しめるけれども作品自体を知らない人は結構いそ うだなとも思える作品なので、これを読んだ人の中でが一人くらいは本書を手にしてみて、「結構いいじゃん」と思ってくれる、それくらいの期待はしたい。

出版:マッグガーデン
装丁:株式会社ビイピイ 鈴木佳成

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グレイトフルデッド【合体大賞】
  グレイトフルデッド
     上下巻 / 久正人



清朝末期の中国・上海を舞台に、女霊幻道士がキョンシー相手に大暴れするアクション活劇。マガジンZに連載されていた全2巻の作品が、同作者の連載作品『エリア51』『ノブナガン』の好調を受け、長い絶版期間を経て復刊した。

今回の作品レーベルはシリウスKCとなっており、出版社は同じ講談社ということで、デザインは引き続きSPICEが担当。そして今回は上下巻2冊同時発売ということもあって2冊の合体表紙になったが、特徴になっているのが解説するまでもなく見ての通りの縦合体。キョンシーが犇く夜の上海を女霊幻道士が飛翔する縦長のイラストに、作品の持つ力強さが凝縮されている。

ちなみに、既にかっこよかった旧版単行本の表紙イラストは、2冊分下巻にカラーページで収録されている。

…ここまでコメントを埋めてもスペースがだだ余りなので、過去に書いた作品紹介でも置いておきます。
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気弱な少女売春婦と凄腕女霊幻導士という二つの顔を持つ少女が化け物相手に夜な夜な死闘を繰り広げる、中華テイストな爽快バトルアクション。お約束の盛り込まれた王道の妖怪退治物であると同時に、版画みたいなスタイリッシュな絵柄や、売春婦が男性からの精力を霊力にして戦う等癖のある奇抜な設定を使いこなす強いオリジナリティーを持っている。他に類を見ない希少な作風で、はまる人はきっと強くはまる。
⇒全2巻オススメ漫画50選
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出版:講談社
装丁:SPICE 柳川価津夫,大野裕介


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【帯賞】 くうのむところにたべるとこ / ヤマシタ トモコ

くうのむところにたべるとこ

『食』というお題ににフェティシズムやエロスを絡ませた、『食』と『欲』のオムニバス作品。

銀色のリッチなバックと豊満なバストでピチピチのTシャツを歪ませた女性。女性の露出した下半身を隠すように、キャッチの書かれた特製ベーコン帯がでろっと巻かれる様は、とてもエロティック。初回限定という触れ込みのあるこの帯は、ベーコンらしさを出すべく流線型に切り出されていて、『特製』と謳われているのも納得の出来で、帯が目を引き本書を手にしたという感想も多数確認できた。

カバー下にある、美味しさとは別のところを狙ったピンクのベーコン写真も強烈(画像右上)。また、話数の単位は「dish」になっているが、この「dish」の文字が奇妙に並んだ目次の、潔いデザイン最優先感が面白い(画像右下)。

出版:集英社
装丁:川谷デザイン

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【帯賞】 タケヲちゃん物怪録 7巻 / とよ田みのる

タケヲちゃん物怪録 7


完結巻。

曲線のついた大型帯。虹の輪に主人公一人が描かれたしんみりした表紙。
帯を取ると賑やかな大集合イラストが現れる。
裏表紙も、帯を取るとキャラの赤いシルエットが解除されるような形で優しく変化する。
表紙上では赤い主人公のイラストの主線を帯で黒くする、表情を変える等の工夫もあり。

帯の下から何が出てくるか予想ができつつ、外すと期待に全力で答えてくれる、
ラストを飾るに相応しい帯となった。

出版:小学館
装丁:ベイブリッジ・スタジオ 白山仁,徳重甫

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【帯大賞】 きょうの思春期 3巻 / こだくさん

きょうの思春期 3巻

一昨年に紹介した1巻には、何でもないものを嫌らしく見せるモザイク帯がついていた。2巻では表紙で人間ピラミッドを形成していて裏表紙にブルマが並ぶというネタをやっていたので、帯は普通。そしてラストの3巻の帯は、少し大きめ。しかしイラストがおしとやかなので、
表紙の邪魔をせずキャッチを載せた大人しい帯に見える。

そして帯を外すと、キャラがわんさか出てくる。

きょうの思春期 3巻

カバーはイラスト1枚絵全面タイプで、教室がワイドに描かれている。
キャラも帯で隠れるところ全てにびっしり。なかなか気合いの入った遊びになっている。
現在は店頭に帯がない本も並び、1つの教室に何故か大量の生徒が中腰で集合しているという
よくわからないけれどインパクトのある結果だけが残ってしまっているので、
こんな仕掛けがあったという事実をここに残しておきたい。

出版:講談社
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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【他人の空似賞】
 ヤコとポコ 1巻 / 水沢悦子 にゃん天堂 1巻 / うさくん


水沢悦子にゃん天堂

100以上の作品をまとめて紹介する場合に、バラエティ豊かなラインナップを取り揃えようと少しは気を使うものの、そこは所詮個人の好み。どうしたって大きな偏りが出てくる。そこで困るのが、イラストやデザインが近い2作品があって甲乙付けづらくどちらも選びたい場合。続けて紹介しても面白くないため、順位を大きく離したり、片方のみを紹介したりする。でも、たまにはそういう作品をまとめて紹介してみるのもあるかもしれないと思い、作者が違うながらそこそこに傾向の似た2作品を並べてみた。

左は『花のズボラ飯』でデビューを果たした新進気鋭の女性漫画家・水沢悦子による、少女漫画家とそのアシスタントのネコ型ロボットの日常モノ。右はロリ漫画雑誌に連載を持つエロエロ漫画家うさくんの新作で、旧世代ゲーム機の新作を開発するおかしなゲーム会社のコメディ。どちらも無表情なディフォルメの効いたキャラとポップなロゴ、白の余白部分の広さが特徴的で、すっきりとしていながらどこか印象に残る部分が共通している。よく似ていることもあってか、AMAZONで一方の作品検索すると、もう一方の作品も表示してくれる。ともあれ、女性漫画家・うさくん、エロエロ漫画家水沢悦子、どちらも応援していきたい。

ヤコとポコ 出版:秋田書店 装丁:Pri graphics 川名潤
にゃん天堂 出版:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 装丁:虻川貴子

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【扉賞】 いとへん / 宇仁田ゆみ

いとへん

若い職人と押しかけ見習い。古びた仕立て屋さんの手しごと物語。
キャラの周りに沢山の裁縫グッズが散りばめられた可愛らしい表紙をめくると…。

いとへん1

裏側の透けた薄紙。

いとへん2

そして花柄のページ。最初の2ページが型紙と布を模したデザインになっている。

いとへん3

奥付の後にも、花柄のページと薄紙が入る。(使用されている花柄は最初のものと別)
ボール紙のようなグレー見返し(本体部分)、そして袖の端のメジャーも合わさって、
これら仕掛けのページは全体で見ても整っていて収まり画が良い。

薄紙の部分は「遊び紙」と言っていいのか、とにかく入り口と出口で作品にぴったりの遊び心が楽しめる。


出版:祥伝社
装丁:ベイブリッジ・スタジオ 黒木香

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【導入賞】 ストレッチ 1巻 / アキリ

ストレッチ

先輩(OL)×後輩(大学生)、ストレッチを中心に回る二人暮らし生活を描いた作品。
クリーム色+青系でまとめたシンプルな表紙。
ゆったりとした部屋着+椅子+ストレッチ+クリーム色の背景で、
雰囲気は室内。

ストレッチ1

ページをめくると突然の青空と共に始まるプロローグ。
雰囲気は一転して屋外、そして日中。

ストレッチ2

黒枠で回想らしさが出ている回想が描かれた2ページ。

ストレッチ3

「頭にモノが当たる」をトリガーにした現代引き戻し。
黒枠の効果が回想らしさでなく夜らしさに置き換わる。

ストレッチ4

もう一人の住人が帰ってくる。

ストレッチ5

そして1ページ目の「学校+青空」と対照的な「マンション+夜空」が
目次ぺージとして登場。プロローグはスムーズに第1話に繋がり、
「夜のストレッチ」が始まっていく(全年齢的な意味で)。
ストレッチを通したほのぼのしたやり取りが特徴であると同時に
シチュエーション的に夜が多く、暗さも潜んだ作品として、
導入で上手く「夜」を作っていると感じられた。

出版:小学館
装丁:note 芥陽子

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【アンソロジー賞】コミティア30thクロニクル 第1集 / コミティア実行委員会

コミティア

1984年11月18日に第1回を開催した創作マンガ同人誌即売会コミティアが、2014年、30周年を迎えるにあたり刊行されたアンソロジー書籍。全3巻で1冊あたり二十名以上の作品が収録されていて、その厚さ4.5cm強。極厚の本体を、プラスチックのような質感の上品な白いカバーが覆っている。タイトルロゴは半透明になっていて、カバー下が透けて見える。

コミティア2

カバー下の本体には、現在『ティアズマガジン』という呼称が付いたコミティアのカタログ誌の書影がぎっしりと並べられている。

コミティア3

見返しにはイベントの写真が印刷されている。

厚みとを持った本体をカタログ誌が包み、それらが模様としてロゴを形成するカバー。
収録されている作品は、コミティアで発表された作品の極々一部なれど、
手に持った本の重みに、そのデザインに歴史を感じることができる。

出版:双葉社
装丁:名和田耕平デザイン事務所

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【完結賞】 惡の華 10・11巻 / 押見修造

惡の華(1)惡の華(2)惡の華(3) (講談社コミックス)惡の華(4) (講談社コミックス) 惡の華(5) (講談社コミックス)惡の華(6)惡の華(7) (講談社コミックス)惡の華 (8) (講談社コミックス)惡の華(9) (講談社コミックス)惡の華10惡の華11


モノクロ特大フキダシ3冊、「華」を仕込んだ単色カラーの黒系三冊、水彩画タッチ3冊、そしてラスト2冊は油絵風と色鉛筆。10巻カバーはツヤあり、1巻カバーはツヤなし。

惡の華 コミック 全11巻完結セット (少年マガジンコミックス)

「目」で揃った背表紙。祝完結。

出版:講談社
装丁:hive 久持正士,土橋聖子

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【グルメマンガ賞】 先生のおとりよせ / 中村明日美子,榎田ユウリ

先生のおとりよせ表紙

美少女マンガ家(男)と官能小説家(男)。出版社のコラボ企画として、実在する「おとりよせグルメ」を軸に話が展開するグルメ作品。リレー形式でマンガと小説が交互に進んでいく。

先生のおとりよせ2

袖、見返し、中扉。作者の一言が載った袖には宅配便の取扱い注意シール。見返しは茶色で、お取り寄せ商品の写真が印刷されている。

おとりよせ目次

登場する商品の写真がセットで並んだ目次。黄色い円の中には各話のタイトル、ページ数のほか、おとりよせの商品名、作品の初出情報などがレイアウトされている。

先生のおとりよせ3

中の紙はほんのりと色を帯びていて、印刷は茶色。各話の最後に載った商品解説ページには、価格や消費期限、購入先のURL等が掲載されている。

先生のおとりよせ4

小説パート。構成の特殊な本なので、フォントイジリも馴染みやすく、視覚的に面白い。

先生のおとりよせ奥付

奥付はラストページに配置、そして隣に見返し。BL系出版社、ダブルBL作家、グルメ系、とここまで揃えば装丁にこだわらないわけがない。

出版:リブレ出版
装丁:内川たくや

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【良いコミック賞】 夜よる傍に / 森泉岳土

夜よる1

眠ることのできなくなったカメラマンと夜しか目が見えない少女。夜に囚われた二人が正しく夜明けを迎えるための物語。

カバーは紙自体が黄色い。そして、人物や風景は黒、さらに作中のキーアイテムとなる絵本のイラストが光を反射するような白インクで印刷されている。

夜よる2

カバー下の本体も黄色いため、見返しも同じく黄色。そして開始4ページの導入部分のページも黄色い。

夜よる3


目次はなく、本編が20ページほど進んだ後で出てくるタイトルページが画像右。
黒ページに白抜きで、とても小さい。

夜よる3-3

ラストのページに再びタイトル、そして「The END」の文字。最後は白。

夜よる4

夜よる5

そして本編終了から再び黄色いページが入り、後書きや奥付、著者の作品紹介ページから最終ページの見返し、袖まですべて黄色。


作品は、夜を冒険する物語であり、「夜」や「夜明け」というワードが頻出する。そんな作品のイメージカラーとも言えるのが黄色(+黒)。黄色いページが厚みをもって本を包み込むような構成が、作品の持つ幻想性を高めている、と言えるかもしれない。

出版:KADOKAWA/エンターブレイン
装丁:セプテンバーカウボーイ 吉岡秀典

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【良いコミック賞】 史群アル仙作品集 今日の漫画 / 史群 アル仙

今日の漫画


Twitter で発を発表媒体とした昭和の画風の1ページマンガが話題を呼んだ作者、初の単行本で、本体はハードカバー仕様。まず、表紙イラストは1ページマンガ「今日の漫画」から抜粋されている。表紙には出版社名なし、そして作者名が作品のタイトルにはいっている場合は「○○短編集,著:○○」といったように2箇所作者名が入ることが多いが、本作では表紙、背表紙共に作者名は1箇所だけ。フキダシの文字やタイトルの周りには金の箔。黒が多いシンプルな構成ゆえに金の箔がよく目立っている。

今日の漫画2

袖は白黒のハーリキンチェックで、ところどころから兎が顔を出している。見返しはピンク色で動物が散りばめられている。

今日の漫画3

目次にもデフォルメの効いた人間らしい動物が帯を成す様に並べられている。

今日の漫画4

本編の1ページマンガ「今日の漫画」は全て、黒いページに白い線で構成された「今日の絵」とセットで並んべられている。「今日の漫画」の収録分、右が黒、左が白いページが続き、本を開いているときは右ページの小口も真っ黒く見える。

今日の漫画5

終りの見返しは水色。

昭和の画風を持った作品にふさわしい、昔から存在していたように思えるような佇まいを持つと同時に、例えば美しく見える背表紙、表紙、袖の繋ぎ方や最初と最 後で色を変えた見返し、白と黒のコントラストが印象的なページ構成、独特の手触りが気持ち良いカバーなど、行き届いた設計はまさしく今のもの。こういう本は、いつまでも手元に残しておきたい。

出版:ナナロク社
装丁:名久井直子

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【良いコミック大賞】 かごめかごめ / 池辺葵

かごめかごめ1

静謐で美しい光の中に見え隠れする不穏な世界。『どぶがわ』『繕い裁つ人』の著者が全篇フルカラーで魅せる、修道女の愛の讃歌。

まずカバー。表面はビニールコーティングがなく、さらさらと紙の良さを感じられる。イラストには光が差し、デザインとして枠が配置されている。この光、枠が重要。

かごめかごめ2

袖、見返し、中扉。

かごめかごめ3

目次、中扉。このように、話数と副題が入ったページが1話毎に挿入される。

かごめかごめ4

左が本編の1ページ。本編の1コマ1コマは、絵画として飾られるように飾り枠に収められている。戻ってみると、表紙や袖、中表紙などもにも枠が使われ、1ページ1ページが飾られていることがわかる。また、イラストとしての着色とは別に、本自体が歴史を持った書物であるかのように、作品を邪魔しない程度にシミのようなものが散らばっているが、これも表紙から続いている。

かごめかごめ5

かごめかごめ6

かごめかごめ7

この作品は光が特徴的。とにかくあらゆる場面に光が差して、人物達の感情を、世界の寂しさ、美しさを映し出す。(などとカッコよく言い切ってしまいたいけれども、アマゾンレビューなどを見てみると、「絵は、上手い訳ではない。ひたすらに味があると言える。」、「控えめに言っても、単純な画力は高くない作家さんだと思うが、こと漫画的作画でいえばピカイチだ。」等と高い評価を付けている人も予防線を張っていたりして、画の議論はむずかしい)

かごめかごめ10

神がかり的な光の表現に惹かれて紹介してる部分が大きく、これは装丁としてアピールすべきか、マンガの内容としてアピールすべきか悩ましいところだけれども、装丁がすばらしい作品かどうかと言われれば、間違いなくYESと言うことができる。オールカラー、作者の力量、物語を閉じこめる装丁。全てがかみ合っ た1冊。

出版:秋田書店
装丁:Pri graphics 川名潤

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*ウルトラジャンプで掲載されたコラムを転載、または加工して掲載しています



という感じでお送りしました、お気に入り装丁紹介企画『この装丁がすごい!~漫画装丁大賞~2014』。

 

 

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