火曜日, 10月 13, 2015

人工知能が「おしゃべりできる」のに、 いったい何の意味があるっていうんだ?


人工知能が「おしゃべりできる」のに、
いったい何の意味があるっていうんだ?


ERGUN EKICI
VICE PRESIDENT of EMERGING TECHNOLOGIES at IPSOFT



ただ「人間と会話ができる機械」を、真の人工知能であるということはできない。「問題解決」こそ、人工知能のあらゆるタスクのなかでも最も複雑な部分であり、最も重要な価値尺度となるのだと、IPsoftのアーガン・エキチは言う。


アラン・チューリングが1950年に「機械は思考できるか」という問いを投げかけて以来、「チューリング・テスト」に合格しようと努力する多くの試みが行われてきた。


このテストで試されるのは、会話をしている相手が人間なのか機械なのかを、人間が見分けられるかどうかだ。そして2014年6月、ユージーン・グーツマンと名付けられたチャットボットが、13歳の少年であるかのように装って、チューリング・テストに合格したと報じられた(日本語版記事)。自然言語の構文解析を入念に仕込まれたユージーンは、自宅や旅行先に関して使われた言葉を理解することができたという。


だが、ユージーンは本当に言葉の「意味」を理解していたのだろうか。この問いは、チャットボットが、会話から何かを学んで問題解決のスキルを示したのか、あるいは、理解したかのように演じて人間をうまく騙しただけなのか、と言い換えることもできる。
最初の問いから65年の時を経たいま、チューリングの「機械は思考できるか」という問いの根本に立ち返ってみよう。この問いは、「機械は理解し、学習し、問題を解決できるか」と定義し直すことができる。


真の人工知能を実現するには、まず、機械がユーザーの言葉の意味するところを理解し、解釈できなければならない。例として、「昨日、ジョンはジェーンから株を買った」という叙述について考えてみよう。わたしがある人に「今日の時点で株を所有しているのは誰か」と質問すれば、その人はおそらく「ジョンが所有している。なぜなら、ジョンは昨日ジェーンから株を買ったから」と答えるだろう。


ポイントとなるのは、機械が人間とおしゃべりできるかどうか、あるいは質問に答えられるかどうかではない。機械が問題の文脈を読み取って、その解決に役立つことができるかどうかだ。



だが、単純な検索エンジンに対して、「その株を今日所有しているのは誰か」、あるいは「それを先週所有していたのは誰か」といった質問をしても、正しい回答は得られないはずだ。検索エンジンは、その株を誰が買ったかという問いには答えられても、現時点で誰が所有しているかという問いには答えられない。「理解」が欠けているのだ。


機械が「理解」能力を得られるようになったとして、その次のステップは「学習」だ。人類が、最も高度に進化した、支配的な動物種になれた理由は、優れた視力でもなければ、鋭い嗅覚でもなく、あるいは完璧な聴力でもない。それは、比類のない直感的な学習能力のおかげだ。


子どもたちの能力は、読解力のテストによって評価される。機械も、小学校5年生レヴェルの読解力テストに合格する能力、つまりマニュアルを読んで内容を理解し、そのマニュアルについての質問に答える能力をもつべきだ。


次に、子どもたちが成長して青年になると、もうテストで読解力を評価されることはなくなる。その代わりに、今度は知識を応用して、問題を解決していく必要に迫られるだろう。そして、真の人工知能を実現するための最後の評価基準も、そこから導き出される。「問題解決」こそ、人工知能のあらゆるタスクのなかでも最も複雑な部分であり、最も重要な価値尺度となるのだ。


あなたが人間のオペレーターに電話をかけて、「自分の銀行口座にアクセスできない」と言うとしよう。この叙述には前後の文脈がなく、曖昧で不明確なため、それだけではオペレーターはどう対処すべきかを判断できない。したがってオペレーターは、(機械もいずれはそうなるはずだが、)いくつかの質問をする必要がある。


例えば、「それは口座振替のページにアクセスできないということですか、あるいはメインページにアクセスできないのですか」、「メインページにアクセスできないとしたら、お探しの口座は、メインページにリンクされているものですか、あるいはリンクされていない口座ですか」、「社会保障番号は入力しましたか」といったように。


この時点でポイントとなるのは、機械が人間とおしゃべりできるかどうか、あるいは質問に答えられるかどうかではない。機械が問題の文脈を読み取って、その解決に役立つことができるかどうかだ。


人工知能を評価するには、人間の知性を評価する場合と同じ基準を用いるべきだろう。つまり、機械が人間の言葉の意味を理解し、人間を観察することによって学び、その知識と学習能力を問題解決に利用できるようになることだ。そのとき、わたしたちは初めて、チューリングによる問いの真の意味と向き合ったことになる。








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ERGUN EKICI|アーガン・エキチ
 
IPsoft社の新興技術担当副社長。他に、「2025年、ロボットが働く社会では奪われるよりも多くの仕事が創出される」というタイトルの記事がある。



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