金曜日, 9月 26, 2014

CDはいつまで保つのか?

CDはいつまで保つのか?


By Diego Sevilla Ruiz

CDはコンパクトディスクの略称で、レコードの代わりに音楽データを記録するためにソニーフィリップスが共同開発した光ディスク規格です。世界初の商用CDが発売されたのは1982年で、それ以来よりデータ容量の大きなDVDやBlu-ray Discなどさまざまな規格が登場していますが、現在も音楽はCDに記録されて販売されているように確実に活躍の場は存在しています。そんなCDは「一体いつまで保つのか?」を、アメリカの非営利公共ラジオネットワークNPRがリサーチしています。

How Long Do CDs Last? It Depends, But Definitely Not Forever : All Tech Considered : NPR
http://www.npr.org/blogs/alltechconsidered/2014/08/18/340716269/how-long-do-cds-last-it-depends-but-definitely-not-forever

1990年代、歴史協会や博物館などがあらゆる種類の情報をとても丈夫な記録媒体であると考えられていたCDに保存するようになりました。現在も主に音声データの多くはCDに保存されたままなわけですが、図書館などでこういったデータを管理する人々は、CDに保存したデータが消えてしまわないか心配しているそうです。

アメリカ議会図書館の地下にある研究所で働くFenella Franceさんは、この「CDはいつまで保つのか?」を調査している研究員です。彼女がCDについて調べる理由は単純で、アメリカ議会図書館ではたくさんの貴重な音源をCDに保存して保管しているから。

By Fred von Lohmann

Franceさんは、アメリカ議会図書館にてデータの保存に関する研究やテストなどを行う部門のリーダーを務めている人物。彼女たちが研究を行っている部屋には小さな箱が置かれており、これを使って室内の温度を調節してCDの老化作用を促進し、CDがどれくらいの期間使用できるものなのか実験を繰り返している、とのこと。

「相対湿度と温度を上げることで、CDで生じる化学反応の割合を増加させているんです。そして、CDが時間と共にどうなるのかを観察しています」とFranceさん。ここでは、図書館などのアーカイブで「最低の状態」で保存されているCDが「どれくらいの期間使用できるのか」を調査しているそうです。

なぜ「最低の状態」で保存されているものなのかというと、例えば地方自治体にある小さな図書館などの場合、施設内のCDを保管している場所を「保管に最適な環境に保つ」ための設備や資金を持っていないからで、そういった施設に保管されたCDがいつまで使えるのかを知ることこそが貴重なデータを失わないために必要なことだからです。

そんなアメリカ議会図書館の研究員による調査で判明したことは、「すべてのCDが同じ丈夫さではない」ということでした。

By grytr

続いてNPRが話を伺ったのは、アメリカ議会図書館で働くデータ保存のスペシャリストであるMichele Youket氏。彼がアメリカ議会図書館で保管されていたエルンスト・フォン・ドホナーニのピアノ・ラプソディを流したところ、パチパチと音を立て、再生は途中で停止してしまいました。これは「CD腐食」と呼ばれる現象の影響で、CDの裏面を長時間露出したままにしておくと、CDが腐食して保存したデータをうまく再生できなくなります。

By AVPreserve

「CDの保存を難しくすることのひとつは、CDの品質が一様ではない、ということ。なぜ品質がさまざまなのかと言うと、生産された年月や生産された工場によりCDの品質基準は大きく異なっていたためです」と、Youket氏。さらに、CDの腐食はイギリスのランカシャー州にあったとある工場で1988年から1993年までの間に生産されたCDにだけ起きる特有な現象であった、とごくごく一部のCDでのみ見られる現象であることも明かしています。

このようにCDの品質には大きな差が存在するため、「CDには平均寿命といったものがありません。なぜなら平均的なCDというものが存在しないのだから」とYouket氏は語ります。

By National Film and Sound Arc

アメリカ議会図書館には約40万枚のCDが保管されており、これは議会の音声記録から過去のヒットソングまでさまざま。

「1990年代に世界中で不動産に関するデータがマイクロフィルムからCDに移されましたように、電子的なデータは『他のどんな記録媒体よりも優れている』と、当時は考えられていたCDにデータが移されるようになった」と言うのはProperty Records Industry Association(PRIA)のJim Harper社長。しかし、CDの品質が一様ではなくいつまで保つのか分からないということを考えると、「CDがどんな記録媒体よりも優れている」という考えが間違っていたことは明らかです。しかし、Harper社長いわく「だいたいどの地方自治体も予算は厳しいものなので、近い将来にCDから他の記憶媒体にデータを移す、ということはどこの自治体も難しいだろう」とのことで、貴重なデータが失われてしまう可能性を危惧しています。

徐々にCDの生産量は低下しており、CDショップもどんどん減少しており、さらに最近のPCだとCDドライブがついていないものも増えてきているので、今後もCDの活躍の場が狭まっていくであろうことは明白です。しかし、それでも多くの人々がCDを持っているのも事実です。

なお、Franceさんたちの研究により大抵のCDはきちんと保管すれば何世紀も使用できることが判明しており、よりCDを長持ちさせたいという場合には「夏の間は車の中からCDを待避させること」とのこと。

By Warein

アメリカ議会図書館の研究により「大抵のCDは何世紀も保つ」ことが分かっていますが、当のアメリカ議会図書館では、CDに保存していたデータ資料を独自のサーバーに移す作業を始めているそうで、これはCD品質が一様ではないため、どのCDがいつ使い物にならなくなるか分からないから。なので、本当に大切なデータは自前のハードディスクやクラウドストレージなどに保存しておくことが推奨されます。