火曜日, 10月 30, 2012

約27倍に通信速度が高速移動中の電車の中でもアップする新技術

約27倍に通信速度が高速移動中の電車の中でもアップする新技術登場


by ~revengexx14

周波数帯域(帯域幅)あたりのユーザ数が多すぎてネットワークが混雑し、通信速度が出ないという状況は珍しくありません。auの田中社長が監督官庁にさらなる周波数の割り当てを依頼していると語ったのをはじめ、国内外問わず通信キャリアは少 しでも帯域を確保しようと必死です。しかしこのたび、新たな帯域を必要とせず、インフラ整備もせず、ワイヤレスネットワークの速度を改善する技術が開発さ れました。

A Bandwidth Breakthrough - Technology Review


端的に言うと、パケットを1つずつ送信する代わりに、一連のパケットについて記述された代数方程式を送るというもので、パケットロスが発生したときに「再 度パケットを送って」と要求するのではなく、受信側でロスした部分を解決するので、通信量が減るという仕組み。必要とされる式は単純で線形なので、電話や ルータ、基地局での処理にかかる負担はわずかなものだと、開発リーダーのMuriel Medard教授は 語っています。

現在のワイヤレスネットワークで、大きなムダとなっているのはパケットのロス。ボストン市内を例に取ると、だいたい全パケットのうち3%が輻輳や妨害に よってロスしており、新幹線のように高速で走行する列車での通信だとロスは5%にもなっています。

パケットのロスが発生すると、受信側は「パケットが欠けているからもう一度送信して」と送信側に要求、送信側は同じパケットを再送信します。1つのパケッ トロスで発生したネットワーク遅延が新たな通信を発生させ、雪だるま式に遅れが広がっていくという図式です。

今回の技術は、基地局を新たに作ることなく、送信出力を上げることもなく、新規のインフラ整備をしなくてもパケットロスを解決します。開発したMIT電子 工学研究所のMuriel Medard教授によると、すでにいくつかの企業がここ数ヶ月の間に基礎的技術のライセンスを受けたとのこと。内容は機密事項とのことですが、ライセンス はMITとカリフォルニア工科大学によるスタートアップ「Code-On Technologies」によって行われています。

CODE ON
http://www.code-on.org/


通常、研究所でのテストで「わずかに改善がみられた」という内容であればエンジニアは実用性に疑問を持ちますが、桁外れの改善が見られたのであれば、実環 境投入時の成果は不明でも、注目に値すると、通信の権威であるラトガーズ大学のDipankar Raychaudhuri氏は語っています。

Medard教授らのグループがMIT内のWi-Fiネットワークで実験を行ったところ、普通であればパケットロスが2%発生するところ、ほぼロスレスで 通信が行え、通信速度も通常時は1Mbpsのところ、16Mbpsまで増速しました。

ニューヨークとボストンを結ぶ特急アセラ・エクスプレス内でも実験を実施。アセラはネットに繋がりづらいとして悪名高く、実験時にもネットに繋 がらずに悪戦苦闘する乗客の姿があったそうですが、教授とその生徒たちはYouTubeの動画を楽しむことができたとのこと。アセラの通常時の通信速度は 0.5Mbpsほどですが、このときは約27倍の13.5Mbpsにも達しました。

同様に、Amazonクラウドでプロキシサーバのテストも行われました。IPトラフィックはAmazonに送られてエンコードされ、端末上のアプリでデ コードされることになりますが、この結果、技術は通信機器やルータに直接組み込んだ方が得られるメリットは大きいだろうとMedard教授は語っていま す。通信の権威であるラトガーズ大学のDipankar Raychaudhuri氏は、「この研究は、貧弱な通信環境でネットに接続している人の状況を著しく改善する重要な突破口になるだろう」と、期待を寄せ ています。

アメリカの連邦通信委員会は、利用可能な無線帯域は2~3年で尽きるだろうと予測していますが、NBCユニバーサルのSheau Ng研究開発担当副社長は、この技術が期待通りに大規模展開されれば、この帯域危機を回避できるのではないかと考えています。

ちなみに、シスコ・システムズは2016年までにモバイルのトラフィックが18倍に増加するというリポートを発表しており、ベル研究所は同様に25倍に増えると予測しています。

Medard教授は、トラフィックの現状について「『もっと帯域リソースを』という前に、非効率的な現状を改善すべきなのです」と語っています。