月曜日, 9月 07, 2015

横木安良夫写真展「day by day」

横木安良夫写真展「day by day」

 

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横木安良夫写真展

Day by Day
ぼくの父はアメリカ人、母は日本人だ。ぼくは混血児ということになる。
もちろん文化的な話であって、実の父母は日本人だ。
通っていた幼稚園は、大正時代に日本に渡ってきたルーテル派の筋金入り女宣教師、
エーネ・パーラスが経営をしていた。
戦後再来日し兵舎を改造した天井の高い木造の園舎、
そこにはアメリカから寄付されたピカピカの玩具が溢れていた。
そこでぼくはクリスマスの降誕劇を5歳でヨセフ、
6歳では博士(3賢人)を演じ「私は乳香をさしあげます」というセリフまで言った。
小学校に入る頃、家にテレビがやってきた。
毎日のようにアメリカのホームドラマが放送されブラウン管にかじりつき、
アメリカ的民主主義のプロパガンダに洗脳された。
小学校4年が60年安保だった。ニュースで報じられる安保反対のデモ。
樺美智子の死が記憶に残り、初めてアメリカは正義ではないと知った。
高校生の時ブラスバンド部に入る。
毎日アメリカのマーチ王スーザの行進曲を演奏した
「星条旗よ永遠なれ」「忠誠」「エルキャピタン」などなど。
そんな時ケネディ暗殺が飛び込んできた。
物質文明の王者アメリカは恐ろしい国に思えた。
大学では写真を学ぶ。時は泥沼のベトナム戦争真っ最中。
反戦はあたりまえ。世界中で学生が立ち上がった。
ぼくはデモに参加し安保反対を叫び、そして写真を撮った。
その頃アメリカの違う側面に出会っていた。
それはかつてプロパガンダされたアメリカ精神ではなく、
そこから生まれた、いやその闇から産み落とされた、
ブルース、ジャズ、フォーク、ロックといった音楽で象徴されるような
アメリカ深部から生まれた文化とエネルギーに惹かれてゆく。
ぼくは本格的に写真を撮り始めていた。
ぼくの記憶のなかのアメリカ的風景と、目の前の日本の風景とのミックス。
まさに写真を撮ることは、自分の混血性を実証することだった。
撮っている時たしかに「カッコイイ」という表現を使っていた。
それは木村伊兵衛のいう「粋だね」に近いかもしれない。
それは決して美しいだけではない。モダンでもない。
日本的情緒とアメリカ的ドライさがミックスしたものだ。
写真は誕生した時から、何も産み出してはいない。
新たなものを創造することもない。さまざまな実在にレンズを向け、シャッターを切る。
それは単なるサンプリング、本物の顔をしたイリュージョンだ。
混血児であるぼくにとって写真ほど、気分良くその本質を具現できるメディアはない。
横木安良夫



横木 安良夫 写真展
『Day by Day』
( デイ ・ バイ ・ デイ )
2015年10月2日(金)~10月28日(水)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 日・月曜日 / 入場無料
ブリッツ・ギャラリー
〒153-0064 東京都目黒区下目黒6-20-29 TEL 03-3714-0552
JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 / 東急東横線学芸大学下車徒歩15分
ブリッツ・ギャラリーは、現在コマーシャル、エディトリアル写真および映像分野で活躍する
横木安良夫(よこぎ・あらお)の写真展「Day by Day」を開催します。
当ギャラリーでは「Glance of lens (レンズの一瞥)」以来4年ぶりの個展になります。
本展は2006年に発表された「Teach Your Children (ティーチ・ユア・チルドレン)1967-1975
あの日の彼 あの日の彼女」の続編にあたります。同作は、
当時の若者文化をコミュニティーの内側から撮影した団塊世代の青春グラフィティーとして絶賛されました。
前回は学生時代から写真家キャリアを開始した時期までの作品でしたが、
今回は1975年にアシスタントを経て写真家として独立した以降の70~80年代までの作品が中心となります。
横木は、学生時代からアメリカ文化の影響を受けた当時の若者が、
素直に"カッコいい"と感じるシーンを一貫して撮影しています。
彼は戦後生まれの第1世代であり、
前世代の写真家のように輸入文化の影響による
日本文化のアイデンティティー喪失のような危機感を強くは持っていません。
本作では、彼は日本だけではなく、ハワイ、
香港、米国西海岸などにも広げて同じスタンスで撮影しています。
実際のところ、アメリカ文化を無条件に受け入れたものの、
日本文化が消えてしまうわけではありません。
それらは排斥しあったり、融合したり、併存したり、様々な形態を生み出しているのです。
本展では、輸入文化の原点の地である海外での写真と、
それらの影響を受けつつも独自文化が併存している日本のシーンを対比させ、
戦後日本の奇妙な混血文化の最前線を提示しています。
そして21世紀のいま改めてこの作品を提示するのは、
現代日本でもその状況は全く変わってないことを示すためです。
私たちはそんなシーンに違和感すら感じなくなっている事実に気付かされるのです。
本展は1985~1986年にかけて新宿ニコン・サロンなどで展示された一連の作品群から
約20点が展示されます。最近の横木の写真展では、
展示作品はすべてインクジェットによるデジタル・プリントで制作されています。
しかし今回は全作が当時に本人の手によりプリントされたアナログ銀塩写真になります。
また前作「Teach Your Children(ティーチ・ユア・チルドレン)」シリーズから、
代表作の貴重なヴィンテージ・プリントも一部展示予定です。
本展タイトルの「Day by Day」は1985年に行われた初個展のタイトル。
今回、横木のデビュー作が、約30年ぶりに蘇ります。
ぜひご高覧いただくとともに、貴媒体での写真展情報のご紹介をよろしくお願いします。
以上

・お問い合わせ先 ブリッツ・ギャラリー http://www.blitz-gallery.com TEL 03-3714-0552
写真展の情報・画像はウェブサイト http://www.artphoto-site.com/inf_press.html でご覧いただけます

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