
映画『私たちのハァハァ』公開記念 松居大悟監督 インタビュー
Photo:Takao Iwasawa、Intervie&Text:Hiroshi Inada、Edit:Keita Miki
松居大悟監督の新作、『私たちのハァハァ』
が凄い。これまでも『自分の事ばかりで情けなくなるよ』や『ワンダフルワールドエンド』など強烈に“いま”を感じさせる作品により若い世代を中心として高
い支持を集めて来た監督だが、今作では音楽ファンの側に立ち代わりつつ、青春映画としても画期的なアップデートを果たしている。
クリープハイプの大ファンである女子高生4人が、ライブを観るため北九州市の片田舎から東京まで自転車での旅に出るロードムービー。ほぼ演技未経験の役者 たちと手持ちカメラの映像を全面的に駆使することで、徹底的に“ライブ感のあるフィクション”を切り開いている。自ら拘ってきた青春映画を総括してみせた 松居監督に話を聞いた。
クリープハイプの大ファンである女子高生4人が、ライブを観るため北九州市の片田舎から東京まで自転車での旅に出るロードムービー。ほぼ演技未経験の役者 たちと手持ちカメラの映像を全面的に駆使することで、徹底的に“ライブ感のあるフィクション”を切り開いている。自ら拘ってきた青春映画を総括してみせた 松居監督に話を聞いた。
作り手よりも受け手の人のエネルギーの強さが何かを変えてくれそうな気がした。じゃあファンの映画にしようって。
— 傑作ですね。これは画期的な作品だって思いました。
— 撮影したのが1年前くらいですよね。やっとそろそろ公開となりますが、リアクション的に「あ、これはしっかり届きそうだ」みたいな実感はありますか?
— えーっ、そうなんですか?
— 編集に一年近くも時間をかけて、映画祭で一回評価を受けたのにさらにその後も直すって、かなり異例ですよね。

松居大悟
1985 年、福岡県生まれ。劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出・出演を担う。12年2月、『アフロ田中』で長編映画初監督。以降、クリープハイプのMVから生ま れた異色作『自分の事ばかりで情けなくなるよ』や、大森靖子の音楽をフィーチャーした絶対少女ムービー『ワンダフルワールドエンド』など時代を鋭く描いた 青春映画で国際的にも評価を受ける。『私たちのハァハァ』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で上映され、「スカパー!映画チャンネル賞」 と観客賞にあたる「ゆうばりファンタランド大賞」の2冠に輝く。
1985 年、福岡県生まれ。劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出・出演を担う。12年2月、『アフロ田中』で長編映画初監督。以降、クリープハイプのMVから生ま れた異色作『自分の事ばかりで情けなくなるよ』や、大森靖子の音楽をフィーチャーした絶対少女ムービー『ワンダフルワールドエンド』など時代を鋭く描いた 青春映画で国際的にも評価を受ける。『私たちのハァハァ』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015で上映され、「スカパー!映画チャンネル賞」 と観客賞にあたる「ゆうばりファンタランド大賞」の2冠に輝く。
— ちょっと発端に戻りますけど、もともと企画のスタートはファンを描きたいということでしたっけ。
— 確かに、ファンを描いた映画ってありそうでなかった。
— 松居さんの映画って、『ワンダフルワールドエンド』もそうですけど、すごく“いま”感をびしびし感じるのが面白くて。

— よく他の方も言っているかもしれないですけど『リンダ リンダ リンダ』も女子高生を描いた青春映画の傑作と言われていて、『ハァハァ』はあれ以来の傑作だとも言われている。で、公開が2005年と2015年でちょうど10年目なんですね。
— その比較でいうと、『リンダ リンダ リンダ』には香椎由宇はいたし、ぺ・ドゥナまでいた。今回『ハァハァ』はひとりだけ女優さんがいましたけど、あと3人は演技素人で。それってすごい賭けですよね。
— あの会話の感じは本当にすごいですよね。セリフじゃないみたいな。

— ビデオカメラを彼女たちに渡して撮らせるという手法はある意味、自撮り文化も入っているのかもしれないですけど、ほとんどそれで撮りきるっていうのも珍しいですよね。
— じゃあ、ある意味松居さんの中で、ドキュメンタリーの要素、生々しさはあえて入ってくるように意識していたんですね。
— 以前のインタビューで読んだんですけど、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』のようなクリープハイプありきの映画じゃなくて、松居さん発信の映画でクリープハイプにいつか主題歌を頼めるようになりたい、と言っていて。まさにこの映画だよなと思って。
— お願いする側もされる側にとっても最高ですよね。だからこそ、曲も作り直したり、相当こだわりがあったみたいで。
—
この映画はフィクションとリアルの狭間とか裂け目に肉薄している感じがして、それが象徴的なのがライブのシーンで。観ている側も彼女らに寄り添って観てい
るわけですよ、辿り着こうと。で、最後リアル側の現場に突き抜けちゃう。その時に映画の観客とクリープハイプの観客が遭遇するんですね。一緒に辿りついた
らそこに自分たちがいたみたいな。
— お客さんの反応する声とか全部リアルなわけで。だからあのシーンはすごいと思います。
— 音楽と映画のコラボレーションという意味で、ファンの側に世界観をひっくりかえしつつ決定版を作ったなと。松居さんが作って来た青春映画という意味でも集大成ですよね。
— でも松居さんまだ20代なんですよね。

【映画『私たちのハァハァ』】
テアトル新宿ほか全国劇場にて公開中
監督:松居大悟
出演:井上苑子 大関れいか 真山朔 三浦透子 / クリープハイプ / 武田杏香 中村映里子 池松壮亮
音楽・主題歌『わすれもの』:クリープハイプ
製作:『私たちのハァハァ』製作員会 / SPACE SHOWER NETWORKS INC.
制作:CONNECTS LLC
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
http://haa-haa.jp/