火曜日, 9月 29, 2015

欲をかいて大失敗した2社

 



 •欲をかいて大失敗した2社


ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は競合他社が使用している精巧な公害防止装置を使わずに、ディーゼルエンジンが厳しい排ガス試験に合格する方法を見つけていた。自動車がスモッグ検知器に接続されているときだけ大気汚染基準を満たしているように見せるソフトウエアを、世界最大の自動車メーカーが利用していたのだ。ところが、試験場の外で走行すると、VWのディーゼルエンジンは大気汚染基準で許されている量の40倍もの有害な窒素酸化物を排出していた。


【VW匠の技】を検証



試験場ではきれいな排ガスデータを弾き出させ、道路では公害をまき散らすという策略の不誠実さには驚くべきものがあり、VWに排ガス規則を回避するための組織的な陰謀がなかったとはとても信じ難い。辞任した最高経営責任者(CEO)、マルティン・ウィンターコルン氏は声明で「そうした不正については全く知らなかった」と述べたが、フィナンシャル・タイムズ紙ではかつて「詳細を見逃さないエンジニアならではの目」を持つと紹介されていた。

これとは対照的に、62年前に開発された感染症治療薬の価格を5000%以上も引き上げて1錠750ドル(9万円)にするという暴挙には何の陰謀も必要なかった。それは32歳の元ヘッジファンドマネジャーで、新興製薬会社チューリング・ファーマシューティカルズを経営するマーティン・シュクレリ氏の仕業だった。

この価格引き上げに関する報道後に巻き起こった非難の嵐を受け、シュクレリ氏は全国ネットのニュース番組に出演し、価格を引き下げると述べた。と同時に他のインタビューでは、その薬「ダラプリム」の値上げで影響を受ける人は比較的少ないとも主張した。

こうした出来事は、映画「ウォール街」でマイケル・ダグラスが演じたキャラクター、ゴードン・ゲッコーの信条「欲は善」が誤りであることを証明した。 チューリングによるダラプリムの値上げは予想通り、政治的な反応を引き起こした。次期大統領選の民主党候補指名争いに出馬しているヒラリー・クリントン氏がそうした「価格つり上げ」の是正に動くとツイートすると、バイオ薬品セクターの株価は急落し、9月21日には同セクターの時価総額が約150億ドルも目 減りした。

VWの時価総額は先週、排ガス不正問題が発覚して以来で230億ユーロ(3兆円)、約30%の目減りとなった。25日に2.77%の反騰があったおかげで、ドイツのDAX指数の先週1週間の下げ幅は、わずか2.3%で済んだ。

しかし、影響は株価以外にも及んでいる。フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルはそのレポート、クレジット・ストラテジー・ウィークリーで、欧州の社債市場の自動車セクターが「混乱している」と指摘した。利回りが低く、クレジット・スプレッドが狭いことを踏まえると、「失敗に対する許容範囲が極めて狭い中で、VWはクレジット・スプレッドが提供していたクッションを引きちぎってしまった」と述べている。不正問題の影響を受けた車への対処費用としての引当額が65億ユーロで、VWには6月末時点で210億ユーロもの手元資金があったにもかかわらず、である。


•米経済に減速の兆候

 
米連邦準備制度理事会(FRB)は国際的な課題よりも国内経済を優先させると強調しているが、国内の経済指標はさほど芳しくない。第2四半期の実質 GDP(国内総生産)成長率は年率換算で速報値の3.7%から3.9%に上方修正されたが、アトランタ連銀の経済予測モデル「GDPナウ」によると、第3 四半期は1.4%という弱々しいペースに減速しているという。

調査会社マークイットが発表した9月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月比横ばいの53で、「ドル高、多くの輸出市場で低迷する需要、特にエネルギーセクターにおける設備投資の削減などで苦戦を強いられている」という。また、9月のサービス業PMIは、雇用創出が6カ月ぶりの低水準になったこともあり、前月の56.1から55.6に低下した。

9月の中国PMIは47に落ち込み、2009年3月以来の低い水準となった。その他の新興国市場では、先週一時的にレアルが対ドルで6%以上も下げるなど、ブラジル経済の下方スパイラルが続いている。金融当局が外貨準備を使って買い支えると約束すると、レアルはその後に反騰した。メキシコも輸出の急激な減速に苦しんでいる。通貨ペソは過去最低水準にあるにもかかわらず、特に米国への工業製品が不振となっている。

BCAリサーチは「米国経済の回復力に関して人々は慢心し過ぎだ」と主張する。同社は米国と新興国市場との直接貿易は比較的限定されていると指摘する一方で、ドイツから中国への輸出が打撃を受ければ、米国からドイツへの輸出減少をもたらすことになると説明する。そうなれば金融市場への影響もあり、ひいては米国経済にも影響が及ぶ。

少数の規則違反者による悪行だけにとどまらず、国内にも国外にも問題は山積している。