水曜日, 10月 31, 2012

ダイヤモンドでできた惑星:蟹座 55番星e

ダイヤモンドでできている惑星が存在する。名前は蟹座55番星eといい、地球より 2倍大きい。ジュール・ヴェルヌや、アイザック・アシモフや、ダグラス・アダムズの物語のフィクションの話ではない。いったい、どんな星なのだろうか?  わたしたちはこの惑星から、何を知ることができるのだろうか?

ほとんどがダイヤモンドで構成される惑星が、実際に存在することをご存じだろうか。ジュール・ヴェルヌや、アイザック・アシモフや、ダグラス・アダムズの 物語のなかでのみ可能なように思えるだろうが、実際に存在するのだ。その星は、蟹座55番星eという名前で、半径は地球の2倍あり、質量は約8倍大きい。 いわゆる「スーパー・アース」にふさわしい特徴を備えている。

この惑星の化学組成が、イェール大学の研究者たちによって明らかにされた。研究は「Astrophysical Journal Letters」に掲載される予定である。

この惑星は、蟹座55番星の周りをほかの4つの惑星と一緒に回転している。蟹座55番星は、地球から約40光年離れた場所にあり、蟹座の周りにあるのを裸 眼で見ることができる。

蟹座55番星eは、恒星の周りを回転しているというよりは、飛んでいる。その速度は水星が太陽の周りを回る速度の約25倍という超高速である。公転周期は 約18時間だ。さらに、温度は摂氏2,150度である。

研究のコーディネーターで、イェール大学の物理・天文学の博士、ニック・ マドゥスダンは、「Universe Today」にこう説明した。

「この惑星には、表面のすぐ下に、グラファイトとダイヤモンドを含む薄い層があります。さらにその下には、惑星の半径の約3分の1にも及ぶ非常に密度の濃 い層があり、ほとんどダイヤモンドのみで構成されています。地球上でも見られるダイヤモンドにだいたい近いものですが、純度は非常に高いと思われます」。

さらに深いところでは、ダイヤモンドは液体の状態でも存在している可能性があるとマドゥスダンは説明している。「これはまだ、地球とは完全に異なる化学的 性質をもつ岩石惑星を初めて見つけたにすぎません」。

蟹座55番星eは2004年に発見された。しかし、昨年になってようやく研究者たちはその半径を特定し、さらに最近になってその質量を計算することに成功 した。こうしたことすべては、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡から得られたデータのおかげである。

このような情報から出発して、イェール大学の研究者たちは、惑星の化学組成を推定した。この特別な特徴をもたらしている元素や化合物の、考えうるあらゆる 組み合わせの計算モデルを研究したのだ。

アメリカの研究者たちが発見する以前、天文学者たちは、この惑星は激しく沸騰する水を大量に含んでいると確信していた。というのも、その化学組成が地球の それに似ていると考えていたからである。

これに対してこの新しい研究によると、水はまったく存在しない可能性があり、この惑星はもっぱら炭素(グラファイトとダイヤモンド)、そして鉄と炭化ケイ 素、おそらくはいくらかのケイ酸塩で構成されているようだ。少なくとも惑星の質量の3分の1(地球の質量の約3倍に等しい)は、ダイヤモンドでなくてはな らないはずだ。

National Geographic」が伝えているように、2011年に、マドゥスダンのチームは、炭素 の豊富な惑星を初めて発見したことを報告した。遠方にある、ガス型の巨大な太陽系外惑星、WASP 12bである。

この発見は彼に、炭素の豊富な岩石惑星を発見することもできるだろうという可能性を示唆した。まさにそれが蟹座55番星eなのだ。この研究者によれば、こ の炭素が豊富なスーパー・アースは、非常に遠くにある岩石惑星が、わたしたちの地球の組成に近い化学組成や、大気や、生物体系をもつともはや考えることが できないことを示している。

プリンストン大学の天文学者、デイヴィッド・スパーゲルによれば、このダイヤモンド惑星は、おそらく、いままで知られていなかった化学的性質をもつ新しい クラスの惑星の最初のものだ。

彼はこう説明している。「酸素とケイ酸塩が支配的なわたしたちの太陽系と違って、この惑星システムは炭素でいっぱいです。この発見が、惑星システムの発展 に関するわたしたちの理解に対して与えるインパクトはまだはっきりしていませんが、宇宙の惑星にはさまざまな差異があることを理解するための、重要な一歩 となることは間違いありません」。


TEXT BY CATERINA VISCO
ILLUSTRATIOB COURTESY OF HAVEN GIGUERE / YALE UNIVERSITY
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI